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電池の種類、化学・物理・生物(バイオ)を利用した多彩な原理-電池のしくみ(1)

皆さんは、電池と言われて何を思い浮かべるでしょうか?

単3電池?スマホのバッテリー?それとも太陽パネル?
どれも電池で間違いありません。しかし、その原理は電池の種類によって大きく異なっています。

本記事では、今私達の世界に存在する様々な電池についてご説明していきたいと思います。

電池とは?

今更説明することではないのですが、電池というのは電気エネルギーを生み出す装置の事です。

電流を生み出して、電気を作っているので発電機器と言っても良いのですが、一般的に発電機と言うとタービンの回転などの物理的な運動エネルギーを電磁誘導などを用いて電気エネルギーに変換した発電機が一般的で、特徴として、整流装置などを使わない限り、取り出される電流が「交流」になることです。

一方、電池と呼ばれる機器は電気エネルギーの取り出し方は様々ですが、大半が「化学・電磁・熱エネルギー」などを変換して電気エネルギー取り出しており、全て「直流」の電流を生み出しているのも特徴です。

厳密な分類とはいえないかもしれませんが、少なくとも本記事で扱う電池は全て「運動エネルギー」以外のエネルギーを電気化しており、取り出される電流が全て直流のものをもって「電池」と定義します。

発電機にしろ電池にしろ、共通しているのは、「電気エネルギー以外のエネルギー」から「電気エネルギー」を取り出すという事です。

電池の原理を2つに大別する

電池の発電原理は、大きく分けて2種類存在します。それは、「化学電池」と「物理電池」です。

ここに「生物(バイオ)電池」を加えて、理科の科目よろしく「化学・物理・生物電池」と大別する事もできますが、生物電池は厳密に言えば化学的反応による発電を利用しているので、化学電池と言う分類になります。しかし、後述するように、生物電池は電気を取り出す物質が一般的に見られる化学電池とは大きく異なるため、将来的には生物電池は化学電池とは別に扱われるかもしれません。

さて、本記事では、電池を化学電池と物理電池に大別した上で、さらに細かく分類していきます。

<化学電池>
  一次・二次電池
  燃料電池
  生物電池

<物理電池>
  光電池
  熱電池
  原子力電池

一次電池と二次電池は別種と分類されることが多いのですが、この二つは原理的に違うと言うよりは「製品・用途的な違い」が大きいために分類されていると言う側面が強いです。実質的な原理は殆ど同じであるため、ここでは一つの種類として分類いたします。

化学電池の種類

化学電池と言うのは、物質の化学的特性を利用して発電する電池の事を指します。要は、化学反応を利用して電気を取り出している電池の事です。

電気を取り出すと言うのは電気エネルギーのことですが、化学電池は「化学エネルギー」を化学反応を使って「電気エネルギー」に変換して取り出しています。

詳しくは、別途解説する予定です。

一次・二次電池

一般的に「電池」と言ったら、一次電池や二次電池の事を指します。使い捨ての乾電池も、スマホのリチウムバッテリーも、自動車に積んである大きなバッテリーも、全て一次電池か二次電池にあたります。

また、一次電池と言うのは「充電が出来ない、もしくは充電すると破損する電池」の事で、所謂使い捨てタイプの電池の事です。

二次電池と言うのは「充電して繰り返し使える電池」の事で、「充電式」とついたらそれらは全て二次電池と言う事になりますね。原理的には殆ど同じ電池であり、電池の構造や使われている電極の性質によって充電可能かどうかが分かれます。

ただ、充電というのは外部から逆向きに電流を流して放電前の状態に戻すことなのですが、一次電池であっても充電自体は可能なのです。問題は、その際に気体が発生して内圧が上がって中身が漏れだしたり、熱が発生して焼損したりする可能性が高いため、充電すると危険なため、「充電不可の一次電池」と言う扱いになるのですね。

燃料電池

燃料電池と言うのは、特定の燃料(水素やエタノール)が燃焼する際に電子を放出する性質を利用して電気エネルギーを取り出すもので、一次・二次電池との最大の違いは燃料を投入し続ける限り電気が発生するという点にあります。

電気自動車と燃料電池車の違いを見てみるとその違いがよく分かるでしょう。

電気自動車は太陽電池やガソリンエンジン、もしくは電源装置を使って「電池に電気を蓄えて使う」のに対して、燃料電池車はガソリンを入れる様に「投入した燃料をその場で使う」ことで電気を生み出しています。

燃やした燃料は使えなくなるので、極端な言い方をすると一次電池を大量に集めたモノだと考えても良いかもしれません。ちなみに、水素燃料を使った電気自動車は燃やすと水が出てきますが、水に電気を流すと水素と酸素が発生します。言ってみれば、これがある種の充電なのでしょうね。

生物(バイオ)電池

生物電池というのは、有機物を使って電気エネルギーを生み出す電池です。原理的には人間の体で使われている発電原理と同じです。

神経は電気信号を使って情報のやりとりをしていますが、この電気信号は当然生体エネルギーを使って作られています。ちなみに、生体エネルギーと言うのは、別記事で説明しているようにブドウ糖などから作られますが、生体電池に必要なのはブドウ糖などの有機的な物質です。

電気の発生自体はカリウムやナトリウムの化学反応を使っているので、化学電池と言っても良いのですが、その化学反応を起こすために必要なのがブドウ糖やデンプンなどの生物的栄養源なのです。

この生物電池の鍵になるのがこの化学反応を促す酵素や微生物で、これらの有機物を使って作られた電池を動かすためには、燃料代わりに砂糖水を投入することになります。

このように、化学反応を使うという点で同じだと言っても、非常に多くの種類があることがわかります。しかし、電気エネルギーを取り出すために必要なのは、化学反応だけではありません。

物理電池の種類

物理電池と言うのは、物質の物理的性質を利用して電気エネルギーを取り出すものです。

物理的性質と一口に言っても様々なのですが、この場合大きく分けて「熱エネルギー」「電磁的エネルギー」に分けられます。物理電池は、これらの物理的なエネルギーを電気エネルギーに変換する機器と言えるでしょう。

光電池

所謂、太陽電池です。太陽光は強力な電磁波でもありますので、この電磁波を電気エネルギーに変える機器と言えるでしょう。

一部の物質が強い電磁波を受けると、物質内部の電子が強いエネルギーを持ちます。そして、一定以上のエネルギーを持った電子は一箇所に留まらない自由電子となるのですが、プラスとマイナスの半導体の内部でその現象が起きると、その電子はプラス方向に移動を始めるのです。

つまり、流れる電子がない物質に光を当てて流れる電子を作り出す電池ということが出来ますね。

熱電池

熱電池は、熱エネルギーを電気エネルギー変える電池です。

実は、同じ物質の中で片側が熱くて片側が冷たいというような、一定の温度差があるとそこにわずかに電流が流れると言う現象を利用しています。

放っておくと熱が全体に広がって電流は流れなくなりますが、電流が流れると電気抵抗で熱が発生することもあり、熱の広がりに電流が寄与していると考える事もできるでしょう。

発生する電力自体は小さいものの、小型で長持ちするため、人工衛星などで使われています。

原子力電池

原子力電池と言っても、大元のエネルギー源が「原子力」と言うだけで、実際には光電池や熱電池の原理を使って電気エネルギーを発生させています。

というのも、放射性物質は放って置くと核崩壊を起こして熱と電磁波を発生させるため、それを光電池や熱電池を使って電気エネルギーに変えれば、原子力電池の完成です。

核崩壊と言うのは言ってしまえば小さな核分裂です。放射性物質と言うのは、核爆弾や原子力発電所じゃなくても、非常にゆっくりと核分裂しながらエネルギーを発生しているので、これを上手く使って電気を作ったのが原子力電池ということです。

放射性物質の選び方次第で、何十年という単位でエネルギーを発生し続けるので太陽の光が届かないほど遠くで活動する人工衛星や宇宙探査機などで使われています

原理の違いとエネルギー

詳しいしくみについては別の機会にご説明していきたいと思いますが、本当に沢山の原理の電池があることが分かります。

一次・二次電池については昔から存在する電池で、今でも広く使われていて進歩し続けています。また、用途に合わせて熱電池や光電池、そして原子力電池なども幅広く使われています。現代では燃料電池が車などに搭載されるようになり、エコロジーな電池として生物電池の研究も進んでいます。

電気は私達の生活に欠かせないエネルギーですが、存在が認知され、実際に使われ始めたのはここ200年前後のことでしかありません。たった200年の間に電池が生まれ、進歩し、現代の姿になりました。

今では電池なしで生活するなんて想像がつきませんが、生物電池などは人の食べ物からも発電できるそうです。理論上はご飯一杯で単三電池60本分の電力を取り出せるそうなので、いつの日か人の体内に電池が埋め込まれ、人に繋いで充電する人間電池なんて電池が生まれてしまうかもしれませんね。

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