日本は安全だ。平和な国だ。と、良く言われるが、本当にそうなのだろうか?
ニュースでは毎日の様に数多くの犯罪者が報道され、隣国との仲も悪く、戦争の危険を感じずにはいられない。そこで、FBIなどの安全度統計や世界平和度指数(GPI)から、日本の治安や平和の度合いを、他国と比較してみたいと思う。
本記事内で、一つ留意して欲しいのは、「安全」と「平和」は別の意味として扱いたいということ。
安全度(Safety)を測る際に用いられているのは、警察官の数や犯罪発生率、重犯罪の割合などであり、国として体制やテロリズムなどは評価されない傾向にある。つまり、純粋に「犯罪」の危険性にのみフォーカスされた形だ。
一方で、平和(Peace)では、政治の安定性・犯罪・銃火器の保有・軍の規模・核の保有・テロ・難民・紛争に至るまで、かなり広い範囲で測定されている(GPIの場合)。こちらは、総合的な生活に関する危険度や安定性に注目している。
なので、ここではそれらの二つの側面から議論していきたい。
世界一安全な国、日本
最近のFBIの統計では、どうやら日本が最も安全な国と言うことらしい。
FBIの統計は、基本的に米国人旅行者向けに作られており全118ヶ国中の順位だ。知名度があまりに低い小国などは含まれない。なので、本当に小さな国で住民全てが隣人の様な国の方が安全だといえるかも知れない。
もう一つ別の統計では、日本は安全指数で2位にランクインしている。
各国の統計情報を集計し、総合的に犯罪率などを測定・評価しているNumbeo.comでの評価だ。全139ヶ国中であり、1位が人口9万人の”マン島(イギリスの属領)”なので、実質1位と言っても良さそうだ。
どちらのランキングでも、安全な国として上位10位に上がってくるのは、シンガポール・香港・韓国・台湾・グルジア・アラブ首長国連邦などである。
ここで、少し違和感があるかもしれない。果たして、韓国やグルジアがそんなに上位に来るのだろうか、と。
これは実のところ、現地の集計方法や犯罪報告の頻度などが大きく影響している。韓国はまだしも、グルジアに関しては外務省が渡航制限をかけているほどの危険な国だ。「治安」と言う意味では多少は良いのだろうが、国内情勢を鑑みれば、すんなりと安全だという言葉を真に受ける事は出来ない。
安全な場所を緑で示し、危険な場所を赤で表した世界地図だ。
見るからに日本が真緑である。
しかし、暮らしやすい国と言われている北欧の色が思いの他薄い気もするし、中国がこんなに緑色なのも少し(かなり)怪しい。
「犯罪とは何か」というのは国の定義によって異なり、犯罪を超えたテロや暴動をその国家でどう扱っているのかも分からない。犯罪発生率や警察力だけで、その国の本当の姿は測れない。
最新の世界平和度指数(Global Peace Index)から見る日本
そこで、国の平和度を多角的に考察してみたのが、世界平和度指数だ。イギリスのエコノミストと言う出版社が分析した数値であり、犯罪件数・警察力・重犯罪数・囚人人口・武器の保有率・デモ・暴動・暴力事件・政治的安定度・武器輸出・隣国との関係・紛争などなど、24の指数から多角的に平和度を考察している。
その最新のランキングと共に、平和度指数を表す世界地図が以下の様になる。
ランキングが小さいので、抜粋して以下に記す。(安全ランキング上位が赤、大国を青)
1位:アイスランド
2位:デンマーク
3位:オーストリア
4位:ニュージーランド
5位;スイス
6位:フィンランド
7位:カナダ
8位:日本
9位:ベルギー
10位:ノルウェー
11位:チェコ
12位:スウェーデン
13位:アイルランド
14位:スロベニア
15位:オーストラリア
16位:ブータン
17位:ドイツ
18位:ポルトガル
19位:スロベニア
20位:オランダ
21位:ハンガリー
22位:カタール
23位:ポーランド
24位:モーリシャス
25位;シンガポール
26位:クロアチア
27位:スペイン
28位:台湾
29位:ウルグアイ
30位:チリ
31位:エストニア
32位:ブルガリア
33位:マレーシア
34位:イタリア
35位:ルーマニア
36位:ボツワナ
37位:クウェート
38位:ラオス
39位:ラトビア
40位:アラブ首長国連邦
<以下抜粋>
41位:モンゴル
43位:アルゼンチン
45位:ベトナム
47位:イギリス
48位:フランス
53位:韓国
80位:サウジアラビア
86位:ギリシャ
91位:ブラジル
101位:アメリカ合衆国
108位:中国
111位:グルジア
128位:トルコ
137位:メキシコ
143位:インド
152位:ロシア
153位:北朝鮮
159位:イラク
最下位:リビア
というような形になっている。
上と下の地図を見比べてみると、「大体合ってるけど・・・」なにか違う。
日本を除いて、「安全」ランキングではTOP10に入っていたほとんどの国が、「平和」ランキングでは20位以下にまで落ちているのだ。日本は驚きの安定感を誇っている。
特にグルジア(111位)と韓国(53位)と、大きくランキングを下げており、安全だけど平和ではないと言う結果が明らかになった。その原因としては、犯罪の集計方法に問題があったというだけではなく、国外の情勢の不安定さが原因になっている。
アラブ首長国連邦では中東の周辺国が不安定であり、テロリストなどの流入も懸念されること。シンガポール、台湾は中国との関係に問題があり、韓国は北朝鮮、グルジアはロシアと、国外に不安を抱えているためには、平和指数を落としている。
かくいう日本も中韓との関係に問題があるため、ランキングが下がっていると言う形になっている。確かに、我々日本人が自分たちの生活に不安を感じるのは、中国や韓国が関わっている時が多い。重犯罪のニュースで不安になることもあるが、それに関しては他の国はもっと酷い状態なのだ。
テロや紛争、周辺国との関係などを考慮したのは評価できるが、「平和指数」ランキングの問題点としては、国内軍備の増強を「危険性」としてカウントしている事、殺人や暴力を重犯罪として扱っている一方で、レイプなどの性犯罪が重犯罪として扱われていない事などが上げられている。
軍備に関しては、日本を含めた西側諸国の大部分がNATOや米国との同盟により、他国の戦力によって安全保障を行っているので、軍備が少なく「平和」扱いになる一方で、軍事力の後ろ盾となっている側であるロシアやアメリカの評価が著しく下がってしまう。
さらに、露見する犯罪が少なくても、性犯罪の危険性を高めに考慮しない場合、露見しにくい(通報されにくい)性犯罪が多い国のスコアが上がりやすくなる。
多角的に判断する分、余計なスコアや足りないスコアで、評価にブレが生じてしまうと言う可能性があるということだろう。
住みやすい平和な国とは?
「安全」と「平和」と言う観点から各国の評価を見てきたが、何をもって安全で平和な暮らしやすい国だといえるのかは、非常に難しいということが分かる。
犯罪が起こっていないからといって、苦しんでいる人がいないとは限らないし、犯罪が起こっているからと言って、その犯罪で苦しむ人が沢山出ているとは限らない。
軍隊や武器が沢山あるから必ずしも危険だとは限らず、平和な暮らしをどのようにして手に入れるかは、その国の目指すあり方次第と言える。
世界一強大で豊かな国であるアメリカは、強大であるが故に危険な国と言える一方で、その危険な国が存在しなければ平和な暮らしを保てない小国も沢山ある。逆に、アメリカと対立する国は、ロシアや中国の庇護がなくては平和な暮らしが手に入らないのかもしれない。
幸運にも島国であり、我々の先祖のたゆまぬ努力もあり、高いモラルと経済力を手に入れた日本は世界でも有数の平和な国であるということは間違いない。しかし、その一方で、不安定な生活を強いられている国も沢山ある。
平和を手に入れるために何を犠牲にしてきたのかを、あらためて考えて見るのも良いかもしれない。