ロケットが洋上で着艦するとコスト下がる理由、陸ではダメ? スペースXとファルコン9の偉業

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2016年4月8日、スペースXのファルコン9が洋上着陸(厳密には着艦?)に成功しました。世界初の偉業として話題になりましたが、実のところ地上に着陸する試みは既に別のロケットによって成し遂げられています。それを知っている人から見れば、洋上に浮かべた船に着艦させるより、地上に着陸させれば良いと思うはずです。また、打ち上げたロケットが戻ってくるというのは素晴らしいことですが、何故わざわざ面倒な手間をかけて海に戻って来させるのでしょうか?

打ち上げコストが下がると言いますが、スペースシャトルは高くつくから廃止になったはずです。さらに、洋上に着艦させて海路と陸路で運ぶより、メンテナンスのための施設付近に直接着陸させた方が輸送費の分安上がりのように思えます。にも関わらず、何故わざわざスペースXは洋上着艦を試みたのでしょうか? 本記事ではそんな疑問に答えていこうと思います。

スペースシャトルと打ち上げロケットは全くの別物

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(Falcon9の地上着陸_SpaceX Gallery

まず、戻ってくる場所が地上でも洋上でも、ロケットが戻ってきて再利用できればその分コストが安くなるというのは本当なのでしょうか?

例えば、「スペースシャトル」も地球に戻ってこられるという特徴を持っていましたが、メンテナンス費用が高額で使い捨てのロケットの方が安いということで廃止になりました。ロケットも同じなのではないでしょうか?

ところが、それは違うのです。スペースシャトルでコストが掛かったのはシャトルが「大気圏突入」のための機能を備えていたからです。宇宙に上がった物体が地球に戻ってこようとすると、物体が上から大気を押し潰すようにして落下するため、断熱圧縮という現象で押し潰された空気の温度が上がり、一部はプラズマ化するほど空気が高温になります。

原理としては、圧力鍋が高温高圧になるイメージが近いかもしれません。大気圏突入の熱の原因でよく言われるのが空気摩擦ですが、それが熱の主因ではないのです。

そして、その超高温に耐えるために、スペースシャトルには特殊な装備が備わっていたのですが、そのメンテナンス費だけで使い捨てロケットが変えるほどの莫大なコストがかかっていたのです。

ところが、ロケットというのは「ただの巨大な加速装置」です。さらに言えば、地球を周回出来る軌道や地球圏を離脱できるだけの速度を出すためだけに必要な装備と言っても過言ではありません。宇宙に上がってから軌道を調節したり、再加速するのは別の装置の役目です。少なくとも、着陸・着艦するロケットの仕事ではないため、ロケットが大気圏突入して戻ってくる必要はないのです

それなら複雑で高価な装備は必要なく、メンテナンスも簡単です。スペースシャトルの二の舞にはならないでしょう。

ロケットが洋上に着艦する必然性

メンテンナンスが大変ではないのなら、ある程度はコストを下げられそうな予感はします。では、どうして陸ではなく海に戻ってくる必要があるのでしょうか?

実のところ、戻ってくる場所が「洋上」でなくとも構いません。例えば、国土が横に広いロシアだったら国の西端から打ち上げて、東端に着陸させることが出来るでしょう。しかし、それ以外の国では難しいです。

ロケットの着陸というのは、言わば「超高速で離陸した飛行機を着陸させる」ようなものです。Uターンが出来れば良いのですが、Uターン出来るだけの燃料がなければ飛び立った先に着陸せざるを得ません。飛び立った先に海しかなければ海に着陸(着艦)する他ないのです。

もちろん、Uターンする燃料があれば問題ありませんし、ロシアのように飛び立った先にも国土が続いているようであれば苦労しないでしょう。しかし、アメリカも日本も超高速で飛び立ったロケットをそのまま着陸させられるような横に長い国土はありません。また、Uターンのために大量の燃料を積み込むにしても、余分な燃料を入れるために大きなロケットが必要になります。

本来ならば小さなロケットで打ち上げられたはずなのに、再利用するために大きなロケットと大量の燃料が必要になるというのでは本末転倒です。また、打ち上げる荷物が巨大で大きなロケットを使ったとしてもUターンのための余分な燃料がなければそもそも再利用が出来ません

そこで、Uターンを使わない方法を取らざるを得なくなります。つまり、必要最小限のロケットと燃料で再利用が出来るという点で、打ち上げた先でそのまま降下させるのが経済的ということになるのです。そして、打ち上げた先が洋上であれば、必然的に洋上に着艦せざるを得ません。

コストを下げるために洋上に着艦させるというのも、これで納得がいったのではないでしょうか?

ちなみに、人工衛星の打ち上げも、地球外探査機の打ち上げも、地球の重力を超える超加速度が必要です。国土を超えないように、Uターンの距離を短くするために、ロケットを遅く飛ばすという選択肢はありません。

洋上着艦のプロセス

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(洋上着艦の流れ_SpaceX

ロケットの洋上着艦のプロセスは至ってシンプルです。

予め、ロケットの加速度や進路を計算しておき、進行方向の降下地点に着艦専用の無人船を待機させます。

荷物を宇宙に打ち上げたロケットは宇宙空間で反転し、ロケットを前方に噴射して減速。減速することで地球に降下を始めますが、スペースシャトルのように高速で落下して断熱圧縮が起きても困るので、ここで更にロケットを噴射して一気に減速します。

大気圏に入ったら落下点調整を行うための小さな翼を広げ、無人船と通信を行いながら着艦地点を調整しながら降下。着陸直前になったらロケットを噴射して減速しながら降下を続け、着陸用の足を開きます。そして、最終的には無人船の台座に垂直着艦するのです。

以下に着艦時の360°動画があるので参照して下さい。

 

左上の矢印を操作することで、上下左右自由な角度で見ることができます。

ちょっとふらふらしていますが、見事な着艦でしょう。何度も失敗していますので、これがそう簡単なことではないのは明らかです。

日本のロケットを再利用するという場合にも、これと同じような洋上着艦が経済的な選択肢になるはずです。コストが高いせいであまり需要のない日本の打ち上げロケットですが、SpaceXのFalcon9のように再利用が可能になれば国際的な競争力も高まることでしょう。