電子書籍が「eBook」という形で世界に発信されるようになってから、既に20年以上が経過しています。日本国内でも電子書籍はひとつの読書形態として浸透しつつあり、スマホやタブレットで使ったことがある人も多いのではないでしょうか。
電子書籍はただの「紙の本の代わり」にとどまらず、新しい読書体験を生み出せるポテンシャルがあります。将来電子書籍がさらに普及するきっかけは、この新しい読書体験を知ることが一歩になるかもしれません。
そこでこちらでは日本国内における電子書籍の現状と、電子書籍を使った新しい読書体験について解説します。電子書籍を普段から読む人も、今のところ全く触れる機会のない人も、一度電子書籍との付き合い方を見直してみてください。
電子書籍の現状について
電子書籍は近年新興国を中心に普及が進み、既に世界中に広まっている技術となっています。エリアによっては紙の本を読むのではなく、電子デバイスで読書をすることが日常的になっているケースもあるのです。
「PwC Global Entertainment and Media Outlook: 2016-2020」によると、日本の電子書籍市場は世界で第2位という規模になっています。米国に次ぐ規模で、沢山の電子書籍が市場に出回っているということです。
技術的な面でも、電子書籍は進化を続けており、たとえば電子ペーパー技術の発展によって、電子書籍が読みやすいデバイスの製造が行われるようになりました。電子書籍の専用端末も使えるようになったので、今では視覚的なストレスを低減しての読書が可能となっているのです。
他にも電子書籍としてのラインナップの増加による、「読みたい本が読める」環境の整備も進んでいます。電子書籍のサービスごとに差はありますが、何十万〜何百万というラインナップが楽しめるようになっているのです。
さらに、電子書籍の市場規模の推移を見てみると、今後もますます充実していく展望が見えてきます。電子書籍市場は2010年ごろから15〜35%の成長を見せ、2015年には週刊誌の売り上げを電子書籍が逆転する結果になりました。
出典:インプレス総合研究所『電子書籍ビジネス調査報告書2019』
将来の展望を見てみれば、2023年度には2018年度の1.5倍となる4,330億円、電子雑誌も合わせた電子出版市場は4,610億円程度になると見込まれています。このように市場が大きくなれば、電子書籍サービスのバリエーションも増えていきます。
現に、Amazonと紐づいている「Kindle」や、実店舗との併用が可能なハイブリッドサービス「honto」など、それぞれに特色あるサービスをユーザーが選択できるようになっています。特定のサービスに縛られることがなくなるので、電子書籍はさらに身近なものとして多くの人の日常に定着することでしょう。
過去には「電子書籍よりも紙の本が良い」という意見も多く、電子書籍はあくまで特殊な読書事例と捉えられることもありました。しかしこうした変化を振り返ると、電子書籍の魅力を改めて見直す機会が来ていると言えるでしょう。
かつて電子書籍に不満があったという人でも、今ならまた違った感想が出てくるかもしれません。
そこで、電子書籍による新しい読書週間を紹介していきます。
電子書籍による新しい読書習慣の勧め
電子書籍はそのシステムから、次々と新しい本に挑戦できるという特別な性質を持っています。それは今後の市場拡大だけでなく「新しい読書習慣」としての成立にもつながり、紙の本の代わりとして使う以上の魅力を生み出していくでしょう。
電子書籍を使った新しい読書習慣として、「雑食読み」と「並行読み」の2つを紹介したいと思います。
読み放題サービスを使った「雑食読み」
雑食読みとは、電子書籍のサブスプリクションサービスを活用した「何でも読む読書法」のことです。近年は電子書籍とサブスプリクションを組み合わせた「読み放題サービス」が、ひとつの選択肢として存在します。
サブスプリクションでは月額料金を支払うことで、対象となる漫画、小説、雑誌といったあらゆる電子書籍が読み放題になるのです。そういった読み放題サービスに登録して、あらゆるジャンルの本をとにかくたくさん読んでいくのが雑食読みの基本となります。
自分の興味のある書籍はもちろん、触れたことのないジャンルや作家にも積極的に手を出していくのが雑食読みの特徴です。知識欲が刺激されるような本もユニークな本も好き嫌いせずに雑食的に味わっていくことによって、読書の幅を広げていくことが目的となります。
サブスプリクションであれば、サービス範囲内の書籍はいくら読んでも追加料金がかかりません。そのため金銭的リスクをかけずに、自分の知らない本の世界に挑戦していけることが利点になります。
図書館などを使うことでも、さまざまなジャンルの本に手を出すことは可能かもしれません。しかし、書籍を見つけて借りるまでの手間、図書館への移動時間、蔵書の幅広さなどを比較すれば、電子書籍の方が圧倒的にやりやすくなります。
現実的に考えると、雑食読みは電子書籍だからこそできる読書習慣になるでしょう。読み放題サービスの対象となっている書籍は豊富なだけでなく、定期的なラインナップの変更などによって長期的に楽しめるようになっています。
電子書籍とサブスプリクションとの組み合わせを活かした雑食読みは、ぜひ一度体験してみることがお勧めです。
複数の本を気分によって読み進める「並行読み」
並行読みとは、複数の本をその日の気分によって適当に読んでいく読書習慣です。
基本的に電子書籍は、書籍ごとに読んだページが保存されるため、手軽に読書の中断が可能となっています。このシステムを利用して、複数の書籍を同時進行で読み進める方法が並行読みの特徴です。
電子書籍なら端末に複数の書籍を貯蔵した状態で持ち運びができるため、ふとしたときに続きを読むといった衝動的な読書がしやすくなります。その手軽さを活かすためにも、「あえて気軽に中断する」という読書方法が、新しい習慣として定着し得るのです。
一方で並行読みには、中断した本が増えることでそれぞれの内容がわからなくなるのでは、という問題があります。しかし、電子書籍には簡単なメモを付けたり、各アプリとシェアしたりといった機能もあるため、内容を自分なりにまとめておくことが可能です。
次に読むときの自分に向けて記録を残すことも、電子書籍の新しい読書習慣に含まれて、ひとつの楽しみになることもあるでしょう。小説など読み終わるまでに時間のかかるジャンルが苦手な人は、この並行読みを実践することで読破率を高めていくことができるかもしれません。
並行読みなら短時間でも少しずつ読書を進めていくことができるので、「読む」という行動をより日常的な感覚として取り入れやすくなります。何より「すぐに最後まで読みきらなくても良い」という気軽さがあるため、読書が継続しやすくなるでしょう。
読書が得意でないけれど、電子書籍をきっかけにして楽しんでみたいという場合には、並行読みを試してみてください。
電子書籍による「簡単な書籍の切り替え」が現代風の読書になる
電子書籍は、簡単に読んでいる書籍を切り替えられる環境を形成しました。これからの読書はこの環境を活用して、積極的に読む本を切り替えていくことがひとつのキーポイントになります。
各電子書籍サービスでは読んだ本をもとにお勧めを表示したり、関連書籍を紹介したりといったことも行われています。次に読む本を簡単に発見できるようになっているため、書籍の切り替えは誰でも簡単にできるものとなるでしょう。
例えるならYouTubeで動画を見るように、ワンタップで閲覧し、また次の動画に移動していく形が、書籍の世界でも始まっているのです。
もちろん本1冊の重みは変わらないため、面白い本はじっくりと読み進めて、繰り返し楽しむこともできます。そのため電子書籍によって新しい読書形式が誕生したことは、単純に読書方法の幅が広がったことになるのです。
書籍という長い歴史を持つ存在が、新しい進化を遂げた結果だと言えるでしょう。今回紹介した2つの読書習慣は、電子書籍の特性から考えられる方法の一部に過ぎません。
新しい読書習慣は、これから電子書籍を使っていくひとりひとりが自ら考えて、生み出していけるものなのです。
この機会に自分の生活に合った新しい読書習慣を考えて、電子書籍から多くの利益を引き出してみてはいかがでしょうか。