いずも型護衛艦の性能と任務(後編):他の空母と何が違うのか?ひゅうが型とも比較してみる

ニミッツ級航空母艦

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ニミッツ級航空母艦は有名な原子力空母で、世界最大クラスの「攻撃型空母」です。

固定翼機を運用するためのカタパルト(飛行機を急加速させる装置) を持ち、アングルド・デッキ(斜めに滑走路が引いてある)で着艦作業が効率的に行えるようになります。普通の真っ直ぐな甲板だと、甲板上の他の艦載機が邪魔になるので、一部斜めにひいてあるんですね。

アングルド・デッキはともかく、固定翼機の運用においてカタパルトの存在は非常に重要です。ジェット戦闘機は大型で重たく、普通に艦上の短い滑走路を使ったところで離陸できません。そのため、カタパルトで急加速させることで運用出来るようになっています。

一昔前までは、カタパルトはある意味「攻撃型空母」における必須条件でしたが、ジェット機が進歩し、短距離離陸や垂直離陸が出来るようになった今ではそういうこともなくなりつつあります。

とりあえず、見た目的にも機能的にもいずも型護衛艦とは大きく異なるのがわかります。

<いずも型との違い>
-圧倒的(4倍)に大きい
-カタパルトがある
-アングルド・デッキがある

インヴィンシブル級航空母艦

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これは比較的新しいタイプの航空母艦で、滑走路の一部がジャンプ台の様になっています。

比較的短い距離で離陸できるようになったジェット機のためにジャンプ台が設置されているのですが、カタパルトなどは搭載されておらず、搭載できる戦闘機はハリアーなどの短距離離陸・垂直離陸が可能な機種に限られるので、空母としての戦闘力は限定的です。

艦載機は20機前後の軽空母と呼ばれる小型空母で、このクラスの空母であれば先進国の多くが運用可能です。

このタイプの空母の場合、いずも型護衛艦と似ていると言われれば間違いではないでしょう。いずも型護衛艦にはジャンプ台こそないものの、艦の規模としてはいずも型護衛艦の方が大きいほどで、大規模な改装工事を行えばジャンブ台を付けて同等の機能をもたせられると推測されています。つまり、改造すればいずも型護衛艦もこのような空母になれるということです。

<「いずも型」との違い>
-発艦用のジャンプ台がある

ワスプ級強襲揚陸艦

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ワスプ級には強襲揚陸艦という名前が付いており、米軍では空母とは呼ばれていません。しかし、多数のヘリと航空機を積み、さらに陸上戦力の輸送能力を持つという点でいずも型護衛艦にかなり近い性質をもっています。

対潜哨戒艦隊の旗艦になることもあり、いずも型護衛艦と似たような任務遂行能力があることも明らかです。また、米軍で空母といえば「原子力空母」を指すため、敢えて揚陸艦という別の艦艇に分類にし、小型の空母である「軽空母」と区別しているという解釈もあります。要するに、名前が違うのは米軍の都合ということです。

ただ、強襲揚陸艦という名前の通り、ワスプ級にはウェルドックと呼ばれる小さな港のようなものが艦内(後部)に設置してあります。そして、そこから上陸用の小型艇やホバークラフトなどを発進させることができるようになっています。海上自衛隊では「おおすみ型輸送艦」などがウェルドックを搭載しており、ウェルドック搭載艦はいずも型護衛艦とは明らかに別の用途を持って作られていることが分かります。

また、ワスプ級強襲揚陸艦の場合、ハリアーなどの短距離離陸や垂直離陸が可能な固定翼機の運用能力もあるため、戦闘能力は極めて高いです。

<「いずも型」との違い>
-ウェルドックがある

こうしてみると、いずも型護衛艦はどの他の国の空母(揚陸艦)にも当てはまらないような「特殊な空母」のように思えます。

いずも型護衛艦はヘリコプターしか搭載しませんし、ジャンプ台のための傾斜もありません。ウェルドックもないので、「ワスプ」や「おおすみ」といった揚陸艦のように上陸艇も扱えません。

しかし、ジャンプ台やカタパルトのないワスプ級が固定翼機を運用しているように、特別な装備が無くてもある程度大きな甲板があれば固定翼機を運用できる事は事実です。自衛隊は短距離着陸や垂直離着陸が可能なF35を新型航空機として購入する予定なので、将来的には「いずも」や「ひゅうが」で固定翼機を「飛ばす」ことはできるでしょう。

ただ、「運用」となると話は別です。

人員の育成はもちろん、固定翼機の運用を想定されていない「いずも」は改修を余儀なくされます。それらはすぐに行えるわけではなく、数年がかりで取り組むことになります。

いずれ可能になる可能性はあるとはいえ、少なくとも現時点ではいずもは「他国を攻撃できる空母」ではありません

対潜哨戒を中心に、多彩な活動を支援する多目的空母と言えます。