2014年8月7日。落雷で高校生が無くなった。不運な事故。しかし、本当に「不運」で済ませて良いのでしょうか?
今回の雷事故は、雷注意報が出ていたのに気づかず校庭に出ていたと言うもので、何も障害物の無い校庭への落雷の危険性が高い事を鑑みれば、学校側の責任が全くないとはいえない。
確かに、落雷が直撃したり近くに落ちて感電する事は滅多に無いことではあるものの、電柱や電線に被雷してコンセントにつないでいた電子機器が壊れるのは、実は「雷雨があれば必ず」と言う程良くあること(年間推定数万件)なのです。何回か雷が落ちれば、幾つか電子機器が壊れます。そう言っても過言ではありません。
「雷だし・・・仕方ない」
と言うのは、実は先進国ではあまり考えられない考え方で、欧米では雷対策が義務付けられており、雷による電子機器の損壊は日本より遥かに少ないのです。
はっきり言って雷の被害は防げます。では、どうすれば良いのでしょうか?
日本で雷対策が進まない理由
日本の法律では、雷による被害は基本的には天災と考えられることが多く、裁判で明らかな過失が認められない限り賠償などはありません。電子機器でも雷対策は行われていない場合が殆どで、欧米などは当たり前のアース付きのコンセントが殆ど普及していません(家に数個あるかないか)。
日本では昔から、恐ろしくてどうしようもないものの例として、「地震雷火事親父」と言いますが、地震・火事・親父の恐怖は昔ほどではなくなってきました。地震は阪神大震災以来の法・技術の整備により対策に著しい向上がありました。火事はオール電化で火を使う機会が減り、火災報知器や消火器などの設置で早期発見・消化ができるようになっています。親父に関しては、家父長制が崩壊し、今では見る陰もありません(頑張っているお父さま方すいません・・・)。
地震対策などに至っては世界トップクラスの対策が施されているにも関わらず、雷はまだまだです。50年前と比べれば、技術開発と法整備により、マンションやオフィスビルなどでの対策は進みましたが、一般家庭での対策は昔と殆ど変わっていません。
雷の被害は、地震や火災と違って人命に繋がることが滅多にない上、「壊れた電子機器の買い替え」によって、ある意味経済効果すらあるので、本格的な対策を打つ必要性が薄いという事もあります。昔から、台風・地震・津波と自然の猛威にさらされ、自然の強さをまざまざと知っている日本人です。他と比べれば、雷の被害くらいは許容出来るのかもしれません。
これは、日本政府が悪いというよりは、日本国民が天災だと諦めていると言う慣習的な側面が強い様に思われます。
家庭で出来る雷対策
そうは言っても、雷が一発落ちれば、電子機器が壊滅的な被害を受けます。運が良ければ数台で済みますが、悪ければ全ての電子機器を買い換える事にもなりえます。
では、具体的にはどうすれば防げるのでしょうか?
①電子機器・電源タップをアース(接地)することで、電気を地面に流す
②雷サージ防護機器を使う
③早期に雷・雷雲を検知し、電子機器をコンセントから外す
電気の逃げ道を作る
アースと言うのは、地球のEarthから来ているのですが、雷から流れる電気を地球に向かって流します。
具体的には、二つのプラグ以外にもう一つ伸びるアース端子(アース線)をコンセントのアース部分に差し込みます。すると、アースの差込口が、建物の下の地面へと繋がっていて(接地)、過電流を地面に流すようになっています。これは雷対策としてだけではなく、漏電対策としても有効です。むしろ、日本では漏電対策として行われる場合が多いです。
欧米の場合、一定電圧が掛かる殆ど全ての機器にアースプラグが付いていて、もちろん全てのコンセントにアース用の最込口があり、普通に使っていても雷対策が施されていると言う状況です。
一方、日本の場合は、アースを差し込む専用のプラグが付いており、そこにアース線を取り付ける形になります。コンセント一つに対してアースが一つか二つ。さらに、全てのコンセントがアース付きと言うわけではないのです。アース自体は複数機器まとめて繋ぐことができるので一つでもあれば良いのですが、問題は「アースが遠くてアースを繋げられない」ので、繋がないで使うと言うケースが非常に多いという事。
さらに、一部大型家電を除き電子機器がアースに対応しておらず、そもそもアース線が存在していないと言うケースが殆どなのです。
つまり、日本で電子機器を使う場合、
ユーザーが意識的に雷対策を行わない限り、雷に対して非常に無防備であるということが言えます。
(日本のコンセントの場合)
(米国の場合)
プラグそのものにアースが付いており、普通にコンセントに差しこむだけで接地され、雷対策が万全となる。
電源事情に少し詳しい方だと、いや日本のコンセントは二つある内の片方がアースになっているから大丈夫なんだという方がいますが、これは間違いです。確かに片側は接地されているのですが、これは中性点接地と呼ばれ、電柱などの変圧器の接地点へと繋がっています。
どういうことかというと、以下のように電気が流れている場合、
[[変電所]]→[電柱1]<送電線1>[電柱2]<送電線2>[[家]]
電柱1や変電所に過電流が流れた場合、電柱2のアースでうまく電流を逃がす事は出来ますが、電柱2や家で渦電流が流れた場合は、中性点接地ではどうしようもありません。そもそも、家電の漏電に対する接地効果も存在しないので、一般家庭の対策としてはあまり意味がありません。
ちなみに、アメリカでアースが義務付けられているのは、日本より電圧の高い機器が多いからと言う理由もあります。日本では、100-120V程度の電圧しか使えませんが、アメリカや諸外国では240Vの電圧を使うことがあり、漏電時の被害が致命的なので、漏電兼・雷の対策としてアースのコンセントが必須となっているのです。
雷サージ防護機器を使う
では、アース線がない機器やアースが遠すぎる場合は、どうすれば良いのだろうか?
その場合、電源タップなど、壁のコンセントと機器の間にアース線を取り付けられるものを使う事で、過電流を防ぐ方法が存在します。ただし、これは過電流として流れてきた電流を抵抗を使って熱などに変換する装置であり、耐えられる電圧に限りがあります。
建物などに直撃した場合はさすがに同しようもないが、近くに落ちて発生した誘導雷(雷自体が持つ電気ではなく、雷が落ちることで発生する電流)電流を受け止める位は出来る。電子機器の故障の大半は、数千―数万ボルト程度の過電圧によるものなので、雷サージ防護機器で大半の被害は防げると考えて良いはずだ。
以下、いくつか典型的な例を挙げる。
雷サージ対策が施された電源タップで、1万ボルト程度の電圧に耐えられる。普通の電源タップとして使いながら、雷対策にもなる。
ちなみに、本製品はコンセント部分に蓋が付いていて、誇りが入らないようになっていたり、スイッチ機能で不要な電気の節約が出来る。
これは、電源タップなどにそのまま差し込み、過電流を全てこのプラグで受け止めると言う製品。電源タップの差込口を一つ専有してしまうが、耐電圧が6万ボルトと市販の対策品としては、群を抜いた性能となっている。
普通の電源タップに差し込むだけで使えるというのも便利。
雷を早期検知する
屋内にいて気象庁の注意報などを受け取れる状況であれば、気象庁からの注意報などを見て、電子機器をコンセントから抜くだけで十分だが、屋外にいた場合は難しい。
電子機器の対策と言うわけではないが、興味深いアイテムを見つけたのでご紹介する。
Outdoors Technologies 携帯型パーソナル雷警報器ストライクアラート
これらの製品は雷の放電現象で発生した電磁波を検知し、危険を早い段階で知らせてくれるというものだ。距離に応じて警報を鳴らしてくれるので、屋内に急いで入らなければいけないタイミングを把握しやすい。
耳で聞こえる距離の限界は15kmであり、雲の広がる範囲から言って、雷が聞こえてから避難しても手遅れになる場合が多い。これらの警報機は40-60km圏内の雷を検知するため、かなり早い段階で避難行動を開始する事ができる。
最低限度の対策を
皆、こんなふうに思っていないだろうか?
「雷が直撃したら仕方ない」
気持ちはわかるが、落ちる場所や対策によって被害は大きく変わってくる。確かに200万ボルトの電圧は雷サージ機器ではどうしようもないものだが、適切に機器が接地されていれば、かなりの電流を地面に逃すことが出来る。
「避雷針やもっと高いビル落ちるから、家の周りには落ちない」
これも良くある油断の一つ。雷による最も大きな被害の一つが、誘導雷だ。
知っての通り、電流が流れば磁場が発生し、磁場は電流を生む。誘導電流というやつで、それは雷にも言える事。ぜんぜん違う所に落ちたにも関わらず、発生した電磁場によって、電線に強い電流が流れ、電子機器を破壊する。これは、雷そのものに比べれば遥かに微弱な電流だが、電子機器には致命的だ。こう言った電流は、雷サージ機器で大部分が防げる。
数百円から数千円で、数十万円の被害を防ぐことが出来ると言っても過言ではない。
「いや、それよりも・・・停電の方が困る」
停電は確かに迷惑だ。遠くに落ちても発生するし、避雷針などでうまく逃せたとしても、一瞬だけ電気が消える事は起こる。そう言う時は、UPS(無停電電源装置)を導入すれば良い。バッテリーが内蔵されていて、停電時には自動的にバッテリーに切り替わる。何時間も使えるものではないが、一時的に停電した場合には、十分復旧するまで保つはずだ。
雷対策が施されたUPSもあるので、オススメだ。
APC SurgeArrest 雷ガードタップ+電源バックアップ BACK-UPS ブラックBE325-JP