潜水艦乗りの過酷な戦い(2):海に潜んで何が出来る?音も立てずに海中で隠れ続けるために

そんな潜水艦の価値が大きく認知されるようになったのは世界大戦です。
具体的にどんな活動をしていたかというと、真珠湾攻撃などの大きな作戦前に敵地の情報を送ったのは潜水艦ですし、武器弾薬や兵員を満載した輸送船を次々に沈めて妨害工作を行ったのも潜水艦です。さらに、空母や戦艦といった戦闘中は厳重に守られている強力な船を防備の緩んだ隙に沈めたのも潜水艦でした。

潜水艦の乗組員はせいぜい数十人。船の大きさも数十メートル。それが、乗組員が数百人いる百メートル超えの空母や戦艦を沈めるのですから、相当な活躍をしていたといえますね。まあ、そんな獲物を仕留められる事は滅多にありませんが。

発見されたら終わり、逃げるが勝ちの潜水艦

さて、隠密行動に秀でた潜水艦ですが、音を出せば見つかってしまいます。

一度見つかってしまうと、多くの場合潜水艦はあっさりと沈みます。もちろん、すぐに音を消して逃げられればいいのですが、逃げようとして動いても音が出るのです。そして、その音を探知されれば近づかれて攻撃を受けるので、攻撃を受けたら(原潜は除き)潜水艦は非常に軽く(小さく)作られていて装甲も薄いため、攻撃に耐えられずに即死します。

「重装甲にすれば良い」と、思うかもしれませんがそうは行きません(原潜は除く)。
というのも、「燃費が悪くなるので大きく出来ない」からとか、「直接戦闘しても勝てないから」だとか、「軽く(小さく)して逃げ足を速くした方が良い」だとか、色々理由があるのですが、戦闘というのはそもそも逃げるか敵を倒さなければ終わりません

潜水艦が集団で動きまわって戦うならともかく、コソコソ戦う潜水艦が一度見つかると大抵は「多勢に無勢」であり、敵を全滅させて生き残る事は期待できません。忍者が敵の城で見つかっても良いように重たい鎧を着込んでいたなどという話は聞きませんよね?

もちろん、群狼作戦のような潜水艦の集団戦法で戦闘力を高める手法も開発されましたが、これらは「小規模な護衛のある船団」に確実に被害を与えるための戦術であり、本格的な戦闘艦隊を倒すほどの力はありません。仮に潜水艦をたくさん集めたとしても、航空機や高速で移動する駆逐艦を潜水艦で撃破するのは容易ではなく、魚雷発射に伴う攻撃音も非常に大きいので、「一度見つかってしまったら逃げるのが最良」と言うのは今も昔も変わりません。

余談ですが、現代ではヘリコプターや航空機がソノブイ(小型のソナー)を海に撒いて水中の音を拾うことが出来るため、潜水艦にとって大きな脅威になっています。また、大戦時であれば浮上していない限り航空機からは見つかりませんでしたが、そもそも当時の潜水艦の電池では長期間潜ったままでいることが出来なかったため、ちょくちょく充電のために浮上した際に見つかって攻撃されていました。そこで、飛行機からは見えない夜間に浮上して充電していたようですが、それに対抗して探す側も航空機にライトを搭載(リー・ライト)したようです。

上述したように、大戦時の潜水艦は浮上航行している時間の方が潜行時間より長かったため、浮上時の航行速度が最大になるように作られていました。そのため、潜水時の速度が非常に遅く、見つかったら遅すぎて逃げられないことも多かったのです。

しかし、現代の潜水艦では潜行時間の方が浮上時間より長くなってきたため、潜行時の航行速度が最大になるように作られています。最大速度が水上艦とさほど変わらなくなっており、見つかっても全速力で移動すれば(高速航行は騒音が大きく危険ですが)逃げられないこともないのです。どちらにせよ、強力な誘導魚雷やミサイルを運用する現代では装甲など無意味ということもあり、重装甲・重武装で大型化するより、戦闘から素早く離脱する方が確実と言えるようになりました。

下図を見ればわかりますが、Uボートと原子力潜水艦は見るからに形状が大きく異なっています。Uボートは長時間海上を航行するので、船のような形状をしていますが、半年近くずっと潜っている原子力潜水艦はもはやただの大きな魚雷のようにも見えますね。

800px-U_995_Typ_VII-C_Laboe_31.07.04
(Uボート_Wikipediaより)

 SSN 774 Virgina Class Submarine
(バージニア原潜_wikipediaより)

誰にも見つからずに贅沢は出来ない?

潜水艦はコソコソするのが任務で、見つかったら終わり。

と言うのは分かりましたが、何故それが潜水艦乗りの過酷な生活に繋がるのでしょう?