ダムと水力発電に隠された意外な工夫の数々、魚達のために作られた魚道-発電技術(1)

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ダムの存在から魚を守るための工夫

ダムというのは水の流れを止めてしまうもの。完全に止めるわけではないので人間が困る事は殆どありませんが、魚は大いに困ります

河川を遡上するにしろ、下降するにせよ、高速で回転する水車(タービン)を通れば確実に死にます。また、水車を通らない流路があったとしても、高低差が大きすぎれば遡上が難しくなったり、下降時に弱ってしまう可能性が考えられるでしょう。

ダムの存在で生態系が大きく変われば、魚はもちろん魚を食べている鳥類にも大きな影響が及びます。最終的には人間の周りにも影響が及ぶでしょう。ダムを作って川の流れをせき止めたとしても、自由に魚が行き来できるような方法を考えなければなりません。

そこで考案されたのが魚道です。

1610095(魚道_国土交通省

写真の奥にダムが見えますね。手前に映っているのが魚道になります。その名の通り、魚のために作られた緩やかな迂回路です。

変わった形状をしているのが分かるでしょう。階段のような形状をした水路の中央に小さな構造物があり、その左右に水の流れが見て取れます。実はこの中央の部分、人が歩くための階段などではなく、水の流れが滞留しているプール状の「休憩所」です。

左右を流れる水路は勢い良く下に落ちているので、遡上中に途中で力尽きればそのまま下に流されていきます。しかし、流れが止まっているエリアがあればそこでゆっくり休むことができるというわけです。滝登りを敢行する魚の中には途中で力尽きるものも多いですが、こういった魚道なら高齢の魚でも気軽に登れます。人間の心尽くしが感じられる魚道です。

こうした魚道はダムの上流と下流を結んでおり、魚達はダムの中を通らずに上流と下流を行き来することができるようになっています。ですが、魚道といういわば魚の「正規ルート」があるにも関わらず、ダムの内部に突入(迷走)してしまう魚も少なくありません

排水口から入ってくる分には排水の勢いで追い出せるのですが、問題になるのは上流にある取水口です。取水口から入った魚は水圧管の中を高速で移動することになり、そのままの勢いで水車に衝突します。まず生きて帰れません。

取水口にはゴミ止めのスクリーンがついており、大きな魚は通れない一方で、まだ若い小さな魚はこれを通り抜けてしまいます。

これを何とかする必要があるのですが、取水口のスクリーンの目を細かくすると詰まりやすくなって除塵機によるゴミの除去がかなりの手間になりますし、魚が下降する時期だけ発電を止めると稼働効率が悪くなります。

この魚の迷走問題は非常に厄介な問題で、今までにも様々な対策が取られています。

取水口付近バイパスを用意し、取水口に入る前に別のルートに誘導するもの。取水口に目の細かなスクリーンを採用し、こまめに除塵機でゴミを除去するもの。水圧管の手前に目の細かなスクリーンを用意し、別ルートに移動させるもの。

などなど、多くの場合は複数の対策を講じて迷走を防いでいます。残念ながら完璧な方法とは言い切れず、一定数の若い魚が下降時に死亡しているようです。それでも未対策の状態に比べれば遥かにマシで、生態系を維持するには十分な成果が出ているといえるでしょう。

余談ですが、下図のような「ダム穴」は発電用の取水口とは別物です。

161018021

ここから取り込んだ水は基本的にはそのままダムの外に放水され、メインの発電には使われません。単純にダムの水位が限界を超えないようにするためのものです。当然、魚を止めるスクリーンなどはついていませんので、不運にも水面付近を泳いでいた魚は巻き込まれて落っこちることになるでしょう。

水位が限界近くまで上がった時なので常に存在する穴ではありませんが、見た目は恐ろしいですね。水面に水を取り込む穴が見えたら、それは水位を調節するための放水用の穴だと思って間違いありません。

 

さて、ダムの工夫についてはここで終わりです。今回ご紹介した水力発電(ダム式)の工夫は、実際に使われている工夫のほんの一部に過ぎません。長年使われている水力発電には他にも様々な技術が使われており、日々知らずに我々や魚達はその恩恵を受けています。

気になった方は、もう少し調べてみると意外な発見があるかもしれませんね。