弾道ミサイル防衛を素人向けに解説(後編)-パトリオットとTHAADミサイル

Pocket

ミサイルを直撃させる理由

弾道弾迎撃ミサイルでは、「ミッドコース段階」スタンダード・ミサイルなどを含め、基本的には「ミサイルを直撃させて弾頭を破壊する」というスタイルを取っています。直撃というのは文字通り直撃・衝突で、爆発させません。

普通のことに聞こえますが、実はミサイルの大半が何らかの炸薬を搭載して爆発させるもの。その一方で迎撃ミサイルを爆発させることは極めて稀で、しいて言えば核ミサイルで核ミサイルを迎撃する時ぐらいでしょう。

爆発させた方が威力が高そうに思われますが、弾道ミサイルの弾頭は超高速で飛翔しているため爆風の影響が極めて限定的(爆風を一瞬で通り過ぎる)で、破片を利用しようにも威力不足になる可能性が高いです。

一方、迎撃ミサイルが弾道ミサイルに到達するときの速度は大気圏外なら秒速数キロ、大気圏内で利用するパトリオット・ミサイルでも秒速1キロを軽く超えます。それに加えて、弾頭自体も超高速で飛んでいるため、相対速度で言えば秒速十キロ近くに達するわけです。

これは戦車の砲弾など比較にならない程の速度であり、下手に爆発させてしまうよりもそのままぶつけて圧倒的な運動エネルギーを利用して破壊した方が確実でしょう。

ただ、爆発させるなら多少場所がずれていても問題ありませんが、直撃させるとなると極めて正確な誘導が必要になります。

理想を言えば、超強力な炸薬か大質量の破片を使って広範囲にダメージを与えたいところですが、迎撃ミサイルの重量が重くなればその分速度が落ちるため命中率が下がります。なかなかうまく行きませんね。

ちなみに、衝突時に爆発しているように見えるのは推進用の燃料が炎上しているだけで、ミサイルの炸薬が爆発しているわけではありません。

段階的な迎撃戦略

さて、少し脱線しましたが、ここまでの解説で弾道ミサイルがどこにあるかによって使える迎撃ミサイルが変わるというのは分かってもらえたのではないでしょうか。

おさらいすると、「ブースト(初期)」「ミッドコース(中間)」「ターミナル(終末)」と順番に弾道ミサイルの状態が移り変わっていく中、それぞれ適した兵器で対応していくということです。

国別で例を挙げると、

日本
・ミッドコース段階-「スタンダード・ミサイル3」
・ターミナル段階-「パトリオット・ミサイル」

米国
・ミッドコース段階-「スタンダード・ミサイル3+GBI」
・ターミナル段階-「パトリオット・ミサイル+THAADミサイル」

韓国
・ミッドコース段階-「なし」
・ターミナル段階-「パトリオット・ミサイル + THAADミサイル」

という形になります。

韓国はミッドコースは要らないのかという話になりますが、仮想敵国を北朝鮮とした場合は互いの距離が近いため、でミッドコース段階の時間はそれほど長くありません。スタンダード・ミサイル3の開発に日本が絡んでいて導入できないというのもあるのですが、THAADミサイルでも十分でしょう。

逆に、日本にもTHAADミサイルがあっても良いのでしょうが、THAADミサイルはパトリオット・ミサイルとスタンダード・ミサイルを足して半分にしたような性能です。敢えて3種類揃えることは無さそうです。

それなら、米国は全部の迎撃ミサイルが要るのかという話になります。実のところ、米国の場合は「本国の防衛」の他、「最前線の部隊」や「同盟国の基地」を守るために、あらゆる迎撃ミサイルが必要になのです。日本や韓国とは別の用途で迎撃ミサイルが必要になるため、日々莫大な予算をかけて新しい迎撃兵器を研究しています。

ちなみに、米国には「ブースト段階」で迎撃するためのレーザー兵器なども研究されています。敵国の領内に展開している必要があるため使い所が難しいものの、さすがは米国といったところでしょう。

前編・後編を通して様々な弾道ミサイル防衛の兵器を紹介しました。しかし、この弾道ミサイル防衛の戦略で全ての弾道ミサイルを完璧に防げるというわけではありません。

実はミサイル防衛には批判も多く、予算に見合わないとされることもあります。詳しく話すと長くなりますが、それについては別の記事で扱わせて頂きます。もう少し詳しく知りたいという方は、そちらもチェックしてみてください。

「弾道ミサイル防衛7つの疑問」へ続く