サイトアイコン Stone Washer's Journal

除湿と乾燥と水蒸気:除湿機はどのようにして空気中の水分を集めているのか?

湿度と言うのは、気温と空気中に含まれる水分の量によって変化します。洗濯物を乾かしたり、過ごしやすい湿度に変えたりする際には気温や空気中の水分量を変化させる必要があります。

エアコンや暖房で気温を変える事は出来ますが、暑い日に温度を上げるわけにはいきませんし、寒い日に温度を下げるわけにはいきません。すると、湿度の調節は必然的に空気中の水分量を変化させる事によって行うことになります。

では、除湿するために空気中の水分を集めて下さいと言われたらあなたならどうしますか? 本記事では水の性質と共に、除湿機の仕組みついてご説明します。

2023年8月21日加筆

[–]

関連記事:
冬の乾燥と暖房の乾燥の違い?人が乾燥を感じる理由
スチーム式、気化式、超音波式、ハイブリッド式の仕組みと特徴

除湿に最適な二つの方法

空気中の水分を集めると言っても、手やコップで空気を掬って集めるわけには行きません。水の性質を利用した特別な方法が必要になります。

そこで、考えられるのが「温度を下げて結露させる方法」と「乾燥剤を使って水分を集める方法」です。

結露というと、冬に窓が結露してびしょびしょになったり、夏にコップの周りが結露してテーブルが濡れるあれです。これは空気中の水蒸気が冷やされて一箇所に集まり、液体の水になってしまう現象です。また、乾燥剤というとお菓子箱によく入っているシリカゲルなどのことで、乾燥剤は水を中に溜め込んで逃がさないようにする性質があります。

一般に使われている除湿乾燥機はほぼ間違いなくこのどちらかの方法を使っていて、除湿するとなったらほぼこれに似た原理の方法を使うしかありません

温度変化を使ったコンプレッサー(圧縮)方式

中学の理科で習いますが、物質は固体→液体→気体の順に温度が高くなり、温度が高いほど高いエネルギーを持っています。熱エネルギーの量が増えると固体が液体に、液体が気体になる一方で、エネルギーが減ると気体が液体に、液体が気体になりますよね。

今さら何を言うんだと言う話ですが、結露を利用した除湿と言うのは要はそれです。

常温では、空気中の水分は液体になったり気体になったりを常に繰り返しています。湿度が温度によって変化するのは、この「液体→気体」「気体→液体」の現象の割合が温度によって変わるからだと考えて貰っても良いでしょう。「液体→気体」が極端に減って「気体→液体」ばかりになると結露が起こりますし、逆に「液体→気体」ばかりになると乾いていくのです。

気圧が一定であれば、基本的にはこれは気温の影響で変化します。暖かければ気体になる水分の方が多くなり、寒ければ液体になる水分の方が多くなるのです。この結露と言うのは湿度が局地的に100%になることで発生しますが、湿度は「気温か水分量」によって変わります。つまり、局地的に水分量が増えるか、気温が下がるかすると結露するのです。これを利用して急激な温度低下を作れれば、意図的に結露を起こすことが出来ます

ただ、温める温度変化は「火や電気」を使うことで簡単に発生させられますが、冷やす温度変化は難しいです。冷却グッズのような吸熱反応を使うと言う手もありますが、長時間除湿し続ける事は難しいです。

しかし、一つだけ簡単に出来る方法があります。それは気化熱です。液体が気化する時に周囲の熱を奪いますが、これを意図的に起こすことで物体を冷やせます。人が濡れた体に風を当てると涼しいのは、水分が気化した際に体の熱を奪っているからです。

そして、風で水分が気化して熱を奪うように、液体を気体にしたり気体を液体にしたりする作業は実は温度変化を伴わなくても圧力変化を使えば出来ます。この際の圧力変化を行っているのがコンプレッサーであり、結露を利用した除湿機がコンプレッサー方式と呼ばれるのはこのためです。

コンプレッサー方式というと仰々しいですが、要は「エアコンや冷蔵庫」と同じ原理です。


(除湿機セレクト_価格.COM

冷媒と呼ばれる「液体←→気体」の状態変化が圧力変化によって簡単に起こせる物質を用意し、この冷媒を圧縮して液体にした後に一気に圧力を下げると再び気体になります。そして、気体になった際に周囲の熱を奪うので、これを利用して物(金属や空気)を冷やすことが出来ます。

気体になった冷媒を再び圧縮して液体にすればまた気化熱で熱を奪うことが出来るのですが、実は気体が液体になる時には熱を発しています。つまり、気体になった時に奪った熱を液体になる時に放出するのです。

これを熱を奪った場所でやったらあまり意味がないので、冷媒を移動させて熱を放出しても良い場所で行います。つまり、それが除湿機や冷蔵庫の外側だったり、エアコンの室外機がある室外だったりするのです。

冷房の場合は冷やした空気を室内に送り、奪った熱は室外に放出しているので部屋が冷えますが、除湿乾燥機の場合は湿度の高い空気を冷やして水分を結露させて抽出した後、その空気をそのまま温めて放出することで、冷房のように部屋を冷やさずに除湿する事が出来るようになっています。

つまり、熱を奪って空気を冷やし結露した水を取り除いた後で、奪った熱を空気に返して乾いた状態にして放出するのです。

(次ページ:乾燥剤を利用した除湿)

乾燥剤を利用したデシカント方式

乾燥剤を利用したデシカント方式と言うのは、コンプレッサー方式より理屈はシンプルです。

乾燥剤に使われている物質は、多くの場合多孔性構造・細孔性結晶を持ちます。要は、乾燥剤というのは水分子を蓄える事が出来る孔(穴)が沢山空いている物質です。一度水分子がこの孔の中に入ってしまったら、そう簡単には出られません。

大量に吸収できるような代物ではないですが、空気中の水分を容赦なく吸っていくので乾燥剤としては優秀です。しかし、沢山水分を吸っていくとすぐに吸湿の限界が訪れます。除湿は30分までとかだと困るので、なんとかして乾燥剤が吸い込んだ水分を取り除いて乾燥剤を再利用する必要があります

乾燥剤が吸った水分を取り出すのは難しそうに思われますが、結構簡単です。温めれば水分は勝手に出ていきます。なので、吸い込んだ空気を乾燥剤で吸湿したら、乾燥剤を温めて中の水分を貯水タンクに移せば良いのです。


(除湿機セレクト_価格.COM

デシカント法式の除湿機では、乾燥剤をくるくる回して片側で水分を吸収し、もう片側を温めて水分を抜いています。

水分を抜く際に結露させていますが、温めた空気に含まれている水分にとっては室温でも十分冷たくて結露するのです。

二つの方式のポイント

コンプレッサー方式もデシカント方式も、最終的に「結露させて水を出す」という点では共通しています。しかし、室温の空気を冷やして結露させるか、空気中の水分を乾燥剤で集めてから温めて結露させるかという点でこの二つは大きく異なっています。

どちらも取り込んでいる空気は部屋の空気であり、取り込む空気に含まれる水分量も温度も同じはずです。

この方式の違いを理解するためのポイントは、部屋の水分を冷やして結露させたか集めて結露させたかという点にあります。

コンプレッサー方式では室温をいきなり冷やしていますので、水分量はそのままで温度を下げることで結露させています。一方、デシカント方式では乾燥剤を温めた温風を室温まで冷やした際に結露させていますが、結露時の温度は最初と変わっていません。ただ、含まれている水分の量は違います。デシカント方式は空気中に含まれる水分量を乾燥剤を経由することで増やし、室温に戻した時に余った分を結露させることで除湿しています。

さて、コンプレッサー方式が温度変化を利用し、デシカント方式が水分量を変化させているという点はこれで理解できたかと思います。

除湿というのは、結局のところ「温度」か「水分量」の変化に集約されていて、それさえコントロールできれば除湿機として機能します。

大掛かりな除湿機を使わなくても、お菓子に付いている乾燥剤を大量に集めて扇風機に取り付け、一定時間おきに換気扇を掛けながらフライパンで乾燥剤を温めるというのを繰り返せば除湿は可能(蒸発した水分は換気扇から外へ行く)です。

また、冷凍庫の保冷剤を部屋に置くと結露が起こるのを利用して、結露したらタオルで拭いて、絞った水は捨てるを繰り返すことでも除湿は出来ます。

まあ、普通の除湿機を使った方が遥かに早い事は言うまでもありませんが、理屈がわかれば除湿というのも意外に単純な原理で行われていることが分かるのではないでしょうか。

近年では猛暑対策の一環として、冷房のエネルギー効率を上げるために乾燥剤を活用する試みが行われています。

従来のエアコンは空気の冷却と除湿を行うことで屋内を涼しく快適に保ってくれます。しかしエアコンの構造的に、除湿を行うには水蒸気が水になるまで冷やさないといけません。設定温度以上に冷やさないと除湿ができないので、実は効率が悪いのです。

そこで乾燥剤の出番。

フロリダに拠点を置くブルー・フロンティアという企業は、強力な乾燥剤を組み込んだ効率的な冷却テクノロジーを作り上げました。効率の悪かった除湿作業を乾燥剤に受け持たせることで、従来のエアコンと比べて最大80%の省エネにつながるといわれています。

年々増していく夏の暑さ。快適に過ごすためには、乾燥剤の重要性が一層増していくのかもしれませんね。

モバイルバージョンを終了