「はやぶさ2」の解説(後編):クレーター生成とサンプル採取のハイテク装備(自己鍛造弾とサンプリング装置)

クレーターを作った後は、クレーターが出来た場所で小惑星のサンプル採取が必要になります。

サンプリング装置(SMP)

20141122-4
HAYABUSA -BACK TO THE EARTH

はやぶさ2のサンプリング装置は初代はやぶさと外見自体はあまり変わりありません。

方式も基本的には変わりなく、象の鼻のように伸びたノズルで舞い上がった小惑星の粒子を吸い込むようにして確保する方式です。

問題はどうやって小惑星表面の粒子を舞い上がらせるかですが・・・やはりショベルようなものを使う事はありません。小惑星探査で実際に着陸するようになったのはつい最近のことなので、実際に接地してサンプルを確保する方法は確立されておらず、今回でもそう言うやり方は行いません。そこで、昔から使われている方式として、地面に弾丸を打ち込んで衝撃で舞い上がった粒子を確保すると言うやり方が使われます。

「え? 最初に砲弾を撃ってクレーターを作った時に舞い上がったモノを回収すれば?」と、思うかもしれません。

昔は本当に小惑星にバカでかいクレーターを作ってサンプルを回収していましたが、安全のために距離を取らなければならず、確実性が低くて、うまく行っても少量のサンプルしか回収できません。

はやぶさシリーズのように、接近して小さな弾丸を使って回収する方法の方がより沢山のサンプルを確実に回収できるのです。ちなみに、「初代はやぶさ」は弾丸打ち込みに失敗していますが、上の写真の様に着陸の際に舞い上がった粒子がほんの少し装置に入り込んでいたので回収自体は成功しました。銃弾は小さく、はやぶさ2の本体は数百キロあるので銃弾の発射で大きくバランスを崩すこともありません。

さらに、今回の装置では改良が加えられて複数回のサンプル回収が可能になっており、クレーターがある場所とない場所でサンプル回収ができるようになっています。少し難しいかも知れませんが、ミネルバチーム(全3機)が興味深い場所を発見すれば、その場所でサンプル回収を行うと言うこともあるかもしれません。

それから、前回のように銃弾が発射できなくても、ノズルの先っぽに返しを付けてサンプルを引っ掛ける事が出来るようになりました。つまり、ノズルをグサッと地表に差して引き上げれば、それだけでサンプルが回収できてしまうのです。小惑星の重力が小さいため、引き上げている最中に急に止まれば、勢いでノズルの先に引っかかったサンプルがノズルの上に登って行って回収ボックスに入ってしまうと言う寸法です。

万が一に備えて様々な対策を取っていた「初代はやぶさ」ですが、その精神は「はやぶさ2」でも健在のようですね。

 

参考文献:ファン!ファン!JAXA!(http://fanfun.jaxa.jp/countdown/hayabusa2/index.html)