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GPSのしくみと消費電力の関係、どうすれば電池を節約できる?

GPSはスマホやカーナビについていて当たり前の技術であり、超小型のIoT機器にも導入されています。GPS衛星と通信していると考えると何やら凄そうに聞こえますが、そのしくみは意外にシンプルです。その割には電池の消費が激しく、電池の節約にGPSのオフは欠かせません。

凄そうに見えて簡単な、簡単な癖に面倒な、GPSのしくみと消費電力について解説しましょう。そのしくみを踏まえた上で、節約の方法についても考えてみます。

2023年7月15日加筆

GPSのしくみ「3次元測位」

GPSのしくみについてはご存知の方も多いでしょう。3つ以上の衛星から送られてくる「時刻」から衛星との「距離」を算出し、その距離と衛星自身の「位置情報」を合わせて自分自身の居場所を確定させます。これを3次元測量と言います。ちなみに、名前は似てますが三角測量とは別物です。

時刻から距離が分かる理由は、電波の到達速度の関係で「発信時刻」と「受信時刻」に差がでるからです。東京発の荷物が神奈川着と鹿児島着で時間が違うのと同じです。荷物の預入時刻と到着時刻を見るだけでも、大体の距離が把握できます。

ただ、距離だけだと正確は位置がわかりません。鹿児島着でも北海道着でも、同じくらいの時間がかかるからです。そこで、別の衛星からの情報を参考にします。つまり、大阪発の荷物で到着時刻を見るのです。

これでかなり正確な情報が手に入りました。しかし、試しに出発時刻と到着時刻から割り出される距離で円を描くと、下の図のように東京発(青)と大阪発(赤)の円の交わる点が鹿児島の他に2箇所あります。九州の北の海上なので普通は除外できますが、離島があるのかもしれません。そこで、もう一箇所加えてみましょう。

上図のように仙台発の荷物を加えてみると、全てが交わるのは一箇所だけです。つまり、どこに向かって送られた荷物なのかは出発した時刻と到着した時刻の情報が3箇所分あれば良いということになります。

ただし、時刻の他に重要な情報が必要であることも分かるでしょう。どこから送られたかということです。それがこの例で言うと「東京」「大阪」「仙台」という出発地の情報であり、GPS衛星の位置情報にあたります。衛星の場合は日本の上空を飛んでいるため、東京や大阪のようにハッキリとした場所が分からず、宇宙空間の座標を使うしかありません。

この座標をどうやって算出するのかというと、実は同じやり方を使います。ただし、今度は本当に東京・大阪・仙台のような地上からの位置情報です。場所がハッキリと分かっている地上の拠点から衛星に信号を送り、時刻から距離を計算し、宇宙空間に存在する衛星の位置情報を確定します。

衛星は多少動いていますが、決まった軌道を決まった速度で動いているので、一度位置が分かれば後は通信をせずとも計算で場所は分かります。その上で、スマホやカーナビなどのGPS端末に向かって時刻と位置の信号を送り、端末側で計算して場所を把握します。

GPS衛星の場合は上図のようなイメージです。東京にいることがわかりますね。

 

原理については、他にも詳しく解説しているサイトは沢山あるので、原理についてもっと詳しく知りたい方はそちらも参照してください。

電波を受信するだけなのに電池消費が激しい

原理についてはざっくりと分かったと思いますが、スマホやカーナビがやっていることは要するに「3つ以上のGPS衛星から位置と時刻の情報を受信して、その情報を基に計算をするだけ」です。実際には、精度を高めるために4つ以上の衛星から情報を得ています。

衛星に向かって電波を飛ばしているわけでもなければ、大量の情報を受信しているわけでもありません。ハッキリ言って、情報自体はメールを一通受信するよりも少ないでしょう。しかし、消費電力はメール一通受信するよりも多いです。これはなぜなのでしょうか?

実は、これはGPS衛星から送られる電波の波長が原因です。一般的に、電波は「波長が長いと情報量が少ない代わりに遠くまで飛ぶ」「波長が短いと情報量が多い代わりに遠くまで飛ばない」という特徴があります。

そして、私達が普段使っている無線LANや携帯のデータ通信、通話電波の波長は比較的短く、到達距離が短い代わりに情報量が多いのです。情報量が多ければ必要な情報はすぐに届くので「通信時間は短く」なります。

一方、GPS衛星は宇宙から発せられている上に、多くのユーザーに届ける必要があるので、波長が長く情報量が少ないため、位置と時間の情報を届けるだけでも「通信時間が長く」なります。その上、位置情報は刻々と変わるので何度も通信します。車などで移動している場合には、常に受信し続けることになり、事実上電話し続けているのと変わりません。

長いと言っても受信に何分も関わるわけではなく、数秒で確実に終わりますが、それを移動の度に行っていると考えると大変な通信時間です。受信の度にCPUで計算を行っていますし、受信と計算だけでそれなりに電池を消費します。つまり、GPSの消費電力が多いのは、長い受信時間と計算回数が問題だったのです。

電池を節約したいなら

当然ながら、電池の節約を考えるならGPSを切っておくのが1番です。ただ、位置情報は様々なアプリで使われるようになっており、オフにすると不都合が生じる場合も少なくないでしょう。その場合は、アプリごとにGPSの使用制限をかけるか、バックグラウンドで動作しないようにする設定が有効です。

また、地図アプリは描画にかなりのCPUを使いますので、不可の少ない地図アプリの使用も検討しても良いでしょう。ただ、一般的に使われるGoogleMapのアプリがそれなりに消費電力は控え目なので、大きな差を感じないかもしれません。

スマホのバッテリー問題はいくら技術が進歩しても深刻ですが、GPSの利用による消費電力は今後減ることはあっても増えることはまずないでしょう。つまり、スマホやカーナビの性能が向上すればするほど、GPSの消費電力は目立たなくなるということです。

事実、昔の携帯はGPSをオフにするだけで1日10%の節約ができましたが、最近の携帯では5%かそこらが良いところで、電池消費の原因は別のアプリにあることが殆どです。GPSの使用タイミングもアプリによってバラバラですので、GPSを使いすぎるアプリをバックグラウンドで動かないようにするだけで、電池の消耗度合いは大きく変わることでしょう。

さらに現在では人工衛星を使わない次世代の位置情報技術として「スーパーGPS」の研究が進められています。

これは地上に設置された光ファイバー網と無線送信機のネットワークを駆使したもので、10cm単位で位置情報を取得できるとされています。人工衛星に頼らないため、屋内でも活用できる優れもの。

現時点では、デバイスの消費電力については詳しく触れられていません。ただ、情報量の多い電波で通信ができると考えると、通信時間を短く抑えられ、したがって消費電力を抑えられるのでは……?と、ちょっと期待しちゃいますね。

GPSは曲者ですが、技術的には非常に古いシンプルなものです。最新のCPUは消費電力も減っていますし、受信装置の消費電力も減る傾向にあります。「GPSをオフにしても消費電力があまり変わらない」時代は目の前まで迫っています。

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