距離を超えて医療の質を高める医療ロボットとドローン活用

経済格差と距離の差を縮める医療ドローン

空撮ツールとしてすっかり認知度が上がったドローンは今、荷物の配送手段として注目されています。そして、宅配便の荷物を運ぶことができるなら、医療器具や薬も遠くまで運ぶことができます。そうした特性を活用し、遠隔地に都市部付近と変わらない医療サービスを提供しようという試みが進められています。

国際機関の世界経済フォーラムは、取り組みの1つに「メディスン・フロム・ザ・スカイ」を掲げています。世界の僻地や開発途上地域に、ドローンを使って「医療を空から届けよう」というわけです。

医療格差は、経済格差と距離の差によって生じます。経済規模が大きい国の国民ほど、そして、お金を多く持っている人ほど、よい医療を受けやすくなります。さらに、都心部に近い場所ほど、経済大国に近い国ほど、よい医療が多くなります。

医療ドローンは、距離の差を縮めることはもちろんのこと、輸送コストを押し下げることができるので、医療格差の是正に寄与するかもしれません。

出典:https://ampmedia.jp/2017/07/24/drones-in-medical-field/

インド、アフリカだけでなくアメリカでも

新型コロナウイルス感染拡大によって人の移動が大幅に制限されるようになったため「空からの医療」の需要はさらに高まるとみられています。

世界経済フォーラムはすでに、インドの州政府や病院と協力して、南アジアでのドローンによる医療提供に取り組んでいます。

また、アフリカの途上国などは、舗装路が少ないだけでなく、丘を経由する道路や曲がりくねった道が多いため、輸送効率の悪さが医療へのアクセスを妨げています。ドローンは輸送効率を一気に引き上げます。

ドローンは、薬や医療器具だけでなく、血液も運ぶことができます。2019年には、アメリカのメリーランド大学医療センターが、ドローンで腎臓を空輸して移植手術を成功させました。世界で初めて、人の臓器をドローンで運んだ事例になります。

まとめ

CT、透析装置、内視鏡、注射器、血圧計…と、医療は技術の塊といってもよいでしょう。これまでの医療技術は、「医療ニーズありき」で発展してきました。例えばCTや内視鏡は、「人の体内を詳しく見たいという医療従事者からの要望から生まれました。

しかし上記で確認した手術ロボットの技術とドローンの技術は、医療ではない分野で発展しました。このように、最近の医療技術領域では、医療以外の分野から「輸入」が増えています。

命と健康を扱う医療では、「新しいもの」より「実績あるもの」が重視される傾向にあります。そのため、他分野で成功したテクノロジーをすぐに医療で試すことは難しいのですが、手術ロボットのように20年かけて進化し続けている医療技術もあります。今後もこの歩みは止まらないでしょう。