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発光の仕組み、白熱電球・蛍光灯・LEDは何故光るのか?人が作った技術の光

夜でも明るい人間の暮らし。文明が生まれてから、人は様々技術を用いて人の生活に光をもたらして来ました。

数千年間、人は灯りに火を使い、原料は木・油・ガスと変わっていきますが、その基本原理は同じです。しかし、電気という新しいエネルギーが発見され、白熱電球・蛍光灯・LED電気と次々に新たな原理の灯りが発明されました。

これらの電灯は全て電気を使っていると言う点で共通ですが、原理は全てバラバラです。では、それぞれどんな違いがあるのでしょうか?誰にでも理解できるように、簡単に説明していこうと思います。

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光というのは電磁波であり、エネルギーの一種です。炎が化学エネルギーを使って発光したのと同じように、電灯は電気(電子)のエネルギーを光に変換しています。そして、各々の電灯がどのようにして、その電気エネルギーを光エネルギーに変換しているのかについてご説明していきたいと思います。

白熱電球の原理

白熱電球は、ジョゼフ・ウィルスン・スワンと言うイギリス人によって1860年に発明されました。電球と言うとエジソンが有名ですが、発明そのものはスワン氏が先です。エジソンは、電球の核とも言える発光するフィラメントという部品に竹を使うことで、初めて長時間利用できるレベルの電球を発明し、市場に普及させました。ちなみに、パクられたスワン氏とエジソンは合同で会社を設立しています。

白熱電球は、電気を用いた灯りである電灯の始祖とも言える存在で、現在でも使われ続けている灯りですが、その原理は比較的シンプル。一言で言うなら、電子がフィラメントの中を高速で動いた際に生まれる摩擦(電気抵抗)による発光です。


(電子の摩擦_学研キッズネット)

摩擦で光るの?と疑問に思うでしょうが、摩擦で熱が発生すると言うのは感覚的に理解していただけるかと思います。熱と言うのは原子の振動によって発生しているのですが、この時ほとんどの原子は熱と同時に電磁波(光)を発生させています。白熱電球は熱いですが、熱くなるのは摩擦のせいだったんですね。ちなみに、この現象を熱放射と呼びます。

では、何故摩擦が発生するのでしょうか?
電気」を流すというのは、「電子」を流すというのと同じ意味です。ただし、向きは逆。これは、電流の流れの向きを定義する際に、電子がマイナスの性質を持っているということが知られていなかった事が原因なのですが、非常にややこしいですね。後述しますが、プラスの性質を持った正孔と言う存在も出てきますが、そちらは電流と同じ向きに動きます。

向きはともかく、電子が流れるのはフィラメントや導線の中です。みなさんもご存知の様に、フィラメントや導線は見るからに固体です。物が流れそうには見えません。ところが、電子は非常に小さいため、小さな虫が網戸を通り抜けるかのごとく、フィラメントの中にある小さな隙間を縫うように移動します(下図参照)。とはいえ、それがあまりにも狭いので、電子がフィラメントの原子にぶつかり、それが摩擦(原子の振動)と言う形になり発熱・発光することになります。厳密には、これは「摩擦」ではなく「電気抵抗」と呼ばれるものですが、抵抗という現象をイメージする手助けにはなるでしょう。

(電子が発生させる熱_わかりやすい高校物理の部屋)


 電気ストープやオーブントースターなどに電気を流すと、熱を発生させると同時に光るのはそのため
です。加えて、発生した光(赤外線)が別のモノ(原子)に当たると、原子が振動して熱を発生されるのでモノが温まります。サーモグラフィなどは、この熱と一緒に発生している光を使って、熱源を映像化させているんですね。
(出典:TEKNOS)

電子というのは全てのモノに含まれているのですが、モノによって電子との摩擦(抵抗)の度合いや発生する熱と光の割合が違います。電球のフィラメントに使われているのは、かなり光の割合が多い物質ですが、物によっては熱の割合が多すぎて発火してしまうこともあります。電球において、最も重要なのはこのフィラメントの物質の選定だったのですね。フィラメントは、銅→竹→タングステンと変遷していき、最近の電球では発生した光を効率よく拡散させることや長持ちさせることに重点が置かれているようです。

蛍光灯の原理

 電子の摩擦(抵抗)だけを利用していた電気ですが、蛍光灯はやや趣きは違います。電子を流すことで、モノ(原子)にぶつけると言うことろまでは同じなのですが、光の発生原理も含め、その後のプロセスは独特です。


(蛍光灯図解_中部電力電気こどもシリーズ)

まず、電気が流れるのはフィラメントや導線ではなく、ガスの中(放電現象)。蛍光管の中に水銀ガスが入っていて、電子を水銀ガスにぶつけます。水銀ガスに電子がぶつかると、原子が振動すると同時に紫外線(目に見えない光)が発生します。それが、ガラス管に塗られた蛍光塗料にぶつかり、蛍光塗料が発光します。つまり、電子を水銀ガスにぶつけて、水銀ガスから出た光を目に見える形の綺麗な形(色)に変換すると言うことです。

何故わざわざこんな周りくどい方法を使うのかというと、電子をぶつけた際に水銀は非常に効率よく光を発生させるものの、その光が強すぎる(紫外線)ため、減衰・拡散させるためのワンステップが必要になるのです。ちなみに、水銀の発光効率が良い理由は、光を放つ原理の違いにあります。

まず、蛍光灯は水銀原子に電子をぶつける際に放電現象を利用していますが、放電現象によって放たれた電子(自由電子)は、普通に導線に電気を流す時よりもはるかに高いエネルギーを持っています。水銀原子は他の原子と同じように原子核と電子から成り立っていますが、水銀にぶつかった放電された電子が持っていた高いエネルギーは、原子核そのもののだけではなく、水銀電子にも与えられるのです。そして、電子が過剰なエネルギーを持った状態になり、不安定にになった電子は持っていたエネルギーを光(紫外線)として放出して元に戻ります。

イメージとしては、放電によって高いエネルギーを与えて飛ばした電子は、摩擦と言うより、激突と言って良いほどの勢いで原子にぶつかり、その勢いで原子にくっついていた水銀の電子が飛び上がり、水銀の原子がホッとして元の場所に戻るときに光を放つと考えても良いかもしれませんね。

ちなみに、電灯の元のエネルギーは電気エネルギーであり、熱の発生にエネルギーを使ってしまう白熱電球は非常に無駄があると言えます。その点で、水銀は白熱電球より熱が発生せず、無駄が少ないので非常に省エネだと言えます。

LEDの原理

LEDの発光原理自体は蛍光灯の水銀と似ています。電子に過剰なエネルギーを与えて、要らないエネルギーを放出する。しかし、電子に過剰なエネルギーを与える過程が、全く新しい技術になります。

(panasonicのウェブサイトより)

左の図を見ていただけるとわかりますが、青い穴と赤い粒が近づき、二つが衝突している箇所で発光しています。
またしても二つの物体の衝突とともに発光しているのですが、赤い粒が電子であるのに対して、青い穴は厳密に言うと物質ではありません。文字通り正孔と呼ばれる穴なのです。

この正孔と電子が衝突した際、電子が持ったエネルギーを放出し、光を放ちます。

簡単に言うとそういうことなのですが、LEDを理解する上で、他の原理の説明では全く出てこなかった正孔と言う存在が癖者です。正孔と言うのは、動きとしてはプラス性質をもったの電子のように動きます。上の図でもわかりますが、青い穴(正孔)はプラスからマイナスの方向に動いていますね。何故、そのように動くかというと、正孔というのは、下の図の様に電子が無い穴だからなのです。

 

図の左側が実際の状態ですが、これは言い換えると右の図のようにプラスの物体が存在すると言う風に言い換える事もできます。

水中の泡をイメージしていただけるとわかりやすいかもしれません。泡は何も入っていない(空気)ですが、周りが全部水なので、泡と言う物体が存在する様に見えます。しかも、水は下に落ちますが、泡は上に昇っていきます。
(正孔イメージ図_Wikipedia:正孔)

この電子の中の泡が、正孔とも言えます。電子の中にいるので、正孔と言う何かが存在しているように見え、電子とは逆の方向に動くのです。

では、何故この電子の泡と電子がぶつかると発光するのでしょうか?

「過剰にエネルギーを持った電子がエネルギーを放出する際に光を放つ」とご説明しましたが、「蛍光灯が無理やり電子にエネルギーを与えて過剰なエネルギーを放出させた」のに対して、LEDでは「電子が落ちる穴を作って、電子が普通に持っていたエネルギーを放出させた」と言えます。

イメージとしては、普通にジョギングしていた電子に椅子を持ってきて座ってもらい、走らなくなって余ったエネルギーを光にして放出したと言うイメージが近いかもしれません。

 今までとは違い、LEDが無理なく光を発生させていると言うのが分かって頂けたかと思います。この正孔という電子が落ち着く椅子の存在を創りだしたのが半導体であり、技術を飛躍的に発展させるのに役立ちました。

 白熱電球や蛍光灯より大幅に省エネであり、さらに小型化が可能なため、21世紀の電灯といえるでしょう。

2020年からは、電灯の殆どがLEDに代わる

白熱電球、蛍光灯、LEDの原理の違いについて説明させていただきましたが、その特性によって我々の生活では大きく使い方が異なります。

白熱電球は安価であり、しかも熱を出しているので熱と光の双方が必要な環境(温室など)では重宝されます。さらに「熱(振動)」で光を出しているので、交流電流でも光が瞬くということはありません。蛍光灯やLEDの灯りで写真を撮ると、交流電流は人の目には見えないレベルで明滅しているので上手く光を得られません。しかし、灯りとしてはエネルギー効率が非常に悪く、環境に悪影響(電気の無駄遣い)が出るとして政府の指導で生産自粛が始まり、大手メーカーでは白熱電球の生産は既に止めています。

一方、エネルギー的には効率が良い蛍光灯ですが、人体に有害な水銀を使っていると言うことで、これも環境に有害であるとして、2020年を目処に世界的に水銀使用の規制が始まります(水俣条約)。水銀を使わない蛍光灯が発明されない限り、蛍光灯も間違いなく規制対象になるので、いずれ蛍光灯は使われなくなっていくと思われます。

つまり、2020年以降、日本の電灯の殆どがLEDに取って代わられると言うことに他なりません。

現に2020年以降に発表された予測では、LED照明市場の強力な伸びが期待されています。

エネルギー効率の高い照明システムの需要増、スマートライトの普及、および生産コストの削減などが推進力となり、LED照明市場は2022年から2027年の間に753億ドルから1247億ドルまで成長するとされ、2030年には照明全体の87%がLEDになるという予測もあります。

その中でも、日本、中国、インドを含めたアジア太平洋地域は、2028年時点でLED照明の市場シェアがトップクラスになるという抜群の成長市場。政策の後押しもあって、日本での成長は力強いというわけです。

確かに、LEDは非常に多くの点で他の電灯より優れています。しかし、半導体を使った技術であり、他の電灯とくらべてかなり効果な灯りです。長期的に見れば電気代が安くなり、いい事づくめですが、昔ながらのやたら熱い白熱電球や長細い蛍光灯が見られなくなるのはどこか残念な気がしますね。

二十年もすれば、白熱電球や蛍光灯を見て、昔を懐かしむ事もあるのかもしれません。

[2016/06/17 更新]
[2023/07/03更新]

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