未成年の猟奇殺人、佐世保事件と過去の未成年殺人を比較する(前編)

どちらも、その特異性から戦後に起きた猟奇殺人の中でも、トップクラスの猟奇殺人として扱われている。おそらく、この佐世保女子高生殺人事件も、この二つの事件と共に、歴史の残る大きな事件として人々の記憶に残り続けるだろう。

神戸連続児童殺傷事件

通称、酒鬼薔薇聖斗事件。14歳の男子中学生が小学生の男女5名を殺傷した事件。
事件は3度に渡って発生。1度目は1997年2月、女児二人がハンマーで殴られ重症を負う。2度目は同年3月、女児二人がナイフで斬り付けられ一人は重症、一人が死亡。そして、日本中を震撼させた3度目は、切断された男児の首が中学校の校門前に犯行声明と共に置かれると言う非常に恐ろしい事件だった。

酒鬼薔薇聖斗(さかきばらせいと)とは、その際の声明文に書かれていた名前だ。犯行声明は警察の犯人像を撹乱させるためのものであり、メディアや報道関係者を大いに混乱させたものの、名前を読み違えた抗議として追加で手紙などを送りつけるなどの大胆不敵な行動が仇となり、筆跡を中学校の作文と比較したことで犯人が割り出された。

少年は以前から動物などの解体・殺害なども行っており、生き物を傷つけることに強い快楽・興奮を覚える人物であった。それがエスカレートし、人間を殺傷するまでに至ったとされている。男児の殺害時には、切断した首を眺めながら自慰をするなど、異常なまでの性的サディズムの持ち主であったことが伺われる。

会津若松母親殺害事件

犯人は17歳の男子高校生。両親とは別のアパートに弟と二人で住んでいた。母親の誕生日でもあった2007年5月15日に、アパートに訪れた母親が寝ているところを包丁で殺害。さらに、殺害後に母親の首と腕をのこぎりで切断。腕を白く塗った上で植木鉢に挿して飾り、首を学生鞄の中に入れたまま、街をぶらぶらした後にタクシーに乗り、警察署に切断した首と共に自首した。

警察署に首を持っていったと言うことも非常に異質な点ではあるが、切った腕を飾ろうとしたと言うのも非常に猟奇的だ。ロープやフックなども用意しており、「誰でも良かった」「バラバラにした遺体を天井にぶら下げたかった」という旨の供述もある。飾り付けもそうだが、わざわざ首を警察署まで持って行って警察官に見せていることから、バラバラにした遺体を人に見せたかったと言うのは、上述の事件と共通している。

少年は文武両道で成績の優秀な生徒だったが、高校生活の中で徐々に精神的な変化が起こり、学校に通わなくなった。精神病院にも通っており、事件の起こった年の4月からは不登校の状態だったと言う話だ。少年と母親の間に問題があったという話もなく、本人も母親に恨みがあったというような供述もない。周囲に溶け込めず、一人でいることが多く、学校でいじめにあっていたと言う話も出ていたようだが、精神的に不安定になったきっかけについては明らかになっていない。

<共通点>

この二件の事件と本件を比較してみると、
「遺体を自身の嗜好に依って解体している」という点と、「被害者に対して何の恨みも持っていない」と言う二点以外にも多くの共通点が見られる。

まず、酒鬼薔薇聖斗の事件では、加害者が事件の前に小動物などを解体しており、自身のサディズムを強く刺激するような行動をとっており、これは佐世保女子高生殺人事件の少女とも共通している。

会津若松母親殺人事件では、加害者の事件前の人間性だ。文武両道で成績優秀な生徒と言う特徴は、本件の女子高生とも共通している。さらに、不登校になって、一人でいることが多かったと言うのも非常に特徴的だ。

この二件は、事件の特徴や加害者が事件に至る過程などが非常に本件と酷似しており、事件に至るまでの加害者の心理が多くの部分で似通っている可能性が高い。

 

後編では、本事件の快楽殺人という特徴や加害者が十代の少女であるという点に注目し、
過去の事件と比較していきたい。

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