潜水艦発射型弾道ミサイル(SLBM)とは?その対策と北朝鮮の技術力

北朝鮮のSLBM運用

このような歴史的背景をみると、北朝鮮のSLBM使用方法は2種類考えられます

他国の先制攻撃の抑止
核による先制奇襲攻撃

前者は核抑止の発想と同じです。現状で北朝鮮の保有するSLBMとミサイル潜水艦の戦力は日本全土を壊滅させるほどでないにせよ、核兵器で反撃される可能性があるとなれば先制攻撃はためらわれるでしょう。

後者はいわゆる「北朝鮮の暴発」シナリオの延長です。SLBMの運用が本格化すれば、北朝鮮本土からのミサイル攻撃とは違い、不測の位置から核攻撃を受ける可能性も出てきます。とはいえこれまでの北朝鮮の経緯を見る限り、暴発するという予想がその通りになるかどうかはわかりません。

北朝鮮のミサイル潜水艦

現在北朝鮮でミサイル発射能力があると考えられている潜水艦は、新浦級と呼ばれる北朝鮮製の潜水艦です。これは旧ソ連のキロ型あるいはゴルフ型潜水艦を元に設計されたと言われています。

(新浦級潜水艦予想図:アジア太平洋国際カンファレンス発表資料より)

2016年7月9日のミサイル発射実験でも使用したとされる新浦級潜水艦は公に出ている確定情報が少なく、限られた画像から性能を推測するしかない状態です。おおよその推定では、排水量は1500~2000トン程度、全長は65.5m、喫水は6.6m。動力はディーゼル・エレクトリック方式、いわゆる通常動力の潜水艦で、SLBM発射管を1基ないし2基有していると考えられています。

現状で就役しているものは1隻だけですが、今後北朝鮮が核の脅威を強調するべく複数隻を生産している可能性、あるいはさらに高性能なミサイル潜水艦を開発している可能性も考えられるでしょう。

北朝鮮のSLBMへの対処

北朝鮮へのSLBMにはどう対処するべきなのでしょう?

確実と思われるのは、ミサイルを発射される前に潜水艦の動きを封じることです。

新浦級潜水艦は比較的小型の艦で、母港を離れて長期間の活動はできず、さらに原子力潜水艦ではないため常時海中で活動することはできません。これは反撃用ミサイルを運用する「隠れたミサイル基地」としての性能が大きく損なわれていることを意味します。また、日米の対潜網にかからず活動できるかどうかは疑問の余地があります。

北朝鮮発表では新浦級潜水艦のベースは旧ソ連のゴルフ型潜水艦だとされていますが、旧ソ連でゴルフ型が就役したのは1958年とかなりの旧式艦です。大元のソ連でも1990年には退役しているので、それをベースにした新浦級も技術的には新鋭の潜水艦には一歩譲ると考えられます。

P3C部隊やP1部隊を擁する自衛隊の対潜戦闘能力は非常に高く、また冷戦期には旧ソ連の潜水艦を仮想的として訓練してきた技術が受け継がれています。旧ソ連の技術をベースにした新浦級潜水艦は、むしろ御しやすい相手なのではないでしょうか?

北朝鮮のSLBMに対処するためには、ミサイル防衛以上に、自衛隊の対潜戦闘能力にかかっていると言えるでしょう。