潜水艦乗りの過酷な戦い(2):海に潜んで何が出来る?音も立てずに海中で隠れ続けるために

最大の原因は補給が乏しい事にあります。
食料や燃料はもちろん、酸素ですら限られている潜水艦です。補給を行うには、陸に戻るか物資を満載した船に合流する必要がありますが、それらを敵に見つからずに行うのは至難の技です。浮上などはもってのほか。

陸に戻れば任務は果たせませんし、物資を満載した船は敵からバレバレなので安全な海域にしか展開しません。仮に輸送潜水艦なるものを作り、海中で静かに接続して物質を輸送すると考えて見ても、そもそも「見つからずに敵地に物資を輸送できるなら、そのまま任務を交代した方が早い」ので何やら意味不明です。常に輸送潜水艦を引き連れた艦隊運用と言う手法もありますが、艦隊規模で潜水艦部隊を構成する場合、音源が増えるということは、見つかる可能性が数倍に膨れ上がるということなので、潜水艦の利点が失われることにもなります。

つまり、長時間敵に見つからずに活動するためには、可能な限り単独で行動し、誰とも接触せず、物資の消費は最小限にするべき。ということになります。要は引きこもり、誰とも話さず、宅配便も頼むなということです。きっと、近所の人は部屋に誰もいないと思うでしょう。

何はともあれ、そこが他の水上艦船とは大きく違うところです。
近づかれたら絶対に見つかる前提で行動する海上の艦船は、物資が足りなくなれば輸送船を待てば良いですし、輸送船を含んだ艦隊を運用する事もできます。特に酸素が潤沢なのは大きく、排気や騒音を気にする事無くエンジンを動かして発電したり、純水(淡水)を生成することが出来ます。

さらに、潜水艦は何でもかんでも、「静かに」しなければいけないため、音が出るものは全て制限されます。

これはエンジン音だけではなく、「搭乗員の生活音」も含まれます。足音はもちろん、ドアの開け閉め、トイレの使用、物の落下音、など多くの事に気を払わなくてはいけません。ただし、それが「船体に響く音」でなければ大丈夫なので、空気を震わせるだけの声などはセーフです。

極端な話、水に触れている部分(船体)が振動しなければ海中に音は伝わりません。ですので、エンジンの振動を吸収するサスペンションなどを使って、可能な限り振動が外(海中)に伝わらないような工夫が施されています。

まるで壁の薄い集合住宅で生活するような潜水艦の乗りの暮らしですが、何にせよ・・・音も立てずにコソコソ生活するのは苦労が耐えないということなのですね。

 【第3回へ続く

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