2015年6月1日に改正道路交通法が施行され、自転車に関する新たな取り締まりのルールが規定されました。
この改正道路交通法が施行以降、次々に自転車の運転者が摘発され、既に複数回摘発されてしまっている運転者もいるようです。一体、この改正道路交通法では何が変わり、自転車の運転者は何に気をつけて運転していくべきなのでしょうか?
本記事では、6月1日に施行された改正道路交通法の中で、自転車の運転に関わる重要なポイントについてご説明していきます。
改正道路交通法で加わった新たなルールとは?
6月1日施行の改正道路交通法で定められたのは、「悪質な交通違反を行い、3年間で2回以上摘発された運転者には自転車運転講習を義務付ける。従わない場合は、5万円以下の罰金刑に処す」と言うルールです。
(改正道路交通法_シンク出版)
対象となる年齡は14歳以上。また、この講習の対象となる交通違反は以下の14項目。
- 信号の無視-(道路交通法第7条違反)
- 通行禁止箇所の走行-(同8条違反)
- 歩行者用道路を徐行せずに走行-(同9条違反)
- 走行区分に従わないで走行-(同17条違反)
- 路側帯通行時に歩行者の通行を妨害-(同17条違反)
- 遮断踏切への立ち入り-(同33条違反)
- 交差点の進行時に優先車両を優先しない-(同36条違反)
- 交差点の右折時に直進車や左折車両を優先しない-(同37条違反)
- 環状交差点で進行帯や左折などのルールを守らない-(同37条違反)
- 一時停止の無視-(同43条違反)
- 歩道側を危険な方法で走行する-(同63条違反)
- ブレーキに不具合がある状態で走行する-(同63条違反)
- 酒気帯び運転-(同117条違反)
- 危険と思われる方法での運転-(同70条違反)
[太字は、摘発例の多い事例]
ちなみに、これらは全て今までの道路交通法でずっと規定されていたことであり、新たに規定されたものではありません。単に、これらの違反をする自転車の運転者が、「自転車の運転に関して安全意識が欠如している」と判断される要素になるということです。
「なんだ。講習を受けるだけか」
とバカにしていると、痛い目に遭います。
というのも、講習は義務ですが3時間の講習で5700円取られます。無視すればそれ以上の罰金です。事実上、最低5700円の罰金と講習だと思った方が良いでしょう。
また、歩行者に怪我を負わせる寸前、もしくは怪我を負わせてしまった場合、改正道路交通法とは関係なく刑事罰が課せられる可能性があります。3時間の講習も5700円も痛くないからといって悪質な運転を繰り返していると、刑事罰で摘発されることもあるでしょう。
普通の人は一度摘発されれば悪質な運転は控えますが、今までは記録にも残らないし罰則もないならと気にせず運転する人が多かったのです。かといって、片っ端から自転車の交通違反に刑事罰を課していくわけにも行きませんでした。
しかし、「自転車運転者講習」と言う制度が定められたことで、自転車の運転者に対する警察の対応が大きく変わっていく事となりました。
悪質運転者の摘発が増えた理由
この新しい道路交通法が施行されて以降、警察は悪質な運転者をここぞとばかりに摘発していくようになりました。
「〇〇をしてはいけない」というような、新しい交通ルールが増えたわけでもありませんし、違反者を摘発しやすくするルールが増えたわけでもありません。単に、「違反したら講習を受けてもらう」というだけです。
それなのに、何故警察はすごい勢いで検挙しているのでしょう?
理由は幾つかありますが、一つには「交通違反の重み」が変わったことがあります。
今までは、注意された運転者も「近く警官がいたなんて運が悪かった」程度に考えていたのが、以降は「次にやったら講習を受ける羽目になる」と言う事で気をつけるようになります。また、「自転車運転者講習」と言うのは、事実上「交通違反者講習」のことですので、大抵は平日にしか受けられません。会社で有給を取って「違反者講習」を受けるというのは、5700円と3時間の講習よりも重い罰となるでしょう。要するに、「罰則」のある交通違反ということで、運転者側も真剣に受け止めるようになるのです。
もう一つが「記録に残る意義」です。
記録が残り、通知が来れば運転者側も「次は気をつけよう」となります。また、警察としても「検挙率」や「成績」に残る業務となり、善意での「注意」よりも積極的になることでしょう。自動車の速度違反でも、いつもは見逃していたけれど強化月間で検挙率を上げるために摘発するなんてことが言われますが、自転車でもそう言ったことが起こるかもしれません。ちょっとズルい気もしますが、交通違反をするほうが悪いので、警察に文句をいうことは出来ませんね。
そして、忘れてはいけないのが「自転車事故の増加対策」。
昔と比べると公共交通機関が整備されたために車の利用者が減り、代わりに自転車の利用者が増えました。さらに、自転車の種類や性能も上がって、幅広い層に自転車が使われるようになっています。結果として、自転車の事故やマナーの悪化が目につくようになり、対策が求められていたのです。ようやく有効と思われる制度が定められた事で、今まで溜まっていた鬱憤を晴らすように警察は悪質運転者の摘発に乗り出したのですね。
(次ページ: 何をすると摘発される?)
何をすると摘発されるのか?
飲酒運転や信号無視は理解できますが、その他には何をすると摘発の対象となるのでしょうか?
実は、一番の曲者は「危険と思われる方法での運転」です。スマホ弄りや音楽を聞きながらの運転もこれに当てはまり、沢山の運転者が摘発されています。
以下、自転車の運転者がやりがちな交通違反。
- イヤホンやヘッドホンの使用
- スマホや携帯の使用
- 傘さし運転
- 手放し運転
- 飲酒運転
- 信号無視
- 二人乗り運転
- 無灯火運転
- 右車線側の路側帯走行(逆走)
- 歩道で徐行しない
- 歩行者の妨害
- スピードの出しすぎ
- 蛇行やふらつきながらの運転
イヤホン、スマホ、傘など「ながら運転」というのが自転車の運転者には多く、注意するべき点といえます。
また、歩行者や歩道に関する交通違反も多く、歩行者がいるのに速度を出したり、狭い歩道に入り込んで歩行者の歩行を妨害する事例が数多く報告されているようです。
自転車は道路交通法上、軽車両と言う扱いであり、原則としては車道を走らなければいけません。ただ、「自転車は歩道を走るなと言われても怖い」と言う人が多いはずです。
そのため、歩道を走れるケースが以下のように規定されています。
- 道路標識等で規定されている場合
- 運転者が児童・幼児、70歳以上の高齢者、一定の障害を持つ身体障害者
- 車道や交通の状況からみてやむを得ない場合
標識でちゃんと規定されているケースは少なく、小さな歩道ではまず見られません。また、運転者が幼児や高齢者と言うのは殆どの運転者に当てはまりませんので、大抵の人が歩道を走行する場合は「やむを得ない」場合に当てはまってなければならないことになります。
歩道を走ってもやむを得ないとされる場合の例。
- 道路が一部工事中
- 道路側に駐車車両がある
- 道路の左側の路面状態が悪い
- 道路の交通量が多い
- 車の流れが速すぎる
- 車道が狭い
- 危険な運転者がいる
最も多いのは、「交通量が多く、車の流れが早い」ケースで、歩道を走ることが多くなるでしょう。
しかし、歩道を走れるような場合だったとしても、「歩道は歩行者優先」であり、歩行者の歩行を妨害する様な行為は「交通違反」とされますので注意しましょう。特に、歩道をやむを得ず走る場合でも徐行の義務があります。歩行者がいなければ良いのですが、歩道では歩行者がどこから出てくるか分かりません。いつでも止まれる速度でゆっくり走行しましょう。
また、それ以外のケースで歩道を通行したい場合は、自転車から降りて自転車を押して歩くようにするとよいですね。
改正道路交通法で自転車に対する取り締まりが厳しくなったのを期に、ぜひ自転車の安全運転について考えて見てください。