海上衝突回避規範(CUES)とは?中国などを意識した「事故」を防ぐための決まり事

海上衝突回避規範(CUES)というのをご存知でしょうか?
中国艦船の異常接近や火器管制レーダーの照射などが相次ぎ、2014年に中国を含めた西太平洋海軍シンポジウムで合意を経て定められたもので、海上での偶発的衝突を防ぐための「マナー」を示した規範です。

昨今、中国との領海争いが東アジアの各地で話題に登るようになり、米国も「航行の自由」を掲げて本格的に活動を始めるように成りました。そんな海上での緊張が高まる中で定められた規範ですが、これはそもそもどんなものなのでしょうか?また、本当にこの規範があれば海上での衝突をきっかけにした紛争が起こらなくなるのでしょうか?

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豪州潜水艦輸出問題、そうりゅうはスウェーデンや英国の助力を得てドイツに対抗

コリンズ級潜水艦更新にあたり、そうりゅう型潜水艦が輸出されるかどうかが大きな話題になっていますが、ドイツやフランスの売り込みを受けて日本もようやく動き出したようです(NewSphere)。

日本のそうりゅう型潜水艦輸出に際して最大の懸念は豪州国内世論の反発でした。というのも、そうりゅうを輸出する場合、日本で建造されて完成品が豪州へ輸出されることになるため、豪州国内の造船業界において雇用が大幅に失われてしまうのです。これに対して、ドイツやフランスは豪州国内での潜水艦建造を認めており、豪州国内の造船業界ではアジアの造船拠点に豪州を選ぶと約束したドイツの216型を特に推しています。

豪州国内の報道機関の中には、日本のそうりゅうが最有力とされていたことから一転して、ドイツの216型を最有力視する見方もあるとのことです。急に形勢が悪くなった日本に残された対抗策は、スウェーデンや英国の軍需産業と協力するという選択肢です。一体、どうしてこれが日本の対抗策となるのでしょうか?

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21世紀の海で体当たり合戦が起こる理由と中国海警の巨大巡視船

中国の沿岸警備隊である中国海警が、「体当たり戦法」を念頭に置いた巡視船を配備しようとしているとして話題(JBPRESS)になっています。この1万2千トンもある中国の巡視船は日本のイージス艦より巨大な船で、それを体当たりに使うと喧伝しているのです。

「どうして今更体当たり戦法なのか」、と笑いたくなる所ではありますが笑えません。実は、中国の巡視船のアピールのとしては、ある意味画期的な戦力アピールになっています。事実、この話を聞いた米海軍に戦慄が走り、今後の戦略を考えさせる結果になっているとか。

一体どうしてこのようなことになったのか、簡単にご説明していきたいと思います。

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灰色淑女との別れ、潜水艦は潜望鏡から電子工学マストへ

 「Dancing with the gray lady(灰色淑女と踊る)」という言い回しがある。
 潜水艦の司令室で潜望鏡を覗き込む様を言い表した言葉で、左右にせり出したハンドルを手に基部の接眼レンズを覗き込みながら潜望鏡を回転させる姿を社交ダンスになぞらえたものだ。
 潜水艦を扱う映画ではもれなく印象的な場面として描かれる一コマであろう。

 その潜望鏡は発明されてからすでに100年以上になる。一世紀の間に数々の改良が加えられてはきたものの、その大元の原理はずっと変わることなく、文字通り潜水艦の「目」として活躍し続けてきた。
 ところが10年ほど前、潜望鏡に替わる新たな「目」が現れた。新たな「目」は、それまでのものと何がどう違うのか? 潜望鏡の事の起こりから現在までを通観し、その新たな「目」、電子工学マストについて見ていくことにしよう。

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世界初の魚雷、ホワイトヘッド魚雷の発明と19世紀の魚雷の発展

”ホワイトヘッド魚雷なしには、潜水艦は精々面白いオモチャ止まりだったろう”

 イギリスの海軍軍人ヘンリー・ジョン・メイは20世紀初頭にこう語った。内燃機関とバッテリーを併用する近代的な潜水艦は1900年頃には既に完成していて、アメリカやイギリスなどの海軍は潜水艦を就役させ始めていたが、大砲に頼らず大型の船に有効打を与えられる魚雷がなかったならその価値は相当低くなっていたことだろう。

 実際、潜水艦から発射できる巡航ミサイルが登場する20世紀中盤になるまで潜水艦の戦闘は魚雷が軸であった。ミサイルが普及して久しい今日でも対潜戦闘において魚雷はまだまだ使われている。
 魚雷の存在が潜水艦の価値を引き上げ、また潜水艦の発展が魚雷の発展を促すという、ひとつの循環があったとも言える。では、その起点となった魚雷は、いつ作られたのだろうか。 [—続きを読む—]

翻訳:「海上の戦争」、群狼作戦立案者のデーニッツ元帥の小論(4章)-群狼作戦

「第二次世界大戦」、「Uボート」、「デーニッツ元帥」といえば、群狼作戦と言っても過言ではありません。

Uボート部隊の活躍により大きな被害を被ったイギリスは、輸送船団に護衛艦隊を使って護送する護送船団方式を採用し、Uボートの攻撃から逃れようと画策しました。しかし、それに対してデーニッツ元帥が編み出したのが複数のUボートで護送船団を包囲攻撃する群狼作戦。

その群狼作戦が発案される経緯や成果、ドイツのソ連開戦の裏話に、イタリア戦線まで、ドイツ側から語られる第二次世界大戦がここにあります。

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そうりゅう型潜水艦輸出問題、遂に日独仏対決へ!どうしてこうなった?

以前、コリンズ級潜水艦更新問題で日・独・仏三国の潜水艦について比較する記事を書きましたが、2015年5月6日、どうやら本当に三国で受注協議に入ることが分かりました。

つい先月まで、そうりゅう型が最有力候補とされながら、どうしてこのような事になったのでしょう?

それには、豪州の国内造船業の事情と日本の武器輸出事業に対する営業力の乏しさが関係していました。

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自衛隊の救難飛行艇US-2の実力は?(後編):ロシア製やカナダ製、世界の飛行艇と比較してみる

前編で海上自衛隊の新明和工業製US-2飛行艇が世界最高峰の性能を持っているという話をしたのですが、それは実際に比較してみなければなんとも言えません。

日本のUS-2の他に世界的に高い水準で作られている飛行艇は、カナダのボンバルディアエアロスペース製「CL-415」とロシアのベリエフ設計局開発の「Be-200」だけです。

ただ、他の国の飛行艇はUS-2とは別のコンセプトに基づいて作られているということもあり、一概に一つの性能を挙げて比較するのは間違いです。そこで、海外の飛行艇について様々な観点からUS-2と比較してみましょう。

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自衛隊の救難飛行艇US-2の実力は?(前編):太平洋戦争の二式飛行艇から続く、世界最高の技術

2015年3月末。インド政府が海上自衛隊のUS-2飛行艇の購入を検討している事が報道されました。そうりゅう型潜水艦に続く兵器輸出に繋がると話題になっていますが、多くの人々にとってこの「US-2飛行艇」の存在は寝耳に水だったようです。

潜水艦の知名度に対して、飛行艇は無名も無名。さらに、世界大戦の際には世界中で飛び回っていた軍用飛行艇も、今では日本・カナダ・ロシアでしか製造していていないマイナーな機体となっています。

しかし、実はこの飛行艇。日本は太平洋戦争の際にも世界最高の機体を作っており、飛行艇の技術は日本が世界一とも言える分野だったのです。本記事では、「US-2」と大戦時の飛行艇「二式飛行艇(大艇)」について簡単にご説明していきたいと思います。

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いずも型護衛艦の性能と任務(後編):他の空母と何が違うのか?ひゅうが型とも比較してみる

 いずも型護衛艦がヘリ母艦と呼ばれる護衛艦であることを前編で説明しましたが、世間で話題となっている「空母との違い」についてはあまり詳しく語っておりませんでした。

 そこで、今回はいずもが一般に言う「空母」とどう違い、何が似ているのかについてお話したいと思います。また、それに合わせて似たような目的を持って作られたひゅうが型護衛艦との違いについても、簡単にご説明していきます。

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