レーダーから隠れる多彩な方法、電波から隠れるステルス技術は一つじゃない – ステルス(2)

ステルス技術と言えば、「対レーダー」というのはもはや当たり前になりつつあります。一昔前であれば、敵から姿を隠すための手法は光学的な欺瞞方法だけで、やることと言えば背景に合わせて機体に色を塗る程度です。しかし、レーダーが進歩してからは如何にレーダーに発見されないかがステルス技術の鍵になり、様々な技術が考えられてきました。

レーダーから隠れると簡単に言うものの、一体どのようなメカニズムでレーダーから姿を隠しているのでしょうか? レーダーから隠れるために使われる様々な技術についてご紹介していきます。

レーダーに対抗する手段

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レーダーに見つからないようにする手段というのは意外に沢山あります。主要な方法は以下の通り。

  1. 水や土に潜って電波の届かない場所に行く
  2. 森や建物などの障害物の中に入って隠れる
  3. 密集して数を誤魔化す
  4. レーダー波以外の電波を出して誤魔化す
  5. 電波を別方向に反射させる
  6. 電波を吸収して反射させない
  7. 電波を乱反射させるための鉄片をばら撒く
  8. 兵器の全てを非金属にする

他にも色々な手がありますが、今回解説するのはこの7つです。

レーダーというのは、電磁波が導電性の物に当たった際に流れる微弱な誘導電流によって電磁波が発生することで、電波が波のように反射するように飛ぶ仕組みを応用したものになります。

そのため、そもそも電磁波が届かない場所に行けば何の問題もありませんし、自分以外にも沢山の物体がある場所に行けばどの物体が自分であるか分からなくなるでしょう。また、反射の仕組みを上手くコントロールすることで電波による探知をくぐり抜けることも可能です。

ちなみに、昆虫も鳥も人間も少ないながらも電気を通すため、レーダーで探知することは可能です。また、木材やプラスチックは金属より反射波が綺麗に返ってこないというだけで、金属でなければレーダーに発見されないというわけではありません。

上述の手法の中には「ステルスのための技術」と言うには首を傾げるモノもありますが、レーダー対策という意味で一括りにしています。

水や土に潜って隠れる

トンチのように聞こえるかもしれませんが、要するに潜水艦や地下構造物のことです。

究極のステルス兵器とされる潜水艦に対してレーダーが全く意味を成さないのは、水に潜っているからです。電波は水によって著しく減衰するため、潜った潜水艦をレーダーで見つける事はできません

また、ミサイルサイロや軍事基地の対空兵器などは密かに地下に作られ、地上から発見する事はできません。有事の際に地表のハッチを開いて使うようにするため、制空権を取ってレーダーで地表を捜索しても地下に隠された兵器を発見することは出来ないのです。

これはレーダーに対して、最も単純で最も有効な方法だといえるでしょう。

ステルス技術というほどではないかもしれませんが、仮に地中を掘り進む戦車などが出てきたら地上最強のステルス兵器と呼ばれる様になりますね。

森や建物などの障害物の多い場所に紛れる

実はレーダー波に捉えられてはいるものの、どれが自分なのか分からなくさせる方法です。

木や葉はレーダー波をほとんど反射しませんが、わずかながらレーダー波を反射しています。そして、森の中に車両がいたとしても森の木々から反射されるレーダー波に紛れてしまい車両を発見することが出来ないのです。密林でもない限り、レーダー自体は車両に反射したレーダー波を捉えているはずですが、あまりにも怪しい反射波が多すぎて車両との区別がつきません。

建物の中にある車両でも同様です。分厚いコンクリートの建物なら中の車両に電波が届くことはありませんが、薄っぺらい木造倉庫に隠した戦闘機などは外壁を透過してレーダーで探知する事ができます。しかし、戦闘機に反射したレーダー波は建物に使われている様々な金属部品や建物そのものに反射したレーダーに紛れてしまうため、建物の中に隠された戦闘機を把握することは困難になります。

同様に、地上は空や海に比べると起伏が多く、レーダー波は山・木々・建物など様々な物体にあたって反射します。そのため、レーダーは遠くまで届きにくくなり、届いたとしても他の反射波に紛れて地上の走る車両や隠されたヘリコプターなどをレーダーで発見することは極めて難しくなるでしょう。。

密集して誤魔化す

トリッキーな方法ですが、一応紹介しておきます。

戦闘機や車両がピッタリとくっついていると、レーダーでそれがいくつあるのか区別することは出来ません。反射波がまとまって返ってくるからです。

戦闘機がV字編隊を組むのは、そちらの方が連携しやすいというのもあるのですが、レーダーから見ると数がわかりにくくなるという利点があります。

大型爆撃機や旅客機の大きさは小型の戦闘機数機分になります。そして、大型機の翼は多くの場合、遠くから見るとVの字に見えるのです。このため、V字に編隊を組んだ戦闘機部隊はレーダーで見ると1機の大型機に見えることがあります。また、密集した車列の場合も正確な数を把握するのは難しいです。

もちろん、レーダーの精度や距離によっては綺麗に数も分かるのですが、密集するというのもレーダーを誤魔化す一つの方法だといえるでしょう。

(次ページ:  レーダー波を巧みに操る5つの手法)