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クラウドファンディングとの付き合い方 ―『Yogventures!』から何を学ぶか―

Kickstarter―――――
それはパトロネージュと
インターネットをくみあわせた
まったくあたらしいサービス・・・

クラウドファンディングという言葉がこの1、2年でたびたび耳に入るようになってきた。
特に著名なサービス提供者といえばKickstarterだろう。

クリエイティブなプロジェクトの支援を行うという理念の元、少額の寄付を多くの人から集める場を提供するクラウドファンディングのさきがけとして、映画、絵画、彫刻、ゲームなど、さまざまな作品制作に寄与してきた。
気をつけたいのは、あくまでこの資金集めは寄付にであるという点だ。
Kickstarterの規約上、プロジェクトの目標額が集まらなければ寄付したお金は帰ってくるが、目標額が集まってから何か問題があってプロジェクトが没になった場合はどうにもならない。

ごく最近、その「どうにもならない」事例が発生し、にわかに紛糾をみせている。

『Yogventures!』の失敗

2014年7月19日、Kickstarter上で資金を集めて開発されていたゲーム『Yogventures!』の開発中止が発表された。
理由は開発会社の倒産で、制作中だった『Yogventures!』の権利は別の会社に委譲された。

同ゲームは2012年にKickstarterで公表され、同年5月には目標資金額に到達。
ゲームのデジタル配信システム「Steam」上で、ユーザーの投票によりSteamでの配信を後押しする「Steam Greenlight」で高い得票数を得るなど、前評判は上々だった。

2013年8月末にはベータ版が完成しており、出資者向けに配信されている。
そして、ベータ版公開からほぼ1年が経った2014年7月19日、開発会社の倒産を理由に突然の開発中止が発表された。

頓挫した『Yogventures!』の権利はYoutubeでゲーム関連の動画を配信している「Yogscast」に委譲された。
その後『Yogventures!』のデザインやソースコード諸々は「Nerd Kingdom」に引き渡された。

データを引き継いだ「Nerd Kingdom」が開発中のインディーズゲーム『TUG』が事実上『Yogventures!』の「完成品」となる見通しで、事実、開発中止の発表後に出資者に渡されたのは『TUG』の早期アクセスキーだった。

出資者の声

Kickstarter上のフォーラムには、出資者から不平不満の声が相次いだ。

『TUG』のアクセスキーが届いていない、『TUG』の完成度では出資額に見合わないという投稿が散見される中、出資したお金を返せという声も少なからず存在する。

残念ながら、Kickstarterの規約上、一度目標額に達したプロジェクトに出資したお金は戻ってはこない。

Kickstarter上での出資はあくまで寄付という位置づけである。
プロジェクトが成功しても出資者に金銭的な見返りはなく、頓挫すれば当然出資した分は帰ってこない。
返金しろという声が冗談半分ならともかく、真面目にそう叫んでいるのならば、単なる投資とクラウドファンディングの違いが分かっていないと言わざるを得ない。

この認識の食い違いは、今後クラウドファンディングが普及していく上で大きな問題になりうる。

クラウドファンディング普及の課題

日本でも、元カプコン社員の稲船敬二氏がKickstarterで資金を集めて『Mighty No.9』の開発に着手したことはちょっとしたニュースになった。

今後、同人ゲームのクリエイターや独立した有名クリエイターがKickstarter上にプロジェクトを発表する事例は増えてくると予想される。
そうなれば少なかれ『Yogbentures!』のような顛末を辿るプロジェクトも発生してくることだろう。

「風が吹けば桶屋が儲かる」的な論調になるが、Kickstarterの要旨を理解していないユーザーがそこで「投資した金を持ち逃げされた」などと騒ぎ立てれば、Kickstarterのサービス、ひいてはクラウドファンディング全般に対して好ましからぬイメージが植え付けられることにもなりかねない。
実際にそこまでの騒ぎになると決まったわけではないが、『Yogventures!』の頓挫に乗じて返金を叫ぶ出資者がいるのは事実であり、もしこのような無用な騒ぎが広がってしまえば全体の不利益になる。

個人や小規模な集団で、フットワークの軽いゲーム開発を可能にするクラウドファンディングは、うまく機能すれば国内ゲーム市場、ひいてはユーザー側の利益にもなりうる。
その実現のためには、前段階の準備として、『Yogventures!』のような事例を通してクラウドファンディングの正確な理解を周知させることが重要になるだろう。

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