そうりゅう型潜水艦輸出問題、遂に日独仏対決へ!どうしてこうなった?

結局、そうりゅう型が選ばれる可能性はあるのか?

そこで問題なるのが、実際に条件を出し合って比較した場合、そうりゅう型が選ばれる可能性があるのかどうかです。

詳しい性能比較については別の記事で扱っていますが、まず独仏の潜水艦は未完成の計画中の潜水艦になります。

逆に言えば、既に完成しているそうりゅう型より高性能なものにすることができるのです。

特に独の216型などは、独の高い技術力をフルに投入すれば日本のそうりゅう型を超える潜水艦になる可能性を秘めています。ただ、問題は外洋で潜水艦を動かす理由のない独自体が216型クラスの長大な航続距離を持つ潜水艦を必要としておらず、計画が頓挫する可能性があることです。実際にそういう前科があり、計画中の兵器が大幅にダウングレードされて作られたことがあります。

また、独の潜水艦は近海防備向けの小型のものが多く、そうりゅう型クラスの大型潜水艦を作るのが初めてだというのも不安要素の一つです。仮に完成しても、韓国に輸出した214型と同様大幅にダウングレードされた潜水艦がライセンス輸出されると見られています。

一方、仏は原子力潜水艦の動力部を通常型に置き換えたダウングレードモデルです。仏は独と違って、海軍が諸外国(アフリカなど)で活動しますので、長大な航続距離を持つ大型艦を使います。ただ、原潜を持つ仏は独や日のように通常型を長距離運行させるための技術(AIP機関)を保有しておらず、豪州の要求性能をどこまで達成できるかが疑問です。

仏の強みは豪州国内で完全生産できること。と言うより、仏は通常型潜水艦を作っていないので当然です。独型も国内でライセンス生産が可能ですが、主要部品の大半が取り寄せになるので魅力は半減です。

一方、仏潜水艦のように豪州国内で作れるのであれば、豪州造船業は活気づきます。コリンズ級で培った機関技術のノウハウも(未熟とは言え)投入できるので、豪州造船部門としては技術力を高められる良い機会となるでしょう。

コリンズ級潜水艦更新問題の構図

この問題を外交問題や国内の支援関係も含めてみると複雑です。

豪州政府、米国政府 → 日本を支援
日米豪の同盟関係が強化され、潜水艦の信頼性も高い。将来的に安泰。

豪州造船業 → 仏を支援 
ほぼ国内生産に近い態勢となり、雇用が安定。技術成長も望める。

韓国・その他 → 独を支援
独は日中韓の外交問題に中立な立場。韓国も独製潜水艦利用している。ライセンス生産可。性能も仕様通りなら、日本を超える。

太平洋の安全を守る日米豪の同盟関係が強化される上、実績も十分な日本の潜水艦を使いたいというのが豪州政府の本音です。しかし、豪州の造船業は全く生産に関われず、数千人の雇用が失われる結果となります。国内の反発を抑えたいのであれば、仏の潜水艦を使うことになるでしょう。

ただ、そうなると技術的に不安な部分が多く、ライセンス生産を許可する方向性で検討している独の潜水艦も魅力です。日本の潜水艦と同等以上の性能が達成される見込みで、ダウングレードモデルであっても十分以上の性能となるでしょう。

今後、比較検討されるとなった以上、どれが輸出されることになってもおかしくありません。

使うなら日本のそうりゅう型が一番安全なのは変わりませんが、独や仏も捨てがたいでしょう。日本がライセンス生産を許可すれば間違いなくそうりゅう型に内定しますが、輸出実績のない日本にとってはメリットが半減です。ライセンス生産は許可しない方向性なので、後は他の国の出方次第となるかもしれません。