潜水艦乗りの過酷な戦い(4):魚雷だけじゃない!対艦・対地・対空装備、海で最強の潜水艦

実は、対潜ヘリコプターの登場で、潜水艦にとっての脅威は飛躍的に増大しています。ヘリコプターが対潜哨戒の主力になるまでは、航空機はソノブイ(遠隔操作の集音機器)をばら撒いて偵察するだけでした。ソノブイは小型で、集音能力には限りがあります。なにより、自由に移動したり深度を変えたりできません。そのため、潜水艦はソノブイを見つけた(聞こえた)ら、静かに離れるだけで良かったのです。

しかし、対潜ヘリは違います。ソノブイより高性能のディッピングソナー(吊り下げ式集音機)をヘリコプターから海中に投下し、深度や位置を変えながら集音活動を行えます。特に恐ろしいのが、一旦潜水艦らしき音を聞きつけたら、ジワジワ潜水艦に近づいてずっと哨戒し続けられることです。ディッピングソナーは最新型では深度500mくらいまでソナーを下ろせるため、より深く潜るか着底しない限り逃げ切ることが難しいです。

当然、ヘリには魚雷や爆雷も搭載され、潜水艦だと判明したらその場で攻撃を仕掛けて来ますし、近くの艦船に攻撃を要請することもあります。そして、一度見つかったら潜水艦は逃げる事以外出来ません。これが、艦船なら魚雷で反撃も出来ますし、ホバリングの出来ない航空機なら隙を見て逃げることも出来るでしょう。しかし、相手がヘリコプターでは、潜水艦はヘリの燃料や弾薬が切れるまで逃げまわるか、じっと音を出さないように身を潜めるしか無いでしょう。

そこで、近年では潜水艦搭載型の対空ミサイルの開発も行われ、様々な方式が検討されています。まだまだ一般的な装備ではありませんが、対潜ヘリに対する護身用として配備が広がる日も近いです。

海では最強との呼び声も高い

対空戦闘能力は殆どありませんが、艦船に対する戦闘力は水上艦最強のイージス艦以上です。

力関係的には、「イージス艦>航空機>潜水艦>イージス艦」のように、実はジャンケンのような力関係になっています。海上艦船の対潜哨戒能力は低く、潜水艦が先に海上艦船を発見し、潜水艦に攻撃されて初めて潜水艦の存在に気付くことが殆どです。

そのため、海上艦船は必ずと言って良いほど対潜ヘリコプターを搭載し、対潜ヘリが艦隊から遠く離れた場所で対潜哨戒を行います。つまり、海上艦船は自身の対潜哨戒能力の低さを対潜哨戒機で補うことで、潜水艦との戦闘を可能にしています。

さらに、純粋な攻撃力で見ても、巡航ミサイルを含め、最大射程を持つ対艦ミサイルを双方が保有しているため、攻撃範囲に於いては海上艦船と潜水艦は同等といえます。海で最大火力を持つ魚雷に関しても、艦船にもよりますが双方「空飛ぶ魚雷」を搭載可能です。空飛ぶ魚雷というのは、一旦空を飛行した後に着水してから魚雷になるというもので、長射程の魚雷と考える事ができます。

攻撃力は同等、しかし索敵能力と隠密行動能力に大きな差があり、無音航行中の潜水艦の隠密行動能力を鑑みれば、潜水艦が海では最強と考えることが出来ます。対抗できるのは対潜哨戒機ぐらいです。

近年、就航予定の日本最大の護衛艦「いずも」も、ヘリ母艦に分類されてり、多数の対潜哨戒ヘリを搭載する予定です。空母と見紛わんばかりの巨大護衛艦「いずも」がなんと潜水艦と戦うための護衛艦だというから驚きです。

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(護衛艦いずも_Wikipedia)

大型ヘリ空母「いずも」の存在然り、最新鋭潜水艦「そうりゅう」の存在然り、高性能レーダーと人工衛星が当たり前になった世界において姿の見えない潜水艦が如何に脅威かというのがよく分かりますね。

番外編へ続く

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