北朝鮮の弾道ミサイル概要(後編)-自衛隊の対策と戦略

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「ノドン」-事前察知で万全の態勢を整える

「ノドン」は日本の主要都市を射程に収める準中距離弾道ミサイルです。「ノドン」には「テポドン」や「ムスダン」のような長射程はなく、日本攻撃時の軌道そのものは殆ど決まっており、ある意味では迎撃ミサイルで最も迎撃しやすいミサイルとも言えます。

しかし、厄介なのは精度・信頼性・数の部分です。正確に狙いを付ける事が出来るので首都圏をピンポイントで狙える上、比較的高い発射成功率を誇り、数についても大量生産を進めている最中と推測されています。車輌などに搭載して大量配備し、一斉に撃つといったような飽和攻撃に対抗するにはこちらも十分な数を展開していなければなりません。

日本のイージス艦だけではなく、米軍とも協力した上で事前に万全の態勢を整えた上で迎撃する必要があります。また、パトリオット部隊も十分に展開しておけば、こうした飽和攻撃に対する対処能力も飛躍的に高まるでしょう。

日本が弾道ミサイルで攻撃されるとすれば、この「ノドン」が使われると考えるの一番現実的なシナリオです。実際に飽和攻撃を行える程の態勢が整っているかは未知数ですが、警戒するに越したことはありません。

「スカッド」-パトリオット部隊で水際防衛

「スカッド」は日本の一部を射程に収める短距離弾道ミサイルです。他の弾道ミサイルに比べると射程がかなり短いのでそれほど大きな脅威ではありませんが、北朝鮮が独自に改良したモデルは一部の主要都市を狙える状態にあります。「スカッド」は「ノドン」以上に数を揃えやすく信頼性が高いため、飽和攻撃に対する準備をしっかりと整えていなければなりません。

イージス艦の配備も重要ですが、攻撃してくる場所が限られていますのでパトリオット部隊をしっかりと配備しておく事が大切です。パトリオット部隊は複数目標への対処能力も高く、大量に飛来した弾道ミサイルを次々に撃墜していくことが可能となっています。

スカッドの射程範囲内の主要都市に配備しておけば、イージス艦と合わせて全て撃墜することも夢ではないでしょう。

「KN-11」-潜水艦は撃たれる前に追跡・発見

「KN-11」というのは潜水艦から発射される弾道ミサイルです。発射地点が全く分からず、どこにレーダーを向ければ良いのか分かりません。至近距離で撃たれる可能性もあり、他の弾道ミサイルに比べて発見が遅れがちで、迎撃そのものが間に合わない可能性が非常に高いです。このため、発射されたミサイルを迎撃するというよりも、発射する可能性のある潜水艦の動きを封じる事が大切になるでしょう。

北朝鮮で運用する潜水艦の性能は日本のそうりゅう型に比べて大きく劣っており、いずも型などの対潜ヘリ空母を擁する日本の対潜警戒網を潜り抜けるのは容易ではありません。警戒網を張り巡らせ、潜水艦の大胆な動きを封じた状態であればある程度の位置把握はできるはずです。

そうは言ってもレーダーに映らない潜水艦を発見するのは非常に難しいのですが、北朝鮮が保有する潜水艦の中で、こうした弾道ミサイルを扱える潜水艦の数はそれほど多くないはずです。また、北朝鮮に原子力潜水艦を開発・運用する能力はありません。現在使っているものは小型の通常動力型潜水艦を無理やり弾道ミサイルが発射できるように改装したような潜水艦と目されており、そうりゅう型による追跡も容易です。

あまり受け身になっていると予期せぬ位置から弾道ミサイルが飛んでくることも考えられるので、積極的に相手の潜水艦を探しに行くという作戦も考えた方が良いかもしれません。

一番難しいのは決断すること

通常のミサイル防衛のプロセスでは、「ミサイル発見」→「防衛大臣から首相に連絡」→「首相が迎撃指示」→「自衛隊が迎撃」という流れになっています。このプロセスでは長過ぎます。

そのため、自衛隊が独自の判断で行動できるケースを想定した「緊急対処要領」が首相の許可を得た上で期限付きで定めることができるようになっています。これは北朝鮮などがミサイル発射の準備をしている兆候を掴んだときなどに定められ、「ミサイルが日本に飛んで来ると判明した時」「ミサイルの部品が日本に落ちてきた時」などのケースで現場の判断で対応できるとされています。

期間限定なので「事前に兆候を掴む」ことが必須ではありますが、日朝関係が緊迫すれば長期に渡って定められる可能性もあるでしょう。その時、現場は本当に決断できるのでしょうか? もしくは首相の判断は間に合うのでしょうか?

北朝鮮と日本の距離は極めて近く、弾道ミサイルは10分前後で到達します。迷っている時間は1分とありません。本当に難しいのは迎撃ミサイルを発射して弾道ミサイルを撃ち落とすことではなく、迎撃すると決断することなのかもしれません。