いずも型護衛艦の性能と任務(後編):他の空母と何が違うのか?ひゅうが型とも比較してみる

 いずも型護衛艦がヘリ母艦と呼ばれる護衛艦であることを前編で説明しましたが、世間で話題となっている「空母との違い」についてはあまり詳しく語っておりませんでした。

 そこで、今回はいずもが一般に言う「空母」とどう違い、何が似ているのかについてお話したいと思います。また、それに合わせて似たような目的を持って作られたひゅうが型護衛艦との違いについても、簡単にご説明していきます。

[—続きを読む—]

いずも型護衛艦の性能と任務(前編):対潜ヘリ母艦とは何か?高い輸送力を持つ海自最大の護衛艦

いずも型護衛艦1番艦「いずも」が、2015年3月25日に竣工しました。海自最大の護衛艦であり、多数のヘリコプターを搭載可能です。

いずれ日本の護衛艦隊に組み込まれ、対潜任務の中核を成す護衛艦と期待されていますが、国内外で「あれは空母じゃないのか?」と話題になっています。平和憲法を有する日本が、他国を攻撃するための空母などもってはいけない。そんな中で、空母を作ったとしたら大きな批判対象となるでしょう。

しかし、いずも型護衛艦はいくつかの点で明確に空母とは違う点があるのです。いずも型の任務や性能についてご説明しながら、簡単に解説していきましょう。

[—続きを読む—]

太平洋戦争の米潜魚雷が不具合だらけ?(後編):接触信管まで動かない!Mk14魚雷の最後のトラブル

魚雷の深度調節装置の不具合に始まり、ようやくそれが治ったと思えば磁気信管の不具合。終いには、磁気信管の不具合が治らないからと、磁気信管の使用を禁止して接触信管(衝突時に爆発する信管)に変更する始末。

接触信管は古い魚雷でも使われていた信管で、問題なく動いていた装置。最新の技術を使っている複雑な磁気信管とは違って、信頼性も高いはずだったのだが・・・米軍の潜水艦乗りは、予想外の自体に遭遇する事になる。

[—続きを読む—]

太平洋戦争の米潜魚雷が不具合だらけ?(中編):深度調節の次は磁気信管にも不具合が見つかる

深度調節装置の不具合で、深く潜り過ぎて爆発しなくなっていた米潜水艦の魚雷。潜水艦乗り達が魚雷の不具合を証明するために、様々な苦労をした末にようやく不具合が修正された。

しかし、米潜水艦の魚雷不具合問題はまだ終わっていなかった。

[—続きを読む—]

太平洋戦争の米潜魚雷が不具合だらけ?(前編):日本を苦しめた米潜水艦搭載のMk14魚雷のトラブル

第二次世界大戦時の米国の潜水艦といえば、何十何百もの日本の船舶を沈め、軍民問わず何万人もの日本人を死に追いやった脅威の兵器。日本の戦艦も米潜水艦を恐れて基地から出なかったほどで、それがどれほどの脅威だったかは言うまでもない。

これら米潜水艦による日本船舶の被害は、戦争中盤から後半に掛けて大幅に増えている。これは、この頃太平洋の支配権が米国に移り変わって来た上、米軍の大量生産による戦力投入があったことが原因として語られることが多いが、実はもう一つ忘れてはならない理由があった。

戦争初期、実は・・・米軍の潜水艦が使っていた魚雷は不具合だらけでまともに使えたものではなかったのだ。

[—続きを読む—]

そうりゅう型潜水艦は、ドイツの216型やフランスのシュフラン(バラクーダ)級に勝てるのか?

オーストラリアが自国の通常動力型潜水艦「コリンズ」級の代替艦として、日本・ドイツ・フランスの潜水艦を候補に上げている事が話題になっています。

その中でも日本が最も有力とされていることについては、別の記事にて説明しました。しかし、対抗馬に挙げられているドイツやフランスと言えばどちらも強力な軍隊や技術力を持った潜水艦先進国。

ドイツの対抗馬は「216」型潜水艦で、フランスの対抗馬は「シュフラン(バラクーダ)」級原子力潜水艦を通常動力型に変更した型となります。はたして、日本のそうりゅうはこれらの潜水艦に勝てるのでしょうか?

[—続きを読む—]

原子力潜水艦の研究は原子爆弾よりも早かった!疎まれた研究と、偉人の影に消えた一人の科学者

1954年1月21日は、潜水艦の歴史に刻まれる一日といえる。アメリカで建造された世界初の原子力潜水艦「ノーチラス号」がこの日、時のファーストレディ立会のもとで進水した日だ。同艦は翌1955年1月17日、史上初となる原子力を使っての運転を成し遂げ、潜水艦の新たな時代を切り開いた。
このノーチラス号開発のために尽力したハイマン・リッコーヴァーは現在、「原子力海軍の父」と称されている。

ところで原子力潜水艦の登場は、原子爆弾に比べると9年も遅れている。一見すると原子爆弾を作るためのマンハッタン計画で蓄積された知見を下地に潜水艦への動力転用という発想が出たものと思ってしまうが、実はそうではない。
なんと原子力潜水艦の研究は、原子爆弾開発よりも先に始まっていたのだ。

[—続きを読む—]

翻訳:「海上の戦争」、群狼作戦立案者のデーニッツ元帥の小論(3章)-ノルウェー侵攻

ドイツがノルウェーに侵攻した話は有名です。しかし、ノルウェーにおける戦いは、主に侵略者ドイツ軍に対する連合国の立場で語られがちです。

「ドイツが侵攻し、連合軍が遠征部隊を派遣してノルウェーから撃退しようとした。しかし、フランス方面の苦戦で連合軍は撤退。ノルウェーはドイツに奪われてしまった」

事実ではありますが、ドイツ海軍がこのノルウェー戦でどれほど苦戦したかについてはあまり知られていません。遠征艦隊の壊滅、孤立無援の占領軍、不具合だらけの魚雷。

このノルウェーの戦いで、ドイツ海軍に何が起こったのでしょう?

[—続きを読む—]

近代潜水艦の始祖、電気Uボート:ドイツで生まれ、大国が追随した潜水艦のパラダイムシフト

潜水艦の形状や設計思想が今と昔で大きく異なっているのはご存知だろうか?

第二次世界大戦開戦当時、世界の潜水艦は浮上航行を前提として設計されていた。なぜなら、当時の潜水艦は潜航可能時間が短かかったため、潜航したまま長距離を高速で移動するなどと言うことは想定されていなかったからだ。航行速度も浮上時の方が早く、潜行時は半分以下の速度になってしまう。

しかし、現代の潜水艦は全て潜行時の速度のほうが早く移動できるように設計されている。原子力潜水艦はもとより、潜行中は電気推進に切り替わる通常動力型であっても潜行した方が素早く移動できる。これは潜水艦の設計思想が今と昔で大きく異なっているからだが、このパラダイムシフトは、実は第二次世界大戦のドイツで起こっていた。

[—続きを読む—]

潜水艦乗りの過酷な戦い(番外編):見えない敵を探せ!海上の船乗りたちは潜水艦とどう戦うのか?

全四篇に渡って潜水艦乗りの戦いについて追ってきました。そこで分かった事は、潜水艦は強力な兵器ではあるもののその特性や任務は非常に極端であり、むしろ軍艦の例外とも言える存在だということ。

そこで気になってくるのが潜水艦と戦う水上艦の船乗り達。戦争は海だけで行われるわけではなく、むしろ本当に重要なのは陸での戦い。海軍の任務は海の安全を確保することですが、それは物資や人員を陸の目的地へ確実に送り届けるためであり、そして敵の物資や人員を陸の目的地に近づけないようにするためでもあります。

その際に最大の障害となるのが潜水艦。潜水艦に潜水艦を攻撃させるのも一つの手ですが、潜行中の潜水艦の索敵範囲は索敵機や水上艦の広域レーダーに比べれば非常に狭く、防衛の主軸にするにはどうしても心許ない。海軍力に劣ったナチスドイツのUボート艦隊などは例外ですが、任務の汎用性なども鑑み、多くの海軍で水上艦が主力になっています。

海中を静かに進む潜水艦に比べると、水上艦は騒音を出すのでみつかりやすい。そんな水上艦の船乗りたちは、一体どうやって潜水艦と戦っているのでしょうか?

[—続きを読む—]