自閉症にまつわる誤解を解く。先天性の発達障害、父親の高齢化と遺伝子異常

ダウン症のような先天性疾患に関しては、出生前診断により早期発見が可能ですが、自閉症に関わっている遺伝子は完全には解明されておらず研究段階であるため、早期発見も今のところは出来ません。

ただ、X染色体における機能不全が原因であることが分かっていて、XX染色体を持つ女性はX染色体の一つの機能に異常が出ても異常が起こらない一方、XY染色体の男性はX染色体の異常がそのまま染色体異常となり、男性が自閉症を発生しやすい原因だと言われています。現在、男性と女性の自閉症比率は4:1であり、男女で発症に偏りが出る原因となっています。

症状の見分けにくさ

原因は遺伝子にあっても、脳に障害が出るのが自閉症。今までの誤解や名称からの誤解を避けるため、自閉症であっても、より広義の「広汎性発達障害」と呼ばれる様になっています。

広汎性発達障害とは、コミュニケーション能力や社会性獲得における障害をひとまとめにしたもので、自閉症・アスペルガー症候群・各種知的障害・その他(具体的に分類出来ないが症状的に含まれるもの)がそう呼ばれています。

これは、自閉症と各種発達障害の区別が非常に難しいためで、自閉症と一口に言っても非常に種類が多いです。
代表的なものは以下の3つ。

    1. 小児自閉症
    2. カナー症候群
    3. 高機能自閉症

小児自閉症は幼児期に顕著に見られる言語障害や奇行などの症状で分類され、カナー症候群は昔から言われる自閉症で対人関係構築や言語障害などが顕著に現れます。そして、高機能自閉症は、言語障害やコミュニケーション不全などが見られるものの高い知能を有していて、一種の個性などのように見られることがあります。

ただし、全ての症状に共通しているのは、

①社会性の障害
  目を合わせない。協調性が低い。他人に対する無関心。人間関係の構築が出来ない。

②コミュニケーションの障害
  言葉が上手く話せない。会話が長続きしない。長い文章で話せない。

③物事に対する異常なまでの執着
  単純作業に熱中する。反復動作する物体(扇風機など)を見続ける。慣習的動作に固執する。

であり、程度の差はあれど、必ずこの3種類全ての症状の特徴があります。

非常に漠然としているため判別が難しく、統合失調症やアスペルガー症候群などと同一に扱われしまうことが多いです。しかし、原因と対処法(自閉症の治療は不可)が異なり、統合失調症と間違えられて副作用の強い向精神薬などを投与される可能性もあるため、これは大きな誤診と言えます。

自閉症との付き合い方

先天性の遺伝子疾患である以上、治療は出来ません。

親や周囲の人間の理解と助けを得ながら、言語やコミュニケーションの訓練などで少しずつ健常者とのギャップを小さくしていく他はなく、それも容易な事はないでしょう。

とはいえ、介護がなければ生きていけない疾患ではなく、統計的に見て犯罪者が多い疾患でもありません。何も知らない人から軽度の自閉症患者を見た際には、「健常者よりコミュニケーションが苦手でどこか変わっているだけ」と、言うこともできます。

そして、何よりも自閉症について理解されなければいけないのは、それが「先天的なもの」であり、「親や本人に責任はない」と言う事。ここを周囲が誤解してしまい、親の教育や子供の努力が足りないなどと考え、差別してしまうことが一番の問題となります。

敢えて言うほどのことではありませんが、身体の不自由な人に助けが必要な様に、見た目だけでは分からない不自由を背負っている人はたくさんいます。そう言った人々を理解し、手助けしていけるような世の中を作っていけたら良いですね。