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深宇宙彫刻「DESPATCH」とは?螺旋状の衛星が唄う詩の断片を、地球でつなぎ合わせられるのか?

2014年11月30日12月1日以降の打ち上げに延期のはやぶさ2と一緒に、DESPATCHという「芸術衛星」が打ち上げられるのはご存じですか?

「DESPATCH」は多摩美術大学と東京大学が共同で研究しているARTSATプロジェクトの二号機で、一号機の「INVADER」は今年二月に打ち上げられて9月に地球の大気圏に突入して燃え尽きました。

今回のDESPATCHは、はやぶさ2と共に地球から大きく離れた深宇宙へと飛んでいきますが、共に打ち上げられる予定のPROCYONしんえん2とは違い、この機体は所謂「宇宙開発」のための衛星ではありません。

一体、深宇宙彫刻DESPATCHとはどういったものなのでしょう?

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世界初の螺旋形状の衛星、深宇宙彫刻

ARTSAT2「DESPATCH」

 上がARTSAT2「DESPATCH」の画像です。

「これ、何に使うの? オブジェ?」
と言う感じの見た目ですが、衛星なのです。はやぶさ2と共に宇宙に打ち上げられます。
サイズは50cm☓50cm☓45cmで、重さはおよそ30kg。

衛星にはお約束の太陽パネルも付いておらず、中心の鍋を逆さまにしたような物体にうねうねととぐろを巻くように謎の物体が括りつけられています。

このとぐろを巻いている謎の物体は3Dプリンタで制作されており、内側の器には大量の電池とコンピューターが入っています。そして、とぐろを支えている支柱のような金属棒は実はアンテナになっていて、宇宙から電波を発信出来るようになっているのです。

「ああ、ただのオブジェではないのね?」
というところまではわかると思いますが、一体何故こんなモノを打ち上げるのかについてはまだよくわかりませんよね?

DESPATCHのミッションは以下の3つ:
1.芸術作品として完成された本衛星を深宇宙(地球圏脱出)へ飛ばすこと
2.本衛星が宇宙から送信する宇宙詩を地球で受信し、協力して完成させること
3.月に反射させた電波を使って、上記を達成すること

さて、もう少し詳しく説明していきます。

衛星芸術とは?アートで身近に感じられる宇宙

DESPATCHのミッションには芸術作品を宇宙に送り出すというものがありますが、本当にそんなものが必要なのか疑問に思うかもしれません。

今までの人工衛星がどんな形だったか思い出してみてください。

皆さん、上のような(左がロゼッタ、右がはやぶさ2)衛星を想像したかと思います。これらの人工衛星は見るからに人工衛星と言う感じで、まさに宇宙を漂う衛星だ。と思うでしょう。

では、次にあなたにとって人工衛星とはどんなものなのかを考えて見てください。きっと、宇宙関係で働いている人や宇宙が好きな人以外は、「電話やGPS、インターネットに使われているもの」程度の認識ではないでしょうか。

本記事を読んでいる方はおそらくある程度宇宙に興味をお持ちの方だと思うので、各々自分の好きな衛星や、人工衛星が持つ可能性などに思いを巡らせたのかもしれません。

しかし、大部分の人は衛星と聞いても「へえ? 宇宙に浮かんでるやつね?」で終わりです。
はやぶさが話題になった時に、はやぶさが何故話題になったかきちんと答えられる人はどれくらいいるでしょうか?

多くの人にとって人工衛星と言うのは、「自分には関係ない宇宙の何か」でしかないのです。しかも、機能性を追求した無骨な衛星のシルエットでは、余計にその気持ちが強くなります。「なんか良く分からない部品が沢山付いている」事は分かっても、それが何なんなのかに興味を持ちません。

ですが、もし宇宙にピラミッド型の美しい三角形をした人工衛星が浮かんでいたり、天使の彫刻のような綺麗なオブジェ型の人工衛星が浮かんでいたらどうでしょう?おそらく、不思議なことに今まで人工衛星に興味のなかった人たちも、人工衛星に興味を持つようになるでしょう。

元も子もない言い方すれば「ゆるキャラ」や「萌えキャラ」みたいなもので、「なんか可愛い」と言うことで見た目から入り、関連する本当に興味を持って欲しい話題に引き込んでいくと言うやり方に近いかもしれません。

視覚的な芸術性も大切ですが、3Dプリンタと言う汎用的な制作機械で作られたというのも重要なポイントの一つです。安価で作れるというのも魅力ですが、「もしかして、自分で衛星を作れるのかもしれない・・・」と思えるような衛星を作るというのも、人が人工衛星を身近に感じられるようになる第一歩です。

誰にでも作れるような機械で、芸術性に富んだ衛星を作る。それが、ARTSATプロジェクトのポイント一つなのかもしれません。

「なんか良く分からないカッコ良い!」
そんな人工衛星があっても良いのではないでしょうか?

まあ・・・宇宙とか人工衛星が好きな人からすれば、無骨な人工衛星の方がカッコ良かったりしますけどね。

宇宙詩の発信と地球での完成

宇宙詩って何? まず、普通の人はそこからでしょう。

詩と言うのは、元来言語に依存してきました。美しい響きを持った詩であっても、その言葉を理解できなければその美しさを理解する事はできません。そこで、「音響詩」というものが生まれます。これは、言語に依存しない詩であって、どの世界の言語にも属しません。ある意味、誰にも理解できない詩でありながら、誰にでも理解できる詩でもあるのです。

宇宙詩と言うのは、機械に理解できるコードで人工衛星に音響詩を送り、それを人工衛星に唄わせる詩と言ってもよいでしょう。極端な話「宇宙人にも分かる詩」と言う表現が当てはまるかもしれません。ちなみに、どんな詩なのかを聞きたい方はこちら(ARTSATホームページ)で聞いてみてください。ARTSAT1号機INVADERから送信された宇宙詩です。言葉ではないので意味はよくわからないのですが、聞いていても不快にならず、どちらかと言うともう一度聞いてみたくなる詩に近いですね。

さらに、ただ詩を唄わせて地球で聞くだけじゃありません。

宇宙空間の地球から遠く離れる軌道に乗るDESPATCHの電波は、簡単には聞き取れないレベルに減衰します。言ってみれば、遠すぎて声がよく聞こえないのです。ノイズが混じり、聞き取りにくい電波を世界各国のアマチュア無線家達と強力しながら受信し、受信できた信号をつなぎ合わせるようようにして一つの詩を完成させます。

一見、この共同受信ミッションは何かのゲームのようにも思える試みですが、人間が宇宙に出るのが当たり前になれば、宇宙詩の代わりに深宇宙からのSOS信号を解読する事になるかもしれません。

螺旋状の芸術作品が宇宙で唄う

宇宙で芸術を行う試みは始まったばかりです。

前回打ち上げられたINVADERは、10cm四方の1.8kgの立体で、DESPATCHより遥かに小さい機体でした。今回のDESPATCHに比べると、なんというか少し保守的に見えますね。重量やサイズ制限が厳しかったのかもしれません。

ARTSAT1号機「INVADER」

地球周辺を回る軌道で強い電波を出す必要がないため、大きなトランスミッターが必要なかった要らなかったというのもあるのですが、今回はそうはいきません。

DESPATCHは遠い宇宙を飛び、大出力のアンテナと大容量の電池を搭載しています。その分、デザインにもある程度の余裕があったのですが、螺旋形状には驚かされましたね。ちなみに、傾いているのは、重心をずらして宇宙空間で勝手に回転するようにということらしいです。

アンテナの位置を変えられませんので、くるくる回ってくれないと上手く地球で電波を発信できないのですね。おそらく、とぎれとぎれになりますがつなぎ合わせれば詩が聞こえる筈です。

アマチュア無線家の方で、DESPATCHの詩を聞きたいという方は、こちら(共同受信ミッションについて)に詳しい方法が書いてあります。ARTSATプロジェクトのフェイスブックのページもチェックしてみてください。

太陽パネルのないDEPATCHが電波を発信する期間は1週間程とのこと。太陽パネルを搭載していたとしても、一ヶ月も経てば並みのアンテナでは電波が届かないので意味が無いそうです。乗り遅れないようにしましょう。

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