2015年6月1日より改正された道路交通法で、悪質な自転車運転者に対する講習の義務付けや罰則の規定が追加されました。その結果、警察の取り締まりも厳しくなり、多くの自転車運転者が検挙されているようです。
何年も運転している習慣が間違っていたり、道路交通法違反だとは知らずに違反しているケースも多く、多くの自転車運転者を困惑させています。
そこで、自転車の運転者がやりがちな15の違反をピックアップして、安全運転をするためのポイントをまとめてみました。
自転車の運転で良くある交通違反
実は、交通事故の3割が自転車が関係する事故だと言われています。
遅い自転車が車道を走ると車の運転者に邪魔だと思われますし、かと言って歩道を走ると歩行者に怖がられてしまいます。自転車は歩道と車道の板挟みに合うようなポジションにいるにもかかわらず、誰にでも簡単に乗れる車両と定めれており、安全意識の薄いまま自転車を使うケースが多いようです。
そのため、実は危険運転なのに本人が気づかないまま運転してしまうと言うケースが多発しています。
実は、以下の15の運転は全て「道路交通法違反」となり、摘発の対象となります。
- イヤホンやヘッドホンの使用
- スマホや携帯の使用
- 正当な理由なく歩道を走行
- 無灯火運転
- 二人乗り運転
- 傘さし運転
- 右車線側の路側帯走行(逆走)
- 歩道で徐行しない
- 蛇行やふらつきながらの運転
- 車両通行止め区間の通行
- 信号無視
- 飲酒運転
- 手放し運転
- スピードの出しすぎ
- 歩行者の妨害
中には、「えっ!? それも交通違反なの?」と思うような交通違反もあるはずです。そこで、これらの交通違反に関して、その理由と安全運転のためのポイントを説明していきます。
これ以外にも交通違反になる運転は沢山あるのですが、やりがちな交通違反だけをピックアップしてみました。
まず、法的な区別は特にありませんが、これらの違反を便宜上「軽度の悪質運転」「中程度の悪質運転」「重度の悪質運転」に分類してみましょう。
「軽度の悪質運転」 : 一番やりがちな交通違反
イヤホンやヘッドホンの使用-使うなら片耳で
耳を覆うヘッドホンや静音性の高いイヤホンを両耳に付けて使用するのは交通違反です。
イヤホンやヘッドホンを使いながら運転すると、当然車のエンジン音やタイヤ音は聞こえませんし、歩行者や運転者の声なども聞こえません。自動車と違って自転車にはミラーもないので、背後から来る車両の存在を確認するには音が頼りになります。
また、大音量で音楽などを聞いているとパトカーのサイレンやクラクションなども聞き漏らすかも知れません。小さなイヤホンを片耳だけで使用する場合は交通違反にならないと言うケースが殆どですが、「両耳で聞かないように」と言う注意を受けることはあるようです。
片耳で使っていても、片側からの音が聞こえにくいことには変わりませんので、使わない方が良いですね。どうしても使いたい時は、音量を下げて耳に密着しない遮音性の低い物を使いましょう。
スマホや携帯の使用-止まっていてもダメ!
自転車を運転しながらのスマホや携帯の使用は交通違反です。
走行中にスマホを使うと言うのは危険過ぎるので「軽度」とはいえませんが、気をつけたいのは停車中にスマホを使うケースです。
止まっている時ぐらい良いじゃん。と思うかもしれませんが、自転車に跨って乗っている間は自転車の運転中とみなされます。足をついていても、スマホを使えば交通違反です。スマホを使いたい時は、自転車から降りて使わなければなりません。
まず、道路で停車してスマホを弄るのは他の車両から見て危険ですし、狭い歩道などでも歩行者の邪魔になっているのに気づかない可能性があります。何より転倒のリスクが高まるので、自転車に跨った状態でスマホや携帯を使うのは止めた方が良いですね。
正当な理由なく歩道を走行-自転車は車道を走る!
自転車は原則として車道を走るものなので、歩道を走行してはいけません。
車道が混んでいる時やスピードが早い時、車道に障害物がある時など、自転車が車道を走るには危険と思われる時だけ歩道を走れますが、それ以外のケースで歩道を走行すると交通違反です。
子供や高齢者はそれにかかわらず歩道で走行できますが、障害などがない健常者は車道を走らなければなりません。
車道が怖いから普段から歩道を使うという人は要注意です。「怖いと思ったから歩道を走った」としても、客観的に見て「危険ではない」と判断されれば交通違反になるのです。
かなり微妙な判断なので「明らかに危険ではない車道」でも無い限り捕まることはありませんが、車道や路側帯が広く、制限速度も遅いような道路であれば、間違いなく自転車は通行できると判断されます。
とりあえず、車道を走るようにして、車がすごい勢いで隣を通り過ぎて行くようなら歩道に移りましょう。
無灯火運転-自分が見えても意味が無い
夜間に無灯火で運転するのは交通違反です。
「別に俺は見えるからライトはいらない」と言うのは大間違いで、ライトと言うのは他の車両や歩行者に自転車の存在をアピールするための道具でもあります。
つまり、無灯火の自転車は他の人から見えないので危ないのです。自転車の接近に気づかずに車がハンドルを切ったり、歩行者が動いたりすれば即事故に繋がりますので気をつけましょう。
二人乗り運転-力自慢でもダメ
自転車の二人乗りは交通違反です。
自治体によっては条例で補助席を付けて「子供」を乗せる事ができますが、基本的には二人乗りはできません。ドラマや漫画のワンシーンではよく見る光景ですし、そうでなくても時折見ることがあるでしょう。
しかし、自転車は人力で動く車両です。人が増えればそれだけ動きが鈍くなりますし、不安定になり事故も起きやすくなります。ましてや、その結果ふらふら蛇行するような運転になれば、「軽度な違反」では済みません。
二人一緒に移動するのなら、自転車を押して歩くようにしたいですね。
(次ページ:見逃せない交通違反)
「中程度の悪質運転」 : 見逃せない交通違反
傘さし運転-片手運転は論外!
雨の日に傘をさして運転するのは交通違反です。
自転車は片手で運転することもできますが、それは「方向変換や停止」する場合や、他の車両に何らかの合図を送るために片手をハンドルから離すケースだけです。それ以外に正当な理由なく、片手を離して運転するのはいけません。
傘をさして運転するのは間違いなく正当な理由にはならず、雨天時に運転する場合は雨合羽を着用することになります。
そもそも、傘は風の影響を強く受けますし、視界も悪くなります。歩行者や他の車両からすれば自転車の動きが予測できず、かなり危険な運転と言うことが出来るでしょう。
右車線側の路側帯走行-危険な逆走
自転車は車道の左側を走行しなくてはいけません。
意外に知られていないのですが、歩道や専用通行帯が無い限り、自転車は車道の左側を走行する義務があります。そのため、車道の右端を自転車で走行するのは交通違反です。
車が左側を走っているので、車からすると自転車が正面から来る形になり非常に危険です。以前は、広い路側帯に限り許可されていたのですが、あまりにも事故が多いので禁止されました。
左側を走る自転車を後ろから追い越す場合であれば、多少自転車がふらついても反応できますが、正面から来てドライバーも反応できません。速度差がある分、大事故にも繋がるため、注意が必要ですね。
歩道で徐行しない-歩行者に気をつけること
歩道で徐行しないで走行するのは交通違反です。
徐行というのはすぐに止まれる速度ですので、かなりゆっくりとした速度です。自転車が倒れないで走れるギリギリのラインかもしれません。
歩道は歩行者のための道路であり、本来は自転車が走行するスペースではありません。また、歩行者と言うのは歩道から見えない狭いスペースから急に現れることもあり、すぐに止まれるスピードで走行することが必須です。
何らかの理由で歩道を走る場合、いつどこで歩行者が現れても止まれる様なスピードで走行しましょう。
蛇行やふらつきながらの運転-他の違反と合わせてダメ
蛇行やふらつきながらの運転も交通違反です。
自転車の走り始めに一瞬ふらつくのは仕方ありませんが、故意に蛇行したり、不安定な自転車で走行し続けたりするのは非常に危険です。特に、片手運転や手放し運転、二人乗りの運転者に良くあるケースで、他の交通違反と関係していることが多いです。
ふらつきながらの運転は、他の車両や歩行者にとって危険なだけではなく、転倒のリスクもあるのでやめましょう。
車両通行止め区間の通行-標識の意味、知ってます?
車両通行止め区間の通行は交通違反です。
上のような標識を見たことありませんか?
これは車両通行止めを表していますが、「車両」には「自転車」も含まれますし、標識は自転車にも歩行者にも意味のあるものです。
「自転車には関係ない」と思って、通ってしまうと思わぬ危険に遭遇します。
多くの場合、道路が狭い場所、歩行者が多い区間や児童・高齢者が多く利用するような区間に設置され、自転車も通れません。また、単に道路が狭いだけで自転車は通れるような場合は、「軽車両は除く」と言う補助標識も付いているので、「軽車両」には「自転車」も含まれていることもあり、そう言う場合には通行できます。
自動車の免許を取得したことがある人なら常識ですが、自転車には免許が要らないので知らない人も多いですよね。
「重度の悪質運転」 : 絶対にやってはいけない違反
信号無視-右左折に注意!
信号無視は交通違反。言うまでも無いことですね。
ただ、気をつけたいのは、自転車は歩道を走ることもあるため、「歩道の信号」も「車道の信号」も有効だということです。
まっすぐ進む分には、歩道の信号も車道の信号も基本的には同じなので問題ありません。
しかし、よくあるのが車道の信号が赤の時に右左折をしてしまうケース。自転車は「二段階右折」と言って、信号が青の時に交差点の奥に進み、右側の信号が青になった時に右側の道路に移動すると言う右折方法が義務付けられています。また、当然ですが左折の時も、車道の信号が青になってからの左折になります。
ところが、自転車は小回りが効くからと言って、車道の信号が赤の時に歩道に入って左側の道路に移動したり、横断歩道を使って右折したりするケースがあります。これは紛れもない交通違反なのですが、自転車を歩行者感覚で使う人が多いため、違反者が後を経ちません。
確かに、自転車は歩道を走れますが、「正当な理由」が必要です。右左折のため、と言うのは正当な理由にはなりません。
ただし、ポイントがあります。自転車は降りれば歩行者です。そこで、右折時に車道の信号が赤でも、自転車から降りて横断歩道に入り、自転車を押しながら歩行者として横断歩道を利用すれば交通違反にはなりません。左折の際にも、自転車を降りて左側の歩道に入り、安全確認をした上で自転車に乗って車道に入れば左折ができます。
ちなみにこれは手押しで歩行者になれるバイクでも使えるテクニックなのですが、「エンジンを切らないといけない」ので使っているドライバーは少ないですね。
(次ページ:飲酒運転や歩行者の妨害は交通違反)
飲酒運転-ダメなのは自動車だけじゃない
飲酒運転や薬物使用での運転は交通違反です。
自動車がダメだから自転車で居酒屋に行こうと思ったら大間違い。判断力が低下した状態で運転するのは非常に危険であり、歩行者にぶつかってしまったり、自分が車に突っ込んでしまう可能性が高いです。
自動車じゃなければ大丈夫だと思っている自転車の運転者が多いですが、自転車に引かれて死亡する事故も多数あります。ただ、それ以上に自転車の運転手が自動車に引かれて亡くなるケースが多く、自分の身を守るためには交通ルールは守ってほしいところです。
手放し運転-論外の交通違反
手放し運転は問答無用で交通違反です。
自動運転車でも無い限り、手を離しての運転は危険です。バイクや自転車は車体を傾けることで右左折ができるので、手を離しても運転できるからと手放し運転をする運転者もいますが、これはれっきとした交通違反なのです。
普通に運転していて、手を離して運転しなければいけないケースはありません。咄嗟に車両をコントロールできずに事故に繋がるだけではなく、運転者としての意識も問われます。
例え、上手く運転できていたとしても警察官からすれば「要注意人物」として摘発される可能性が高いので止めましょう。
スピードの出しすぎ-車道じゃなくて歩道に注意
自転車にも速度制限は当てはまります。出し過ぎたら違反です。
とはいえ、「自転車」に対する制限速度と言うのは無く、「軽車両」としての制限速度が当てはまり、多くの場合自動車と同じ制限速度が適用されます。
なので、ロードレーサーでもない限り、自転車がスピード違反の切符を切られることはありません。
一方で、歩道に関してはスピードの出しすぎで交通違反になることはあります。それ以前に、歩道では「徐行」の義務があるので、徐行しなくてはいけません。「歩道で徐行しない」と重なる部分もあるのですが、徐行どころか車道のように歩道を使っているケースがあります。
確かに車道を走って自転車が速度違反になることはありませんが、バイクや自動車が車道の感覚で歩道を走行したら「暴走」です。それと同様に、車道のつもりで自転車が歩道を走ったら暴走です。
歩道を徐行しない(ちょっと速い)程度ならまだ良いのですが、猛スピードで疾走することだけはしないでくださいね。
歩行者の妨害
歩行者の歩行を妨げれば、その時点で交通違反になります。
妨げると言うのは、「歩行者が自転車のせいで止まったら」妨害です。極端な話、大きく避けて歩いたら妨害になり得るのですが、それは仕方のない部分もあるでしょう。
少し前を横切ったり、歩行者がゆっくり歩いているので避けて貰う、くらいなら良いのですが、自転車がスピードを出していて「歩行者がびっくりして避けたり」、鈴を鳴らしながら「避けさせながら走行する」というのも歩行者の妨害にあたります。
歩道ならもちろん歩行者優先ですが、車道歩いている歩行者にも注意が必要です。
自分がスピードを出せるからと言って、我が物顔で道路を走るような真似は止めましょう。
まとめ
自転車の違反と言うのは、大半が「歩行者のつもり」で運転していることにあります。
しかし、自転車と言うのは「車」であることを理解して下さい。ある意味、歩行者にぶつからないように恐る恐る走っている自動車に比べれば、容赦無く歩行者の側を高速で通り過ぎる自転車の方が怖いこともあります。
自転車の違反ではイヤホン着用などの違反も多いようですが、やはり危険なのが歩道を走って歩行者に迷惑を掛ける交通違反です。
自転車が車道を走るのも怖いかもしれませんが、自動車の運転者はみなさん交通ルールを学んで運転していますので、自転車が車道を走るべきであることを知っています。ただ、自転車の運転者にも悪質な運転者がいるように、やはり自動車の運転者にも悪質な運転者と言うのは存在します。
自動車の運転手も自転車の事情を理解して、同じ車道を共有する車両として交通ルールを守って運転してほしいものですね。