太平洋戦争の米潜魚雷が不具合だらけ?(前編):日本を苦しめた米潜水艦搭載のMk14魚雷のトラブル

第二次世界大戦時の米国の潜水艦といえば、何十何百もの日本の船舶を沈め、軍民問わず何万人もの日本人を死に追いやった脅威の兵器。日本の戦艦も米潜水艦を恐れて基地から出なかったほどで、それがどれほどの脅威だったかは言うまでもない。

これら米潜水艦による日本船舶の被害は、戦争中盤から後半に掛けて大幅に増えている。これは、この頃太平洋の支配権が米国に移り変わって来た上、米軍の大量生産による戦力投入があったことが原因として語られることが多いが、実はもう一つ忘れてはならない理由があった。

戦争初期、実は・・・米軍の潜水艦が使っていた魚雷は不具合だらけでまともに使えたものではなかったのだ。

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そうりゅう型潜水艦は、ドイツの216型やフランスのシュフラン(バラクーダ)級に勝てるのか?

オーストラリアが自国の通常動力型潜水艦「コリンズ」級の代替艦として、日本・ドイツ・フランスの潜水艦を候補に上げている事が話題になっています。

その中でも日本が最も有力とされていることについては、別の記事にて説明しました。しかし、対抗馬に挙げられているドイツやフランスと言えばどちらも強力な軍隊や技術力を持った潜水艦先進国。

ドイツの対抗馬は「216」型潜水艦で、フランスの対抗馬は「シュフラン(バラクーダ)」級原子力潜水艦を通常動力型に変更した型となります。はたして、日本のそうりゅうはこれらの潜水艦に勝てるのでしょうか?

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原子力潜水艦の研究は原子爆弾よりも早かった!疎まれた研究と、偉人の影に消えた一人の科学者

1954年1月21日は、潜水艦の歴史に刻まれる一日といえる。アメリカで建造された世界初の原子力潜水艦「ノーチラス号」がこの日、時のファーストレディ立会のもとで進水した日だ。同艦は翌1955年1月17日、史上初となる原子力を使っての運転を成し遂げ、潜水艦の新たな時代を切り開いた。
このノーチラス号開発のために尽力したハイマン・リッコーヴァーは現在、「原子力海軍の父」と称されている。

ところで原子力潜水艦の登場は、原子爆弾に比べると9年も遅れている。一見すると原子爆弾を作るためのマンハッタン計画で蓄積された知見を下地に潜水艦への動力転用という発想が出たものと思ってしまうが、実はそうではない。
なんと原子力潜水艦の研究は、原子爆弾開発よりも先に始まっていたのだ。

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翻訳:「海上の戦争」、群狼作戦立案者のデーニッツ元帥の小論(3章)-ノルウェー侵攻

ドイツがノルウェーに侵攻した話は有名です。しかし、ノルウェーにおける戦いは、主に侵略者ドイツ軍に対する連合国の立場で語られがちです。

「ドイツが侵攻し、連合軍が遠征部隊を派遣してノルウェーから撃退しようとした。しかし、フランス方面の苦戦で連合軍は撤退。ノルウェーはドイツに奪われてしまった」

事実ではありますが、ドイツ海軍がこのノルウェー戦でどれほど苦戦したかについてはあまり知られていません。遠征艦隊の壊滅、孤立無援の占領軍、不具合だらけの魚雷。

このノルウェーの戦いで、ドイツ海軍に何が起こったのでしょう?

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近代潜水艦の始祖、電気Uボート:ドイツで生まれ、大国が追随した潜水艦のパラダイムシフト

潜水艦の形状や設計思想が今と昔で大きく異なっているのはご存知だろうか?

第二次世界大戦開戦当時、世界の潜水艦は浮上航行を前提として設計されていた。なぜなら、当時の潜水艦は潜航可能時間が短かかったため、潜航したまま長距離を高速で移動するなどと言うことは想定されていなかったからだ。航行速度も浮上時の方が早く、潜行時は半分以下の速度になってしまう。

しかし、現代の潜水艦は全て潜行時の速度のほうが早く移動できるように設計されている。原子力潜水艦はもとより、潜行中は電気推進に切り替わる通常動力型であっても潜行した方が素早く移動できる。これは潜水艦の設計思想が今と昔で大きく異なっているからだが、このパラダイムシフトは、実は第二次世界大戦のドイツで起こっていた。

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潜水艦乗りの過酷な戦い(番外編):見えない敵を探せ!海上の船乗りたちは潜水艦とどう戦うのか?

全四篇に渡って潜水艦乗りの戦いについて追ってきました。そこで分かった事は、潜水艦は強力な兵器ではあるもののその特性や任務は非常に極端であり、むしろ軍艦の例外とも言える存在だということ。

そこで気になってくるのが潜水艦と戦う水上艦の船乗り達。戦争は海だけで行われるわけではなく、むしろ本当に重要なのは陸での戦い。海軍の任務は海の安全を確保することですが、それは物資や人員を陸の目的地へ確実に送り届けるためであり、そして敵の物資や人員を陸の目的地に近づけないようにするためでもあります。

その際に最大の障害となるのが潜水艦。潜水艦に潜水艦を攻撃させるのも一つの手ですが、潜行中の潜水艦の索敵範囲は索敵機や水上艦の広域レーダーに比べれば非常に狭く、防衛の主軸にするにはどうしても心許ない。海軍力に劣ったナチスドイツのUボート艦隊などは例外ですが、任務の汎用性なども鑑み、多くの海軍で水上艦が主力になっています。

海中を静かに進む潜水艦に比べると、水上艦は騒音を出すのでみつかりやすい。そんな水上艦の船乗りたちは、一体どうやって潜水艦と戦っているのでしょうか?

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潜水艦乗りの過酷な戦い(4):魚雷だけじゃない!対艦・対地・対空装備、海で最強の潜水艦

前回の記事では、潜水艦がどのようにして敵を見つけるかについて簡単にご説明しました。さて、敵を見つけたら今度は戦闘です。

海中の戦闘は海上の戦闘とは全く異なります。陸、海上、空の戦いは電波技術の進歩により飛躍的に変化しましたが、実は海中の戦いは世界大戦以来大きく変化していません。イージス艦が最強だとか、ステルス機が最強だとか、無人機が陸と空を跋扈するだとか・・・潜水艦とは無縁の話。

イージス艦のハイテクレーダーも、ステルス機の隠密性も、沢山の無人機も、未だ潜水艦の脅威にはなりません。海中にイージス艦のレーダーは届きませんし、潜水艦は世界中のどのステルス機よりも隠密行動に優れています。海中に無人潜水艦を送り込んでも、無人機の情報は結局浮上して電波を使うか、母線に繋がった有線で受け取るしか無いのです。

潜水艦が登場して百五十年が経った今でも、潜水艦と言うのは独自の立ち位置を取り続けています。

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潜水艦乗りの過酷な戦い(3):敵を見つけるための各種装備、音・電波・光を駆使した海の偵察

第一回では潜水艦乗りの過酷な生活についてご紹介し、第二回では最大の特徴である静粛性についてご説明しました。第三回と第四回は、潜水艦の戦闘に関わる部分について簡単にご紹介させて頂きたいと思います。

軍艦に限らず、兵器というのは戦うために存在しています。しかし、実際の戦闘はほんの一瞬。それは当然、潜水艦も同じです。毎日の様に訓練し、任務に就いたら四六時中音を出さないように海中で静かに生活し、いざ戦闘となれば、ほんの数十分で終わってしまう。

その一瞬のために、搭乗員の生活全てが存在するわけですが、その一瞬に潜水艦乗り達は一体どのような戦いを繰り広げるのでしょうか?

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潜水艦乗りの過酷な戦い(2):海に潜んで何が出来る?音も立てずに海中で隠れ続けるために

潜水艦乗りの生活は辛い。そんな話を前回の記事でご紹介しました。
しかし、彼らはどうしてこれほどまでに過酷な艦内に閉じ込められて作戦に従事しなければいけないのでしょう?

例えば、燃料から電力を生み出す効率の悪かった大戦時でも、米空母の中にはアイスクリームの製造機がありましたし、戦艦大和での生活はホテル(通称、大和ホテル)のようだったと言われています。現代の潜水艦ですらろくにシャワーも浴びれないのに、海上を行く船がどれほど快適な生活を送っていたことか。そしてそれは、現代の潜水艦と海上艦でも(原潜を除き)変わりません。

彼らがこのような生活を送らなければなら無い理由。それは、彼らの作戦目的と潜水艦の特性にありました。

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ヴァルター機関とは?第二次世界大戦時にドイツで生まれた非大気依存型推進(AIP)の先駆け

潜水艦の歴史は長く、17世紀にはすでにオランダの発明家コルネリウス・ドレベルが人力の潜水艇を発明している。
しかしディーゼルエンジンとバッテリーを併用する近代的な潜水艦が誕生したのはようやく20世紀に入ってからのことだ。これは浮上時にディーゼルエンジン、潜水時にはバッテリーで航行するというもので、原子力を使わない潜水艦ならば現在でも基本的な構造は変わらない。

これをもって潜水艦は一応の完成をみたといえるが、ここで吸気という大きな問題が立ちはだかった。
潜水艦が潜水時にバッテリーで動くのは、ディーゼルエンジンを動かすために必要な酸素が水中では取り入れられないためである。潜水時の動力には吸気が不要なバッテリーが使われるが、残念ながら移動できる距離は限られ、バッテリーの充電時には海上に出てディーゼルエンジンを動かさなければならない。これは潜水艦にとっては大問題。
これを解消しようという野望に燃えた人物が、1930年台のドイツに存在した。

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