一次・二次電池の特徴と原理、アルカリマンガン乾電池とニカド充電池はどう違う?-電池のしくみ(2)

アルカリ電池とニカド電池

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「充電出来ない電池」を一次電池、「充電できる電池」を二次電池と呼び分けています。つまり、「充電池」といえば二次電池の事を指すのですね。

一次電池の中にも充電自体は可能なものがありますが、長時間充電したり、何度も繰り返し充電していると高確率で破損して使い物にならなくなります。そのため、二次電池と言うのは、厳密には「繰り返し充電して何度も使える電池」だと考えた方が良いですね。

この二つにはどのような違いがあるのでしょうか?

実は、電極に使われている素材や電解液、その構造に違いがあります。

一次電池であるアルカリ電池
  陽極:二酸化マンガン(MnO2
  陰極:亜鉛(Zn)
  電解液:水酸化カリウム水溶液(KOHaq)

二次電池であるニカド電池
  陽極:水酸化ニッケル(NiOOH)
  陰極:水酸化カドミウム(Cd(OH)2
  電解液:水酸化カリウム水溶液(KOHaq)

電解液以外は全く違う物質を使っていますね。

アルカリ電池が、マンガンを使っているのでマンガン電池かと一瞬思ってしまいますが、マンガン電池とアルカリ電池の違いは電解液がアルカリ性(水酸化カリウム)酸性(塩化亜鉛)かの違いしかありません。どちらもの二酸化マンガンを使っている電池であり、アルカリ電池の正式名称はアルカリマンガン電池です。

マンガン電池はさておき、ニカド電池とアルカリ電池の最大の違いは、充電できるか出来ないかにあります。しかし、アルカリ電池も無理やり逆の電圧をかければ実は電力は戻ります。

しかし、アルカリ電池の二酸化マンガン(MnO2)は、使用後にはMnOOHと言う水素が増えた状態になっています。これに電圧を掛けて逆の反応を起こして、MnO2に戻そうとすると、余ったHが集まってH2になってしまうのです。元々は水素イオン(H+)の状態だったのですが、H2になってしまうと二酸化マンガンと反応しません。その上、気体が電池の中で発生して膨張し、最終的には結合部などから電解液が漏れ出します。

<アルカリ電池の充放電:陽極>
放電時: 2 MnO2 + 2 H2O + 2e → 2 MnOOH + 2OH
充電時: 2 MnOOH + 2OH2MnO2 + 2 H2O + 2e [OR] 2 MnO2 + H2 + 2OH

一方、ニカド電池では水酸化ニッケル(NiOOH)が、Ni(OH)2になる反応が起こります。これを元に戻そうとすると水素(H)が余るのですが、実際には水酸化イオン(OH-)として動きまわり、反応の直前に水素イオン化して別の物質と結合しているため、Hは水素化せずに水になります。そのため、充電しても気体が出ずにそのまま何度も充放電を繰り返せるのですね。

<ニカド電池の充放電:陽極>
放電時: NiOOH + H2O + e → Ni(OH)2 + OH
充電時: Ni(OH)2 + OH → NiOOH + H2O + e

水素がでていないように記述していますが、実際には若干の水素が発生しています。ただし、その量はアルカリ電池などとは大きく異なりますし、発生した水素はある程度抜けるようになっています。

また、使われている電極の金属のイオン化傾向の違いから、アルカリ電池の電圧が1.5Vニカド電池が1.2Vと無視できない出力の差があります。ライトなどに使うのであれば、アルカリ電池が良いでしょうね。

一次電池と二次電池の違い

充電というのは、電池が初めて生まれた時の用途から見ると非常に特殊な機能です。前回の記事でご説明した二次電池を除いた全ての電池で、「充電」などという機能を持った電池は存在しません

電池というのは、「電気エネルギー以外のエネルギー」を「電気エネルギー」に変える装置です。それを、「電気エネルギー」を使って、「元のエネルギーに変える」のです。二次電池の場合、「化学エネルギー」で「電気エネルギー」を作る電池に「電気エネルギー」を使って「化学エネルギー」に戻すと言う作業です。やっている事自体は、化学反応を逆向きに発生させるだけ。

言うのは簡単ですが、化学反応で燃えて炭になった木を元の形に戻せないように、化学反応を綺麗に逆向きに発生させることは極めて難しいのです。しかし、ニッケルやリチウムなどは条件さえ整えば可逆反応が可能であり、自然の中では稀な可逆的な化学反応を人為的に起こすことに成功しています。

とは言え、実際には完璧な可逆反応とはなりません。人為的にせよ何にせよ、化学反応にも物理的な現象であっても、エネルギーが完全に補完される完璧な可逆現象は存在しないと言われています。

車の塗装が剥がれて塗りなおしたところで完璧に元通りにはならないように、ニカド電池もリチウムイオン電池も、充電時に発生する化学反応では元の状態とは少し異なった形に戻ります。それが繰り返される内に、電力が落ち始め、最終的には使えなくなります。

一次電池と二次電池の違いというのは、「どれくらい逆向きの反応が綺麗に起こるか」と言う部分の違いしかありません。アルカリ電池も少しは充電できますが、数回やったら壊れます。ニカド電池も充電できますが、数百回やったら壊れます。大きな差ではありますが、あくまで程度の差でしかないのですね。

覆水盆に返らずではありませんが、放電した電気を元に戻そうと思っても、完璧に元通りになることはありません。