日本のそうりゅう型、ドイツの212型、ロシアのラーダ型を比較-世界の通常動力型潜水艦を徹底比較!(分析編)

「ラーダ型」 - ロシア

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(ラーダ型_wikipedia

ロシアの傑作潜水艦キロ型の後継で、輸出用にアムール型が作られています。ロシアは原子力潜水艦も運用している国家であり、原子力潜水艦に装備されている兵器もオプションで利用できるため、高い作戦行動能力を誇っています。また、ドイツの212型と同様に、幅広いニーズに応える多用途艦にもなっています。

隠密性「9」

キロ型が高い隠密性を誇っていたのは世界的にも知られており、その後継である本型もそれ以上の隠密性を持っているとされています。必要であれば燃料電池の搭載も可能で、高い隠密性を保ったままで長時間の作戦行動が可能です。隠密性に関しては世界最高水準と言って良いでしょう。

潜水能力「8」

燃料電池がオプション化されているので、非搭載型の連続潜航能力はかなり限られたものになってしまいます。また、正確な数値ではないとは言え、公表されている潜航深度も300mとかなり控えめなので、212型やそうりゅう型に比べると潜水能力はやや劣ると見られます。ただ、燃料電池搭載型の連続潜航能力はかなり高くなるでしょう。

行動範囲「7」

船体が比較的大型で、あらゆるニーズに応えられるように輸出用のアムール型では小型のものから大型のものまで数多くのバリエーションがあります。小型のものでは限定的ですが、大型のものであればそれなりの行動力があるようです。

戦闘能力「10」

大型モデルであれば、魚雷以外にも機雷、対空・対艦・巡航ミサイルなど潜水艦が運用可能なあらゆる装備を運用可能で、攻撃可能範囲も非常に広いです。戦闘能力に関しては、ラーダ(アムール)型の右に出る潜水艦はないでしょう。ただ、原子力潜水艦を保有するロシアが、敢えてラーダ型の大型モデルを作ってまで巡航ミサイルを搭載するメリットは薄そうです。

拡張性(8)

輸出用にサイズや装備にバリエーションがあり、用途に合わせてアムール型を作る事を前提に開発されているため、様々なニーズに柔軟に対応できるでしょう。拡張性も高く、基本設計はそのままに長期間の運用に耐えうる設計です。

総評

キロ型から発展させただけあって、高い隠密性と戦闘能力を兼ね備えた汎用性の高い艦となっています。単独で敵地に潜入してもよいですし、艦隊と共に行動しながら火力を提供する事もできるでしょう。

「バージニア型原子力潜水艦」-米国

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原子力潜水艦は主に攻撃型と戦略型に分けられ、戦略型は弾道ミサイル運用が前提となっているので潜水艦や水上艦と戦う能力は限定的です。攻撃型は通常動力型潜水艦と似たような任務を目的に作られており、哨戒・攻撃・破壊活動など様々な任務に利用可能です。

原子力潜水艦バージニア型は攻撃型であり、空母機動部隊の最前線で哨戒を行ったり、単独での長期作戦行動も可能です。高価なシーウルフ型には劣りますが、原子力潜水艦としてはトップレベルの性能を誇っており、高い静粛性と戦闘能力を有しています。

隠密性「7」

原子力潜水艦は原子炉を搭載しているため、動力を完全に止める事は出来ません。スクリューなどを止めても、原子炉周辺で駆動している機器の音を完全にゼロにすることは出来ず、どうしても音が出てしまいます。また、発生する熱量も膨大で、赤外線の探知装置に発見されるリスクも高いです。原子力潜水艦としての欠点があるものの、それでもバージニア型は他の原子力潜水艦と比べると非常に高い隠密性を持っているとされています。

潜水能力「12」

潜航可能深度は300-500m前後で、潜水可能時間は無制限です。また、速度も30ノット以上あるとされており、大半が20ノット前後しか出ない通常動力型と比べると圧倒的な潜水能力があるといえるでしょう。とは言え最新型の通常動力型潜水艦は静粛性の高いAIPを使用して長時間の潜水が可能となっており、潜水能力の差は以前と比べるとかなり小さくなっています。

行動範囲「15」

原子力潜水艦の行動範囲は殆ど無制限と言って良いでしょう。強いて言えば乗組員の食料補給が必要であり、一般的な運用であれば半年に一回程度は食料などの物資補給が必要になります。

戦闘能力「12」

対空ミサイルこそないものの、魚雷・機雷・対艦・巡航ミサイルの運用が可能であり、無人潜水艇を使っての工作活動も可能です。巡航ミサイル用のVLSは12基もあり、幅広い作戦に従事する高い戦闘能力があると言えます。

拡張性(6)

船体寿命限界まで使用できる核燃料棒を搭載したことでメンテナンスの煩雑さが減り、部品をモジュール化した事で改修やアップグレードも容易になっています。新規建造も2030年頃まで続くと見られており、長期間使用出来る十分な拡張性を持っていると言って良いでしょう。

総評

原子力潜水艦ということだけあって圧倒的な性能です。しかし、実際の戦闘では静粛性の低さがどの程度影響するかが未知数です。通常型の1.5倍近い速度が出るので一撃離脱が出来そうに思われますが、速度を出せば音で見つかってしまうため、付近に敵がいる時に高速航行は行いません。水上艦の目は欺けても、同じ深海に潜むより静粛性の高い通常動力型潜水艦との戦闘になれば苦戦は必至でしょう。

トップクラスの潜水艦

そうりゅう型、212型、ラーダ型、バージニア型は潜水艦の中でも最高峰の潜水艦です。これらの潜水艦が戦闘を行った場合、どれが勝ってもおかしくありません。ただ、追尾魚雷を使用するような潜水艦同士の戦闘は今まで起こっておらず、今後もまず起こらないだろうと見られています。

そんな中で潜水艦に求められるのは、ある意味「見えないままでそこに居続けること」かも知れません。

敵から見えない隠密性、水中を縦横無尽に移動する潜水能力、広い海のどこにでも出没出来る行動範囲、いざという時に戦える戦闘能力。これらを有する潜水艦がどこかにいる。その恐怖を敵に与えることこそが、潜水艦の使命とも言えるでしょう。

 

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