情報リテラシーを高める4つのポイント(後編)-疑いつつ考える

前編では、ウェブサイトの運営目的から信頼できる情報を見分ける術をお伝えしました。しかし、それだけでは足りません。政府の情報が信頼出来ない事は普通にありますし、逆に個人のブログで信頼できる情報が見つかることもあるでしょう。

大切なことは自分で調べられる能力を身につける事です。後編では、「情報源のチェック」「裏付けの取り方」「論理的な整合性」について考えていきます。

その2:出典や情報源の正確性をチェックする

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それがどんな形態のサイトであっても、信頼度の高い出典や情報源によってきちんと情報の裏付けがなされている場合には信頼度が高くなります。

しかし、情報源が明示されるだけで情報が正確になるわけではありません。大切なのは「情報源が本当に信頼できるか」「情報源の情報が正しく使われているか」を確かめることです。

いくら情報源があったとしても、それが「個人ブログ」や「掲示板の書き込み」では信頼出来ません。また、信頼できる政府・研究機関や大手報道媒体が情報源だったとしても、参照の仕方が間違っていたり、恣意的に情報を抜き出していれば正確な情報にはならないでしょう。出典や情報源があった場合、軽く情報源の中身を見るぐらいはしておきたい所です。

とは言え正直なところ、「情報が正しく使われているか」の判断は非常に難しいです。情報源を精査しなければいけませんし、情報源が書かれていても明確に「どこ」とは書かれていない事が多く、よほど正確な情報が欲しいわけではない限り詳しくは見ないでしょう。それでも、情報源の趣旨や作成者ぐらいはチェックしてください。

趣旨が得た情報とずれていれば要チェック。また、情報源の作成者が「複数人のグループ」なら良いのですが、情報源が「個人」だった場合には注意が必要です。

特に、情報源が「専門家個人の著書」「専門家個人の論文・報告書」だった場合には、個人の思想・政治な偏向があったり、個人の主張の域を出ないケースが多々見られます。「大学教授の著書・論文」だからといって信頼できるとは限らないのです。

情報源があるから信頼できるなんて考えずに、常に疑ってかかるようにすると良いでしょう。著者や作成者の名前を軽く検索するだけで、ある程度有名であれば「その人の主張が受け入れられているかどうか」の把握はできます。多方面から批判を受けていないか、過激な思想や行動を行っていないかなど、調べられるのであれば調べてみると良いでしょう。

その3:別の角度から調べる、裏付けの取り方

出典や情報源がない場合、正確性を高めるためには得られた情報の裏付けを取る必要があります。しかし、これが簡単なようで難しいのです。

不確かな情報を見つけた場合、同じ情報や似たような情報を別の「信頼できる情報源」から入手することになります。不確かな情報とは言え情報がゼロの時よりは情報がありますので、その情報を使って調べれば今までは入手できなかったより信頼できる情報が手に入るようになるでしょう。

ここでちゃんと信頼できる情報が見つかれば良いのですが、政府・研究・報道媒体を参照しても十分に信頼できる情報が見つからない事も多々あります。その場合、その情報を「信頼出来ない」と断定するのも一つの手です。少なくとも、十分調べたにも関わらず信頼できる情報が見つからなかった時点で、その情報は「信頼度:高」の情報とは言えません。

しかし、それでも裏付けが全くない「信頼度:低」を多少の裏付け情報のある「信頼度:中」にすることは可能です。

この場合、全く別の角度から提供されている情報が無いか探しましょう。

例えば、営利目的のサイトでA氏という医師が「Mという薬が効果がある」と宣伝していたとしましょう。医者の言うことだからきっと本当だろうと信じたい所ですが、営利目的の情報ですので裏付けは必須です。しかし、その効果を確認したという情報が厚生労働省や医師団体から提供されていませんでした。この時点でこれは「ちょっと怪しい情報」です。

しかし、「Mという薬が効果がある」という情報が、別の病院に勤める医師B氏C氏によってもたらされていれば信頼度はぐっと高くなります。「信頼度:中以上」と言えるでしょう。これがもし、どこを見てもA氏という医師しかこの情報をサポートしていないとなると「かなり怪しい」です。また、情報をサポートするD氏やE氏が出てきたとしても、A氏と同じ病院や研究団体に属しているとなると、それは別の確度から提供されている情報とはいえません。裏付けとしては不十分です。

日本の公的団体からの情報がなかったとしても、海外の公的団体の情報を調べてみるというのも非常に有効です。特に、英語媒体で提供されている信頼度の高い情報は非常に多く、英語の文書を読むのが苦でなければ積極的に活用していきましょう。この場合、日本語の情報を正しく英語に変えて検索する必要があるので、適当に翻訳したのでは見つかりません。最適な単語選びが重要になります。

裏付けを取るときには、必ず「別の団体や組織、もしくは別の思想や目的を持った情報源」を使いましょう。情報源が偏っている場合、いくら情報を集めてもそれは情報の裏付けにはなりえません。

その4:論理的な整合性を考える

情報源が信頼できるかどうかも大切ですが、論理的な説明がなされているかどうか必ずチェックしましょう。根拠となる情報とその記事の中で提供される情報に論理的な繋がりが無くても、「文章の中で見かけ上繋げることは出来る」のです。

例えば、「Nという有効成分が健康増進に効果があることが証明されているため、Nが含まれているMという薬は健康増進に役立つ」という説明があったとしましょう。この場合、Nという有効成分の効果は信頼できる情報源によって確かめられています。

この説明だけ見れば、Mという薬に効果があるという説明は論理的な気がします。しかし、「Nという有効成分が十分に含まれているか」「Nという有効成分の効果を打ち消す成分がMに含まれていないか」「Nという有効成分が正しく効果の出る投与法になっているか」などは考える必要があるでしょう。打ち消す成分や効果のある投与法までは分からないかも知れませんが、有効成分が十分に含まれているかは確認できるはずです。

さらに、信頼できる情報であっても「特定の環境でしか当てはまらない」というケースは非常に多いです。

例えば、特定の疾患を患っている人にとっては良薬でも健常者には害になる薬は沢山ありますし、外国では正しい事が日本では間違いになることも珍しくありません。また、大規模に行われた心理的傾向の調査なども、文化圏や地域が違えば全く当てはまらないなんてこともあるでしょう。

信頼できる情報として「統計」が持ち出されることは多いですが、この扱いには注意が必要です。「渋谷の若者にアンケートを取った」とか、「大学の生徒にアンケートを取った」というアンケート結果を信頼できる統計として提示する事がありますが、これは明らかに偏ったデータになります。あくまで参考程度に留めるのが良いでしょう。大学教授が発表するレポートにも良く見られる形態なので注意が必要ですね。

実際の生活のなかで毎回毎回「情報の裏付け」なんてものは取れません。それでも、「相手の言っている事が論理的か」「自分のケースに当てはまるか」という事を良く考えれば、それが自分にとって信頼できる情報かどうかをある程度は絞り込めます。

情報を疑い自分で考える事」が正しい情報をみつけるための最善の手段です。また、時には自分自身の判断も疑い考えなおしてみましょう。自分自身の誤りを見つける事が出来るかもしれません。

最後にその情報を信頼するかどうかを決めるの自分自身

どんなに信頼できる情報があったとしても、最後にその情報を信頼するかどうかを決めるのはあなたです。

政府や研究機関の言うことなら何でも信じるということは、政府や研究機関の間違いに気づけないということを意味します。また、大手だからといって報道媒体の情報を絶対と信じるのも問題です。

さらに、たとえそれが何千万回と検証された物理法則であっても、100%と正しい情報とはなりません。もちろん、99.99%ぐらいにはなりますが、物理法則の観測も人間が作った機材を使って間接的に行われているだけです。数学のように「人間が定義した世界」ではありません

世の中に真実というものは存在しますが、人間の情報処理能力で100%の真実を手に入れることはできません。情報そのものを丸々信じこむのではなく、わずかに疑う心を残しておいてください。情報に触れた瞬間、皆さんの情報リテラシーが試されていると言えるでしょう。

さて、ここまで読んで下さったのであれば、本記事で提供された「正確な情報を入手する方法」が信頼できるかどうかを確かめる術は分かったのではないでしょうか?

残念ながら、この情報に出典や情報源を出すことはできません。なぜなら、これはこの記事を書いた私個人の経験・学習に基づいた至極個人的な意見に過ぎないからです。どうしても正確な情報が欲しい場合は、政府や研究機関のガイドラインや別の記者やライターの情報で裏付けを取る必要があるでしょう。

少なくとも私自身は、本記事で提供した情報は「自明もしくは十分に実証されている情報」を論理的に組み合わせだけの情報であり、「十分に信頼に値する」と考えています。まあ、でなければ掲載しませんよね。

しかし、それを判断できるのは読者である皆さんだけです。

本記事を読んだ皆さんが、少しでも信頼できる情報を見つけられるようになれば幸いです。