レーダー波の吸収・反射を極めたステルス航空機のしくみ-ステルス(3)

Pocket

レーダー波を元の場所へ返さない形状

040813-F-1740G-003
(F117_USAF

ここからが本格的なステルス技術の説明です。

上の写真は既に退役したF117ステルス攻撃機の写真ですが、見るからに角ばった独特な形状をしています。この機体は飛行機としての運動性能などを軽視して、ステルス性のみに特化した航空機です。ステルス性を考えた形状のお手本のような形と言えるでしょう。

機体下部は鏡のように平らになっているのは、地上からのレーダー波に対抗しています。鏡に自分を映すためには真正面から見ないといけないように、平らな機体をレーダーで発見するためには真下からレーダー波を当てなければいけません。

少しでも斜めになっていると反射したレーダー波が返ってきません。ステルス機がやっていることは、要するに光(レーダー波)を鏡で反射してライトの方角以外に返しているというだけなのです。

飛行機は翼が左右に伸びていますが、レーダー波は真横から照射しないかぎり必ず翼に当たります。機体の形状によっては、翼にあたったレーダー波が機体の胴体部分にぶつかるのですが、機体の胴体や尾翼が翼に対して垂直になっていると翼に反射したレーダー波が胴体や尾翼に反射してレーダーがある方向に返っていきます。

尾翼や機体の胴体が翼に対して直角にならないように斜めになっている、というのもステルス機の特徴だといえるでしょう。

エンジンの吸気口もF117では覆われていますね。吸気口の奥にはステルス対策されていないエンジンがありますし、レーダー波が入り込まないようになっているのと、入り込んでしまったレーダー波が出て行かない様になっています。

F117をレーダーで発見するためには、この角ばった機体の外装に対して垂直にレーダー波をぶつける必要があります。そうすると、真下からレーダー波を照射するか、斜め上からレーダー波をぶつけるほかありません。尾翼を狙って斜めしたからレーダー波を当てる方法もありますが、尾翼は正面下からは主翼に隠れて見えませんので、後ろから当てなければならないのです。

実際のところ、接近してくるF117を地上からのレーダーで発見するのはかなり難しいでしょう。しかし、これはあくまでレーダー波が真っ直ぐ反射すると仮定した場合のみです。

レーダー波の反射波は拡散するので近ければ真下からじゃなくても発見できますし、レーダーの周波数帯によってはレーダー波が一部機体外部を透過して内部の電子機器に反射することもあります。複数のレーダーで集中的に照射すれば発見できる確率は高まるでしょう。

また、攻撃時にハッチを開いたり、メンテナンスに不備があればステルス性は損なわれます。形状だけにこだわっても十分なステルス性は得られません。

なによりも、F117は飛行機としては欠陥品です。飛行中に機体の周りに出来る空気の流れはめちゃめちゃで、コンピューターの補助なしでは飛べません。ステルス性を最優先した結果、非常に飛びにくい航空機ができてしまったのです。

電波を吸収するための素材

1601062
(電波吸収体の理論_TDK)

電波を反射させてもある程度は拡散してしまいますし、反射角度ばかり考慮していても航空機として飛びやすい形状になりません。

そこで、機体の素材に電波を反射しにくい素材を使うことが考えられました。それが電波吸収体ですが、この電波吸収体を電波が反射したらまずい部分(鋭角部分など)に利用することで反射波のエネルギーそのものを減らしています。

電波吸収体にも幾つかの種類があるため一概には言えませんが、上図のように機体にぶつかった電波を機体表面で何度も反射させてエネルギーを熱にして奪い、弱くなった電波だけ反射していくようにしているのです。上図のような凸凹した形状の他にも、電波を少しだけ透過する層を複数用意して層の内側で電波を反射させるものもあります。

他にも、電波がぶつかった際に生じる電流のエネルギーを奪うことで反射を軽減させたり、電波がぶつかると電流ではなく磁性を帯びる物質を使うことで磁気として電波のエネルギーを奪う方法あります。

要するに、熱・電気・磁気とあの手この手でレーダー波が持っているエネルギーを奪うのです。

電波が拡散しなければ反射波をコントロールする形状だけに気をつけて入れば良いのですが、理想を言えば全ての電波を吸収してしまうのが一番でしょう。

 

(次ページ: F22-全てを兼ね備えた機体)