ビジネス向けSNSを有するLinkedInが、世界26ヶ国の正社員1万8千人に仕事のやりがいについてアンケートを取った。その結果、日本人は世界で最も仕事にやりがいを感じていないと言う結果が出ました。
さらに、他国の労働者と比較して、日本人は「仕事のやりがい」を転職の際にかなり重要視する傾向がありました。つまり、日本人は仕事選びにおいてやりがいを重視し、仕事の中でそれが満たされていない割合が多い。ということになります。
これは現在仕事に就いている人を対象にしたアンケートですので、日本人が元々やりがいを求める人種だからこうなっているのか、それとも単に労働環境が劣悪だからなのかは分かりません。しかし、他の国に比べてやりがいが無いと感じている人が多いのは間違いないようです。
一体、日本では何が起こっているのでしょう?
世界的に見ても劣悪な労働環境
他の統計では、東京に住む人の睡眠時間が世界最低と言うデータもあり、さらに外国人ビジネスマンが日本で感じる一番の不満が満員電車だという報告もあります。加えて、先進国ではトップレベルの長時間労働。
日本生まれの「過労死」なども未だ健在で、大震災が起こっても仕事の心配をしているサラリーマンの姿は他国のメディアでも大きく取り上げられました。ブラック企業の存在が大きく報道される様になり、劣悪な労働環境をネタにした映画などが作られています。労働者の労働環境に対する関心は高まる一方で、その環境改善に向けた取り組みも未だ十分とは言えません。
さらに、今まで日本人が苦しみながらも転職せずに同じ会社で働いてきた理由となっていた、終身雇用や年功序列も崩壊しつつあります。これに関しては悪いことばかりではないのですが、終身雇用や年功序列の上に築かれてきた会社の風土やシステムも変わらないままでは、労働者と会社の間に大きな歪が生まれます。
人の入れ替わりが当たり前になるのなら、若年者が年長者の上のポストに着くのであれば、それ相応の風土やシステムが必要です。
誰かが辞めた時、本当にスムーズに仕事を引き継げていますか?辞めた人しか知らないブラックボックスはありませんか?すでに辞めてしまった人に仕事の事で連絡を取ろうとしたことはありませんか?
大きな成果を上げて昇進した時、年上の部下に何の躊躇いも無く雑用を頼めますか?職場だけではなく、飲み会でも年上の部下に気を遣ってはいませんか?年上の部下の失敗をきちんと叱れますか?
きっとそう簡単には行かないと思います。誰も辞めない前提で作られた会社のシステムや年齢の上下関係を大切にする会社の風土の変革は、終身雇用と年功序列の崩壊ほどスムーズには進みません。
睡眠時間を削り遅くまで働き、満員電車ですし詰めになりながら会社へ向かう日本の労働者は、自分が何故そこで働くのかについて今まで以上に考えるようになりました。
やりがいのある仕事
やりがいのある仕事とは何でしょう?これに関しても多くのアンケート結果が見つかりました。
ランキングの順位はアンケートによってばらつきがありますが、決まって上位に上がっているのは以下の5つです。
「賃金が多い」
「興味・関心を持てる」
「達成感がある」
「他人から評価される」
「自分自身が成長できる」
他にも、大きな責任を背負った時や地位が上がるような仕事と言うのもありましたが、基本的にはやりがいのある仕事というのは「自分に対して何かが返ってくる仕事」と言って間違いはないでしょう。
賃金は言わずもがなです。給料はそのまま自身の評価と言う事もできますし、お金があれば生活そのものも豊かになり、自分の子供や奥さんを満足させることも出来る万能ツール。多少仕事が辛くても、沢山給料を貰えていればやりがいがあると言えるでしょう。
興味・関心と言うのは、例えばゲームを作るのが好きで関心があるのなら、ゲーム作りの仕事は楽しめるかもしれません。普段から好きでゲームを作っていたような人であれば、その仕事は確実にやりがいのあるものと言えますね。
製品の企画から開発まで全て自分で手がけ、それが沢山売れたら仕事にやりがいがあると感じられるはずです。例え、お菓子に興味がなくても、全てを一から作り上げた製品が店頭に並び、次々にお客さんの手に取られて行く場面を見ることができれば、どれほどの達成感が得られることでしょう?
上司に褒められたり、お客さんに感謝されれば、どんなにやっている最中にくだらないと思えても、やってよかったと思えるのではないでしょうか?人から評価され、必要とされるのであれば、その仕事もやりがいがあるのではないでしょうか?
泳げるようになったり、自転車を漕げるようになった時の喜びを覚えているでしょうか。成長し、出来ることが増えれば、その人は新しい仕事にチャレンジする事ができるようになります。その仕事を通して、成長し、進歩することが出来るのであれば、やりがいはあるはずです。
仕事のやりがいは人それぞれで、何に重きを置くかも違います。いくらお金を貰ってもやりがいを感じられない事もあれば、どんなに仕事に興味・関心があっても、あ金を貰えず、認められないのであれば、やってられないと思う事もあるでしょう。
やりがいというのは、それと同時にマイナスの要因も考えなくては行けません。
「やりがい」に労力が見合わなければ、それはある意味「やりがい」の無い仕事になってしまいます。
仕事はたくさんあって、それは日本でも外国でも代わりません。本来やりがいのある仕事が、日本ではやりがいのない仕事になってしまうのは何故でしょう?
睡眠時間と日々のストレス
職場そのものの環境に原因があるというのももちろんあるでしょうが、それは会社毎に様々であり、これといういうことはできません。
しかし、日本特有の現象とも言えるマイナス要因が統計から明らかになっています。人間であれば必ず大きな苦痛となるのが、睡眠不足と日々のストレスなのです。
睡眠時間は7-8時間が脳には最適で、多すぎても少すぎても良くないと言われます。
最適な睡眠時間は人によって異なり、仕事のパフォーマンスが高い人は8時間以上眠っていると言う統計もあるほどで、どれくらい寝るのが正しいとはいえません。ただ、少すぎることでパフォーマンスが落ちるのは間違いありません。睡眠が少ないと、集中力が切れやすくなり、ストレス耐性も下がります。これはそのまま仕事に対する苦痛に代わり、仕事を辛いものにしてしまう原因なのです。
都会の満員電車も日本では非常に大きな社会問題となっています。
眠い目を擦り、ぼーっとする頭を叩きながら、隣の人と肩をぶつけ合い、後ろの人と背中で押し合う満員電車に乗り込まなければいけない朝を迎えると言うのは、控えめに行っても最悪です。遅くまで仕事をして、疲れた身体で帰宅ラッシュの混雑に揉まれながら明日の仕事のことを考える毎日。そんな生活を送ってまで、その仕事を続けられるほどその仕事は本当にやりがいのあるものなのか、誰でも一度は考えるでしょう。
もし毎日の始まりが爽快な目覚めと快適な通勤時間に変わったら?
それだけで、同じその仕事のやりがいも少しは変わってくるかも知れません。
仕事でやりがいを得るには?
転職してやりがいのある仕事を見つけられれば良いのですが、そう簡単ではありません。相応のリスクを覚悟しなくてはいけません。もしかすると、今より状況が悪化するかもしれないのです。
日々の生活で辛うじて出来ることといえば、時間をずらして満員電車を避けたり、会社の近くに引っ越してみたり、少しだけ早く家に帰ったり・・・そのくらいでしか無いでしょう。
でも、本当に簡単に出来るのは、今の仕事にやりがいを見つけることかもしれません。
給料は変わらないでしょうが、自分の仕事が人々の生活にどう関わっているのかを考えてみると仕事に興味を持てるかもしれませんし、会社に貢献できていることが分かれば達成感も湧くかもしれません。いつも怒っている上司に褒められる様に頑張ってみるのも一つの手でしょう。毎日同じような仕事でも、少し工夫すれば自分が成長するきっかけになるはずです。
仕事にやりがい、感じてますか?