機雷掃海の危険性と戦えない掃海艦艇、自衛隊の掃海任務が注目される理由

戦えない自衛隊と掃海部隊

そう言う側面から機雷掃海を見た場合、現代の機雷掃海という作戦そのものが比較的「安全」な海域で行われるという事であり、機雷掃海活動によって他国との戦闘行為が発生しない事がポイントになります。

相手がテロリストや海賊ならまだしも、自衛隊は他国の軍隊と簡単には戦えません。ところが、機雷掃海であれば敵と戦うことはまずないのです。これは、自衛隊の海外派遣を検討する上で最もやりやすい点と言えるでしょう。

ただし、一見すると戦闘行為には見えない機雷除去も、場合によっては戦闘行為に準ずる行為であると解釈されてしまうこともあります。例えば、敵国が自身の港湾や領海を守るために敷設した機雷を取り除く事は、いわば自国の領空を守るために設置したミサイル基地を攻撃する事とあまり変わらず、極端な話、海中に展開している「無人兵器」を破壊しているのと同じです。

そのため、機雷が設置されている場所や目的、情勢に応じて機雷掃海の可否は大きく変わってきます。自衛隊が掃海活動を行う場合、その複雑な情勢が確定し、戦闘状態に陥ることなく、安全に活動できる事が分かった場合のみ掃海活動が可能になるということです。

その行為そのものが、「集団的自衛権」か「個別的自衛権」かという判断はともかく、「掃海部隊が戦えない」からこそ「戦えない自衛隊」の活動として注目を浴びていると言えますね。

海上自衛隊と機雷掃海の展望

自衛隊は戦争が出来ない軍隊であり、掃海部隊も戦闘が出来ない部隊です。

そう言った点で見れば、機雷掃海と言うのは海上自衛隊の海外派遣の可能性の中では、唯一現実的と言える道筋かも知れません。

物資輸送の支援や海賊からの護衛任務で海外に出る事も出来ますが、諸外国が一番やって欲しいのは「危険な任務」です。米国や英国、中東の諸国が危険を犯して、自国のために様々な作戦を展開している隣で、裕福な国の軍隊が安全な場所で悠々と作戦行動を行っているのは腹立たしいことでしょう。

中でも機雷掃海は戦わない割には危険な任務であり、自衛隊も今までに数十人の殉職者を出しています。その大半が戦後十数年で殉職した方々で、近年に機雷掃海で殉職した自衛官はいません。しかし、機雷掃海に慣れていない諸外国の部隊が機雷掃海をやるとこうは行かないでしょう。

自衛隊としても諸外国の利益に貢献し、日本の力をアピールしたいところですが、憲法や法律の関係上活動できる範囲が限られています。その中で、諸外国が代わって欲しい任務が「機雷掃海」であり、戦えない自衛隊が戦わずに出来る数少ない国際貢献なのです。