潜水艦乗りの過酷な戦い(4):魚雷だけじゃない!対艦・対地・対空装備、海で最強の潜水艦

これらの魚雷が進む際には、内蔵エンジンでスクリューを高速で回したり、ウォータージェットを噴出して推力を得たり、場合によってはロケットエンジンを使って勢いよく航行する魚雷もあります。基本的にこれらの魚雷は、水の抵抗を受けるためにどんなに速くても50ノット(90km/h)程度しかでません。船よりは早いですが、ミサイルと比べれば遥かに鈍足です。しかし、スーパーキャビテーション(水中を高速移動する物体の周囲に気泡が出来る現象)を利用した特殊な魚雷などは、気泡を纏うことで水の抵抗を減衰し、200ノット(360km/h)で進むことが出来るそうです。

余談ですが、第二次世界大戦開始時には日本の魚雷技術が世界の最先端を行っており、航空機から投下できる魚雷(世界初の航空魚雷)、航跡が見えない、射程が長い、破壊力が高い、など非常に優れた魚雷(酸素魚雷)を持っていました。そのせいで、魚雷を搭載する駆逐艦や巡洋艦が雷撃重視で設計され、対空装備が疎かになったと言う話もありますが、日本軍にそれほど期待させてしまうほど、魚雷と言うのは戦局を変え得る力を持った兵器だったのですね。

対地、対艦、対空兵器?水中だけじゃない潜水艦!

潜水艦といえば魚雷。そう思われるかも知れませんが、多くの潜水艦が魚雷以外の兵装を積んでいます。

対地・対艦攻撃装備

対艦攻撃と言うのは魚雷で事足りるのですが、この場合は海上から攻撃する対艦兵器の事を指します。というのも、魚雷は鈍足なので、遠くから撃ったとしても、着弾までに様々な対抗措置が取れるからです。また、地上の設備を魚雷で攻撃する事はできず、海の上や地上を攻撃できる装備というのは多くの潜水艦に要求される装備でもありました。

そこで、昔の潜水艦に必ずと言って良いほど搭載されたのが甲板砲です。

「潜水艦なのに砲撃?」と、思うかもしれません。
砲撃は水中からは出来ませんので、当然浮上してぶっ放します。危険際まりないのですが、魚雷の本数には限りがありますし、武装した敵がいなければ、非武装の敵に対しては有効な兵器です。近くに武装艦や航空機がいればすぐに攻撃を受けるので、砲撃は大胆かつ慎重に行わなければなりません。ちなみに、昔の潜水艦と言うのは航空機の機銃でも沈みかねないほど薄っぺらい装甲でしたので、対空機銃ですら脅威でした。

20150119-1現代では浮上した瞬間、レーダーや衛星に捕捉されるので甲板砲などは装備されません。その代わりに、対艦ミサイルや巡航ミサイルが装備されます。どれも水中から発射できるような構造になっており、対艦ミサイルなどは魚雷発射管から魚雷と同じように発射できます。

ちなみに、その場合は左図のような魚雷の形をした殻の中に対艦ミサイルを格納し、発射された対艦ミサイルのパッケージは海面目指して普通の魚雷のように航行します。そして、水面に出た瞬間に殻の中から対艦ミサイルが発射され、対艦ミサイルは水の抵抗が無くなった海の上を普通のミサイルと同じように飛んでいきます。

当然、対艦ミサイルは魚雷より高速で飛翔し、魚雷より射程が長いので、遠くの目標に対して安全に攻撃するのに非常に使い勝手の良い兵器となります。

ただし、この手の兵器の欠点として、潜水艦が音で敵を発見する一方でミサイルは電波で目標に向かうため、別の目標に向かって飛んで行くリスクがあることです。潜水艦が潜望鏡深度まで浮上し、電波系の探索機器を使えば精度を高める事も出来ますが、基本的には大まかな位置だけ入力して発射します。そのため、敵方の対抗策としては、重要な船舶を素早く退避させて、護衛艦がミサイルの迎撃を行うことで重要な船舶を守ると言う方法もあります。

対空兵器?空の目標と潜水艦が戦う?

潜水艦にとって、航空機やヘリと言うのは天敵以外の何者でもありません。というのも、航空機は海中に音を飛ばさないため、場所がわからないからです。一方で、航空機は集音機器を海中に投下して、電波や有線(ヘリの場合)でその情報を受信する事ができます。

つまり、航空機は潜水艦を一方的に見つけられるのに、潜水艦は航空機を見つける術が無いということなのです。無論、対空レーダーや電波探知機で航空機の位置を探る事は可能ですが、海面スレスレか浮上しないと使えません。そのため、一般的な対潜哨戒機対策としては、潜水艦は海の奥深くに沈んで隠れる他ありません。

それでも昔の潜水艦は充電のために頻繁に浮上する必要があったため、航空機と戦う術が必要でした。ですので、大戦時の殆どの潜水艦に対空機銃が装備され、航空機とも戦えるようになっています。ちなみに、機銃と言っても一つか二つしか無いので、実際に落とせる事は稀です。しかし、もし何もついていなければ、航空機はのんびり潜水艦をなぶり殺しにできるので、搭載しないわけには行きません。一つでも機銃がついていれば、航空機は多かれ少なかれ回避運動を取りながら攻撃する事を強いられ、潜水艦の生存率が高まるのです。

では、現代はどうでしょう?