そうりゅうの役割と戦術、日本とオーストラリアは潜水艦をどう使うつもりなのか?

日本がそうりゅう型を必要とする理由

実は海峡や港湾の安全確保に関してはそうりゅう型でなくても可能です。待ち伏せ攻撃を行う場所が自国の拠点に近いため、小型の潜水艦でも十分同じ任務が出来るのです。また、待ち伏せなら多くの燃料を使うこともありませんし、広い作戦範囲は要りません。

日本が潜水艦にそうりゅう型を必要とする一番の理由は敵艦の追跡任務です。

日本は四方を海に囲まれているため、どこからでも敵の船舶が接近する事ができます。相手が真っ直ぐ日本に進んで来れば良いのですが、一度太平洋に出てから日本に近づいて来ることもあれば、対馬海峡から日本海に入り宗谷海峡を出て太平洋をぐるっと回って沖縄の隣を通るかもしれません。

特に、軍港や海峡に接近せずに遠巻きに監視するような動きをしている敵潜水艦を見つける事は難しく、そうなる前に先に見つけて追跡することが必要になります。それ以外にも、日本の領海から遠く離れた海域に展開する空母や艦隊を監視するにも作戦範囲の広さは重要になってくるでしょう。

東シナ海、日本海、西太平洋全体をカバーできる十分な航続距離が無いと日本の潜水艦として活躍する事はできないのです。地中海やバルト海、北海のような小さな海での運用が主になる欧州の潜水艦とは違います。

オーストラリアの潜水艦運用とそうりゅうの能力

オーストラリアもまた日本と同じく四方を海に囲まれている国ですが、日本と比べると若干事情が異なります。

というのも、海に囲まれていても船舶の通る航路が東南アジア方面と北アメリカ方面に集中しており、四方全てを守る必要がないのです。その代わり、珊瑚海や東南アジア周辺の海域はオーストラリアにとって重要な海域になってくるため、特に警戒が必要になるでしょう。

そう考えた時に厄介なのが東南アジアと南シナ海なのです。

東南アジア周辺の海域は入り組んでおり潜水艦にとっては難所でもありますが、船舶の往来が集中するため、敵を補足するには絶好のポイントです。また、南シナ海は開けているものの各国の海軍が活発に活動する地域で監視は必須。

ところが、どちらもオーストラリアからかなり遠いのです。

日本と違って進行ルートがある程度は絞れるため、航続距離の短い船で待ち伏せ戦術を行うのも良いですが、それなりの数が必要になります。それよりも、監視も兼ねて航続距離の長い潜水艦を入り組んだ東南アジア方面に配備しておく方が効果的でしょう。要するに、オーストラリアにとっての主戦場が本国から遠いため、航続距離の長い潜水艦が必要になるのです。

日本と豪州とそうりゅう

日本の潜水艦としては追跡能力が重要な一方で、オーストラリアの潜水艦としては遠くの戦場に展開できる能力が必要。そのどちらに関しても、そうりゅうは十分にこなしてくれる能力を持っています。

さらに、もう一つ無視できないのが米国製兵器の運用能力

オーストラリアの兵器の多くが米国製であり、コリンズ級潜水艦に使われている魚雷や対艦ミサイルも米国製です。となれば、それをそのまま流用できるような潜水艦が理想でしょう。そうりゅうは魚雷こそ日本製のものを使っていますが、米国製の魚雷や対艦ミサイルも十分運用可能なので要求を満たせます。

日本もオーストラリアも中国海軍を警戒していますが、実際にそうりゅうを運用するとなっても使い方は少々異なってくるでしょう。

オーストラリアとしては戦場はあくまで東南アジアや南シナ海であり、オーストラリア方面に近づけないことと、オーストラリアに関係のある船舶を守ることが主任務です。一方、日本にとっての主戦場は東シナ海であり、日本に近く油断なりません。実際に戦争になった場合には、中国の軍港付近に潜水艦を配備して積極的に敵の動向を探ることになるでしょう。

同じ潜水艦でも求められる任務は少々異なったものになります

日本には専守防衛があるため原子力潜水艦は使えません。また、オーストラリアも技術的、国柄的にも原子力潜水艦は使えないのです。そのため、ある意味万能である意味器用貧乏なそうりゅうが必要とされるのかもしれませんね。

 

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