核シェルターの使い方、放射線の他に音も振動も完璧に防ぐ地下室!

北朝鮮の弾道ミサイル開発の影響で、一般向け核シェルターの需要が急増しているそうです。確かに、政府は作ってくれないし、頑丈な建物や地下に逃げろと言われても近くに無い。それなら「マイ核シェルター」を作ってしまえば良いじゃない!

となるのも、頷けます。しかし、マイ核シェルターを作るにはそれなりのコストと空間が必要なのでお金に余裕がある人しか作れませんし、何よりも「なんか大げさ」「意味あるの?」なんて声も聞こえてきます。そこで、現代の一般向け核シェルターの存在意義と意外な使い道について調査しました。

核シェルターの使い方

(放射能シェルターの埋設_WNI)

地下に埋設されるタイプの核シェルターの場合、核攻撃を受けたら専用の出入り口からシェルター内部に入ります。この出入り口は施行方法によって場所が変わりますが、庭などの屋外に設置されるケースもあれば、自宅内の一角に設置されるケースもあるようです。

どちらのケースでもシェルターの大部分は地下に埋まっているので、出入り口が占めるスペースは小さく、犬小屋程度の専有面積しかありません。つまり、核シェルターを設置した後は小さな出入り口が地上に現れるだけで、邪魔にならないということです。


(左が施工直後、右が施行から1年後_織部精機

上図は施行の一例です。上図のコンクリート製の突起物は脱出口です。通常、核シェルターにはメインの出入り口の他に緊急脱出口が存在し、メインの出入り口にトラブルがあった場合には非常用の脱出口が使えるようになっています。

このケースでは、メインの出入り口は屋内に設置されました。有事の際には家の中から核シェルターに移動できます。また、自宅が無事なら自宅内から食料を運び出すこともできるでしょう。

食料の運び出しができなくとも、シェルターの内部に水と保存食を蓄えておけば問題ありません。有事の際にはシェルターの中に入り、安全が確保されるまで待機するだけです。

シェルター内での生活は、基本的には1-2週間程度の期間が想定されています。というのも、核兵器によってもたらされる死の灰(放射性降下物)の放射能がその間に弱まるからです。無害とは行きませんが、核兵器の爆発後すぐに出歩くよりはよっぽど安全でしょう。

また、上図のような埋設型でなくとも、放射性物質が屋内に入り込まないようにする屋内設置型の装置も存在します。これは屋内に取り付け、放射性物質を除去し、綺麗な空気を取り込みつつ屋内の気圧を高めるための装置で、屋内を綺麗な状態に保ちます。


(屋内設置型_SP

埋設型のシェルターと違って、稼働させるための手順が少し面倒ですが、自宅に設置するだけで使えるので便利です。家屋が爆風に耐えられないので、爆心地付近では無意味ですが、死の灰の影響を最小限に抑えられます。何もしないよりはよっぽど良いでしょう。

逃げる余裕はあるの?

さて、核シェルターの説明はこれくらいにして、次はその意義について説明しましょう。なぜなら、そもそも「核シェルターに隠れる時間がない」「核兵器を使われたら日本は終わり」「生き残っても放射能障害を受ける」などの批判があり、使う意味がないという考え方もあるからです。

「隠れる時間がない」というのは事実です。Jアラートが鳴ったとしても、隠れるまでの時間は数分足らずでしょう。自宅にいればシェルターに隠れる時間はありますが、外出先にいたら終わりです。

とは言え、運良く自宅にいて、埋設型シェルターの中に入れれば、地中のシェルターは核兵器の爆風にも耐えられますので、Jアラートが鳴ったらすぐにシェルター内に移動することで、核兵器の爆風・熱線(熱を生む光線、赤外線)の圏内であっても生存できます

ただ、核兵器で本当に問題になるのはその爆風や熱線の破壊力よりも、放射能汚染を引き起こす死の灰(放射性降下物)です。シェルターにはこうした死の灰を除去して綺麗な空気を取り込む装置が搭載されており、死の灰の放射能が弱まるまで退避するのに十分な効果があります。

核兵器の爆発後、死の灰(放射性降下物)が降ってくるまでには数時間以上の時間があります。仕事先や学校から慌てて自宅に戻ってシェルターに入ったとしても、シェルターの機能は十分に果たされるでしょう。

ちなみに、死の灰対策であれば、埋設型でなくとも屋内設置型でも十分な効果を期待できますが、死の灰が降った直後の放射線量はかなり高く、一般的な住宅の外壁では十分に放射線を遮蔽できません。屋内に放射性物質が入ってこないとは言え、多かれ少なかれ被爆することは覚悟する必要があります。

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