「H2A、H2B、イプシロン」:日本の打ち上げロケットには、どのような違いがあるのだろうか?

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弾道ミサイル技術への応用も可能なイプシロンロケット

次に、イプシロンロケットについて説明しよう。

記事上部の写真の通りサイズが圧倒的に小さく、運搬能力はわずかに1.2t。しかし、打ち上げ費用は40億前後で更に安くなる。そんなに安いなら・・・と思うかも知れないが、重さあたりの費用で見てみると利点は少ない。軽い衛星などであれば、大型ロケットの余剰スペースに入れれば事足りる。

しかも、このサイズの小型ロケットは小国でも作っており、インドやウクライナの方が安い。
何故、こんなロケットを作ったのだろうか?

 それは、イプシロンロケットは根本的にH-IIシリーズとはロケットの原理が異なっているからだ。H-IIシリーズは液体燃料型のロケットで、液体酸素と水素を別のタンクに入れて飛びながら混ぜて燃焼させている。この方式だと少ない燃料で強い推力を生むことが出来るため、殆どの大型ロケットがこの方式を採用している。液体燃料方式ロケットの欠点として上げられるのは、内部構造が複雑になる事と燃料をロケット内部に入れっぱなしに出来ない事。

しかし、イプシロンロケットが採用している固体燃料方式は、内部構造が簡単で燃料をロケットの中に入れっぱなしすることが出来る。小型化も容易で、安価で非常に使い勝手の良い方式のロケットなのだ。そのため、大部分の弾道ミサイルが固体燃料方式のロケットエンジンを使っている。

核ミサイルや弾道ミサイルに液体燃料ロケットを使うと発射までに時間がかかるため、肝心な時に使いにくくなってしまうからだ。こう言うと、まるで日本が核ミサイルを使いたくてイプシロンロケットを作った様に聞こえるかもしれない。事実、高度な原子力技術を保有する日本がその気になれば、核爆弾を作ることは可能だ。そして、その核爆弾をイプシロンロケットに搭載すれば、核ミサイルの出来上がりとなる。H-IIAロケットでも核ミサイルは作れるが、核攻撃を受けてからのんびり燃料を注入している時間は無いので無理がある。

そういう懸念もあり、イプシロンロケットに関しては某国から強い批判が浴びせられた。しかし、固体燃料ロケットの技術自体は液体燃料ロケットとは全く別のものであり、液体燃料ロケットには無い大きな利点が存在するのは確かだ。もし、安価なイプシロンロケットのコストが20億レベルにまで落とすことができれば、十分に採算の取れる打ち上げロケットになる。

安価なロケットを作っていつでも打ち上げられる状態で保持出来るということは、必要に応じてすぐに衛星や宇宙ステーションへの補給が可能になるということだ。打ち上げが失敗したり、何らかのトラブルですぐに打ち上げが必要な場合にも、イプシロンロケットは大きな力を発揮するだろう。

有人ロケットの開発は?H-IIAで打ち上げられないのか?

今、殆どの有人ロケットの打ち上げがロシアのソユーズによって行われている。なぜなら、ソユーズが最も確実で実績のあるロケットだからだ。

では、日本がそれを作る予定ないのだろうか?
H-IIAに人を乗せることは出来ないのだろうか?

結論から言えば有人ロケット開発の予定はあるが、H-IIAでは無理。

有人の場合、乗員の生存性確保と言う大きな課題が生じる。打ち上げ時の衝撃や振動対策もそうだが、帰還時の大気圏突入艇や非常時の脱出手段など、根本的に全く新しい技術開発が必要になるのだ。もし、帰りの手段や非常時の脱出方法を考慮しないのであれば、H-IIAの荷物代わりに人を入れることは出来るかもしれないが、それはもはや有人ロケットとは呼ばない。

米露欧に比べると日本の宇宙開発は少し遅れ気味だが、国力が圧倒的に異なる大国と同等の技術力を保有しているのは日本ぐらい。宇宙が大国だけのものではないと、示すためにも日本のJAXAには頑張ってほしいものだ。