加湿機の仕組み(後編):スチーム式、気化式、超音波式、ハイブリッド式の仕組みと特徴

前編では乾燥の理由について触れていきましたが、後編の本記事はでは加湿機についてご説明していきたいと思います。

加湿機には、大きく分けてスチーム(蒸気)式、気化式、超音波式、ハイブリッド式が存在しています。ハイブリッド式は気化式とスチーム式の複合方式なので、事実上原理的には三種類と言えます。問題は、方式によって加湿の原理が異なり、利点や欠点が存在することです。

これらを理解して、自分のニーズにあった加湿機を選べると良いですね。

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加湿の基本原理

加湿機の話を始める前に、前編でご説明した乾燥の理由を踏まえて加湿の原理についてご説明したいと思います。

まず、乾燥とは湿度が下がることで、尚且つ空気中の水分量が少ない状態です。元々の温度が低ければ、温度が上がった際に湿度が下がり乾燥しますし、温度が高くても水気がなければ乾燥します。そして、空気が乾燥すれば、水の固まりである人間の肌や口内から水分が気化して空気中に逃げて行き、人は乾燥を感じるのです。

では、当然乾燥を防ぐためには加湿が必要になります。水分の足りない空気を加湿するためには、「水分を気体にして」空気中に放ってやる必要があります。コップに汲んだ水を部屋に持ってくるだけでは、加湿にはなりません。空気と水を混ぜる事を加湿と呼ぶのですね。

水は持っているエネルギーによって、氷・水・蒸気と状態が変化します。蒸気、気体の状態にするには何らかの形でエネルギーを与えてやる必要があるのですが、どのようなやり方があるのでしょう?

水を気体にすると言って一番に思いつくのが沸騰です。これは、水に熱エネルギーを与えて、過剰なエネルギーを得た水分子を液体の状態から気体にすることを目的にしています。次に気化ですが、どちらかと言えば、これは空気が持っているエネルギーを使って自発的に気体になっている状態です。そして、新しいやり方が超音波式。音というのは物質の振動で生まれますが、音の振動エネルギーを水分子に与えて気化させる方式といえます。

では、各方式毎にどのような特徴があるのでしょうか?

「スチーム式」:発生させる水分量は最も多い

VICKS スチーム式 加湿器

非常にシンプルな方式なのがスチーム式。

電気の力で熱を作り出し、水分子にエネルギーを与えて無理やり気化させる方式です。しかし、この方式で気体になった水分子は、ややエネルギー過剰な状態です。空気が水を受け入れられない速度で蒸発していくため、余った水分が加湿機周辺で水滴になったり、壁などに付着してしまう事があります。

沸騰させて水が殺菌されているため、空気中に飛散する水分に雑菌が混入する事はありませんが、壁などに付着した水分でカビなどが発生し、部分的に不衛生になってしまう事があります。必然的に、結露が発生するリスクも上がり、周囲に精密機器を起きにくくなります。

勢い良く水を気化させて加湿を進めるのは良いのですが、一箇所で加湿している以上、水分が広がる速度には限界があります。空気に入りきれなかった水分が液体に戻ってしまうと、衛生上問題になります。出力を抑えるか、暖房やサーキュレーターなどで空気を撹拌するように使うと効率的でしょう。

さらに、沸騰させると言うのは水を気化させるためのエネルギーとしては無駄が多く、電気代が掛かるのもネックです。また、水の中のミネラル等は気化せずに加湿機内部に残るので清掃も必要です。沸騰させるので、当然温度を上げる効果も少しだけ存在しています。

加湿効果が高い。水が殺菌される。

電気代が掛かる。使い方を間違えると不衛生。

「気化式」:最も自然な加湿

Panasonic 気化式加湿機

気化式は、水分子が本来持っているエネルギーや空気が持っているエネルギーを使って自然に水を気化させる方式です。

水分子は冷たくても多少はエネルギーを持っていて、さらに空気もエネルギーを持っています。なので、空気に触れている水分子は放っておいても空気にぶつかってエネルギーを得たり、自発的に空気中に飛び出したりして、少しずつ気化しています

そこで、水分子がより空気に触れやすい状況を作って自然に気化しやすいような状況を作り出します。これがタオルです。タオルや布が水を吸うのは、布の繊維に水が万遍なく付着しているからで、タオルの中に水を貯めこむ箱が入っているわけではありません。繊維に付着した水は、コップに入った水よりもはるかに空気に触れる機会が増えます。さらに、そこに風が吹いてきて、空気に触れる機会が更に多くなると気化がどんどん促進されます

気化式の加湿機には、水を吸いやすい繊維が沢山入っていて、さらにその繊維に空気を当てて気化を急速に促進します。この加湿は、空気が含める水分量だけを確実に気化させて行くので、過剰な水分が水滴になることはありません。

言ってみれば、空気に馴染むように自然に気化させる方式と言えるでしょう。

電気代の安い方式ですが、空気のエネルギーを使って水分を気化させるので温度が下り、加湿能力も低めなのが欠点です。水を含ませる繊維などが汚れたり、雑菌が繁殖する事があるので定期清掃は忘れないようにしましょう。

自然に加湿する。省エネ、衛生的

加湿能力が低い。室温が若干下がる