ストップモーション作品「Kubo」、映画に息づく伝統工芸-職人の描く日本の姿が世界を魅了する

日本を舞台にした新しい映画が今、世界中で注目を集めています。そのタイトルは『Kubo and the Two Strings』。
三味線を手に不思議な術を使う少年クボと彼を狙う悪霊の物語は、一見するとただのCG映画に見えますが、実はこの映画、職人芸といっていいほどの技巧を凝らし、手間ひまかけて制作されたストップモーションアニメなのです。映画の魅力を語るとともに、ストップモーションという技法について見ていきましょう。

お盆から始まるストーリー

映画のストーリーの主軸は、少年クボと両親の物語。
中世日本の小さな村で母と二人で暮らす少年クボは、三味線の弾き語りで折り紙を動かすという不思議な見世物をすることで知られていました。

ある年のお盆にクボは死んだ父の墓を訪れ、死者の霊が帰ってくるという言い伝えを信じて亡き父が語りかけてくれるのを待っていました。しかし父の声は聞こえてきません。
常日頃から母に「日が落ちたら外には出るな」と聞かされていたクボでしたが、この日ばかりは帰り道の途中で日が落ちてしまいます。家路につくクボの前に、彼の名を呼ぶ不気味な影が迫る――という導入から映画のストーリーは始まります。

ここから彼の母の秘密、父の消息、そして彼を狙う悪霊の謎が絡み合う物語が展開していくのです。王道でながら一本調子ではなく、様々な伏線も織り交ぜられたストーリーは、すでに世界中で絶賛されています。

ヒットメーカー、ライカの最新作

この映画はストーリーのみならず、ストップモーションアニメ制作で有名なライカの最新作という点でも注目されています。

ライカは2005年に設立されたアニメーション制作会社で、設立後まもなく『ティム・バートンのコープスブライド』の制作に携わったことで名を知られるようになりました。
2007年に制作された自社制作長編アニメ映画『コララインとボタンの魔女3D』がゴールデングローブ賞を受賞、2012年の『パラノーマン ブライス・ホローの謎』はアカデミー賞を勝ち取るなど、今やヒットメーカーと言っても過言ではありません。

ライカ社の映画は全てストップモーションという技法で制作されています。これは粘土などで作られた人形のポーズを微妙に変えながら一コマ一コマ撮影することでアニメーションを表現するというもので、細部まで凝った映像を作ろうと思えば膨大な手間と時間がかかるものです。『Kubo』のメイキング映像を見ると背景も全てジオラマで作り、かつ細部まで抜かりなく作り込むなど、気の遠くなるような作業の末に生まれた力作ということがよくわかります。

受け継がれるストップモーションの伝統芸

ストップモーションの技法は古く、映画というものが生まれて間もない19世紀末にまで遡ります。
キネトスコープと呼ばれる、箱を覗き込む方式の映写機が発明されたのが1893年のこと。
その後1895年にはフランスのリュミエール兄弟が、今のようなスクリーンに映し出す方式の映写機を発明。兄弟は同年に世界初の実写映画と呼ばれる『工場の出口』などの作品を観客の前で上映し、今につながる映画の時代が幕を開けました。

そこから数年も経たない1898年に制作された『Humpty Dumpty Circus』という映画が、最初のストップモーションアニメだと言われています。ところがこれはフィルムが残っておらず、現在は視聴不可能。残念ですね。

今でもフィルムが残っている最古のものは『Fun in a Bakery Shop』という短編作品。

壁に取り付けたオブジェを高速で作り替えるシークエンスにストップモーションが使われています。

1910年代に入るとストップモーションの技法はさらに研究が進められ、最初のクレイアニメーションが公開されるなど存在感を強めていきます。

そんな中、実写映画の特殊効果としてストップモーションを活用するという試みも生まれました。
その鏑矢となったのはウィリス・オブライエンが手掛けた『ロスト・ワールド』(1925年)、そして『キング・コング』(1933年)です。巨大なモンスターが暴れ回る迫力のシーンをストップモーションで表現した彼の作品は大反響を呼びました。

こうしてストップモーションの技法は特撮映画に欠かせない存在となり、彼とその弟子レイ・ハリーハウゼンはストップモーションを含めた映画の特殊効果の第一人者としてハリウッドの特撮映画を牽引していきました。彼らの時代、ひいてはストップモーションの時代は、1990年代にCGが台頭するまで長く続いたのです。

ディズニーもストップモーションの技法に目をつけた映画会社の一つでした。時は1978年、ミッキーマウス生誕50周年記念番組制作の一環として、フリーのアニメーターであるマイク・ジトロフを起用して『Mouse Mania』を制作。これはディズニー初のストップモーション作品となりました。

それから15年経った1993年、ディズニー制作のストップモーションアニメ映画『ナイトメア・ビフォア・クリスマス』が大成功を収めます。
これを手掛けたティム・バートン監督はその後、同じくストップモーションを活用した『コープスブライド』を制作。こちらもアカデミー賞にノミネートされるなど好評を博します。
その制作に携わったライカが、現在ではストップモーション映画制作のヒットメーカーとして名を馳せる――という風に見ていくと、脈々と技術を受け継いでいく職人の世界を見ているようですね。

1993年の『ナイトメア・ビフォア・クリスマス』では主人公ジャックの表情をつけるため、実に400個もの頭部が用意されたといいます。そこから23年を経た『Kubo and the Two Strings』では、なんと主人公クボの表情だけで5000パターン、衣裳もさまざまな場合を想定して200通り用意されたんだとか。
CG以前の技法でありながら現在でも廃れることなく、かえって緻密さを増しているストップモーションの技法は、まさに映画の伝統工芸と呼んでもよいのかもしれません。

余談ながら『Kubo』の世界観は日本文化を忠実に取り入れており、よく練られた描写も人気の一つになっています。
日本公開は未定ですが、ファンが『Kubo』の世界観を日本文化に則して分析した以下の動画で予習してみるのもいいかもしれません(日本語字幕付き)。