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エルニーニョ現象(ラニーニャ現象)の仕組みと影響、暑い?寒い?日本では何が起こる?

2014年。今年5月の気象庁の発表では、エルニーニョ現象が6月-7月頃から始まり、日本は冷夏になる可能性があるという発表でした。ところが、新たな発表では、エルニーニョ現象の発生時期が秋ごろにずれ込むという話。この夏は冷夏どころか例年より暑くなる可能性があるそうだ。

エルニーニョ現象と言うのはよく聞く言葉だが、ざっくり言ってしまえば「海水温がいつもより温かい」と言う現象だ。たったそれだけの現象にも関わらず、エルニーニョ現象は異常気象を引き起こす元凶として知られている。

何故、エルニーニョ現象が異常気象を引き起こし、そしてどんな異常気象が起こり得るのか・・・それらについて簡単に説明していきたいと思います。

赤道付近の太平洋における海水温の変化

深海の温度が上昇していると言う話を以前紹介したが、エルニーニョ現象とはそれとは別のお話だ。別の話ではあるが、海水温の変化が如何に自然にとって脅威であるか、気象環境を一変させるかと言う問題に関してはどちらも共通している。


まず。左の写真を見ていただきたい。Wikipediaの写真を引用したものだが、赤い部分は「例年より温度が高い部分」でであり、明らかに東太平洋に集中している。これがエルニーニョ現象だ。

エルニーニョ現象とは、「海水温が通常より温かい」だけではなく、暖かくなる場所もほとんど決まっている。

本来、赤道上の海の温度は、太平洋西側の海の方が温度が高く、東側の方が温度が低い。

それが、エルニーニョ現象では逆になる。

逆になると何がマズいのだろうか?

海水温変化による自然界への影響

海が暖かくなるのが何故問題なのだろう?一見すると、天気と何も関係ないように思える。しかし、これは非常に大きな問題なのだ。

雲のでき方を思い出して欲しい。そう、海の表面が太陽に暖められ、蒸発した水分が冷やされ雲になる。その海水温が温まる場所が変われば、雲が出来る場所も変わるということになる。さらに、海が熱せられて発生する上昇気流の場所も通常とは異なる場所となり、低気圧の位置も変わってくる。つまり、海の温度が変われば、気圧配置や雨量の変化が起こり、太平洋上の気象が変化すると言うことになる。

変わるの気象だけではない。流体は基本的には温かい方から冷たい方に流れ、これが海流や風を生むのだが、これにも影響が出る。方向が真逆になったりすることは無いのだが、いつもより流れが弱くなったり、海流の分岐点がはっきりしなくなる。そうすると、海流を使って移動する海の生き物にも影響が出る。

太平洋上の気象が変われば、東アジアや南北アメリカ大陸の気象に影響が出る。東アジアや南北アメリカの気象が変われば、当然西アジアや大西洋上の気象にも変化が生まれる。風が吹けば桶屋が儲かるとか、バタフライ効果とか、そう言った類の話だ。経済も、空気も、海水も、流れのあるものはその流れの一部が変わるだけで、流れ全体に影響が出る。地球温暖化による異常気象などもその一つだ。

エルニーニョ現象の原因と南方振動、対になるラニーニャ現象

エルニーニョ現象の発生は、貿易風(赤道上で西に吹く風)が弱まることに原因がある。貿易風というのは、赤道上の海水が暖められる事で発生した上昇気流が、地球の自転の影響を受けて、西側への風に変わる事で一年中西側に向かって吹いている風だ。

赤道上の海水は太陽の影響で温かい。温かい海水は西向きに吹く風があるお陰で、東側で暖められた海水は風に吹かれて西側へ集まるようになっている。それが、弱まってしまう事で、いつもより東側の温かい海水が東側に残ったままになるのだ。要は、扇風機の風が弱まって、扇風機の側にいても涼しくならないと言うことだ。

何故、貿易風が弱まるのかは分かっていないが、貿易風は周期的に強まったり弱まったりしており、これは南方振動と呼ばれていて、気象学に置ける難問の一つとなっている。ちなみに、貿易風が弱まるとエルニーニョ現象が起こり、貿易風が強まった場合はエルニーニョ現象とは全く逆の現象である、ラニーニャ現象(ただでさえ低めの東太平洋の海水温が、更に低くなる)が起こる。

南方振動は、振動と呼ばれているだけあり、強まった後は必ず弱まるため、南方振動の影響を受けて発生するエルニーニョが起これば必ずラニーニャが起こると言える。そのため、南方振動の原因が解明できれば、エルニーニョ現象を発生を完全に予測することができるようになる。それはつまり、異常気象を予測できるようになるということでもあり、気象予報の大きな発展が見込める。

日本での気象変化

エルニーニョ現象の原因と影響についてはわかったが、日本はどうなのだろう?

異常気象とはいうけれど、暑くなるのか寒くなるのかは簡単には言えない。はっきり言って場所と時期によって異なるのだ。気象庁の統計では、以下のようになっている。

 

このグラフから分かることは、春は暑く、夏は涼しく、秋は沖縄以外は暑く、冬は暖かい。

なんとも言えないが、忘れてはいけないのが、この数字は例年に比べて暑いか寒いかであるから、春が夏より暑いとかそう言うことではない。

実を言うと、このエルニーニョ現象で一番困るのは欧米の普段は暑過ぎない・寒過ぎない地域の国だ。あくまで傾向に過ぎず、普段と気候が違うというだけで、自然界の動植物からすれば大問題なのだが、自身の環境をコントロールできるようになっている人類の場合は、短期的には過ごしやすいか否かの問題であるとも言える。

日本は世界的に見ても、気候の変化が激しく、本来太平洋の気象影響をモロに受けている国だ。それが、エルニーニョ現象によって、なんと気象の変化が緩やかになってしまう傾向にある。夏は涼しく、冬は暖かいのはこのためだ。

エルニーニョ現象が引き起こす異常気象は、確かに”異常”気象だが、“普段より過ごしやすい異常”気象。日本にとってはありがたいことなのかもしれない。

ちなみに、この逆のラニーニャ現象は、過ごしにくくなる気象の変化が発生する。そのため、記録的な猛暑・寒冬は、この時に発生していることが多い。2013年、去年の春に関東で雪が降ったが、実はこの時ラニーニャ現象が発生していた。あまり知名度が無いため報道がされないものの、エルニーニョ現象が報道されたら、警戒すべきはその翌年だと言っても過言ではない。

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