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水素エネルギーに未来はあるか?(2):燃料電池車の本当のライバルはガソリン車やハイブリッド車

前回は電気自動車と燃料電池車の性能比較を行いましたが、両者の特性が大きく異なるだということがよく分かったと思います。部分的にこれが優れているという部分があっても、総合的に自動車としてどちらが優れているかという言い方はできないのではないでしょうか?

それもそのはず。

次世代の車として注目されている燃料電池車と電気自動車ですが、実は使い方が大きく異なる自動車です。ライバルと言うからには同じ用途であるべきですが、同じなのは排気ガスのクリーンな石油フリーの自動車というジャンルだけで使い方はかなり大きく異なります。

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実はライバルとは言えない2種類(FCVとEV)の自動車

燃料電池車は将来的なガソリン車の代替としての利用が見込まれ、電気自動車は軽自動車やスクーターの様な近距離使用の乗り物に代替する自動車となります。これは電気自動車の走行距離と充電方法に課題が残っているからで、これに関する根本的な解決は難しいのです。

まず、バッテリーの容量に関しては大きな技術革新は見込まれていません。スマホの使用時間が伸びているのは消費電力を抑える技術が進歩しているからで、体積あたりのエネルギー密度はあまり増えていないのです。モーターの消費電力が減る可能性はありますが、それは燃料電池車の利点ともなりえます。

また、充電と放電は別な様に見えて似通った反応であり、急速充電は電池の消耗を早めるだけでデメリットが大きいです。温度の影響も大きく、夏場の急速充電は致命的な消耗となりますし、夏と冬では加速力も変わるでしょう。

一方で燃料電池車は冬場でも出力が落ちず、暖房にも燃料電池の熱を回せます。高温でも動作には問題なく、充填もガソリンと同じです。そもそも「燃料」電池というほどなので、ガソリン車の代替を考えるのであれば燃料電池に利があります

とは言え、燃料電池車は高価で水素の運用も始まったばかりであり、普及には時間がかかるのは間違いありません。一方で電気自動車は応用範囲が広く、小型化したり、廉価版を作るのも容易です。いずれはバイクやスクーターが電気化することもあるでしょう。

燃料電池車と電気自動車は、今後は間違いなく「住み分け」が進むと考えられます。

また、双方の良いところを取った燃料電池と電気のハイブリッド車(FCEV)も考案されており、どちらかが負けてどちらかが勝つということは無さそうです。

燃料電池車のライバルはガソリン車やハイブリッド車


(次世代自動車の戦略_トヨタ自動車)

強いて言うなら、燃料電池車のライバルはガソリン車です。

排気ガスが汚いとか石油の価格が変動するという欠点はあれど、航続距離もパワーも燃料電池車はガソリン車には及びません。また、ステーションの数も圧倒的にガソリン車向けのものの方が多いです。価格も安価なため、ガソリン車の覇権は当分揺るがないでしょう。

ガソリンと電気のハイブリッド車も強敵で、燃料消費を抑えつつ電気としてのクリーンな部分もあるため、燃料電池車としては簡単には勝てない相手です。しかも、汎用性が高い自動車という点で用途も被っているので完全なライバルだと言えるでしょう。

ただ、ガソリン車には未来がないのです。

環境を汚し、埋蔵量に限りがある石油の使用は減らしていかなければなりません。一方で水素は国内で自給が可能であり、排気が水だけのクリーンなエネルギーです。ハイブリット車を使ったり、バイオ燃料を活用することである程度は環境負荷を減らすことは出来ますが、使わないに越したことはないという点では変わりません。

価格に大きな差がある内は立場が入れ替わる事は無いでしょうが、性能と価格の差が埋まってくればいずれ次世代自動車に淘汰される運命にあります。こう考えてみると、水素エネルギーを使った燃料電池車は将来的にはガソリン車に置き換わり、水素エネルギーを中心とした社会が構築されるのではないかと思えそうです。

しかし、それには水素インフラが抱える大きな問題がありました。

水素を製造供給するための水素インフラが持つ課題

水素というのは宇宙レベルでみると非常に基本的な物質で、宇宙で最も豊富に存在する物質です。

しかし、非常に軽いので発生したら勢いよく拡散して大気圏の一番外側まで飛んでいきます。そのため、自然に存在する水素を手に入れるには軌道エレベーターでも建設して大気圏の外側から水素を回収することになります。さすがにあり得ないので、現在人が使っている水素は全て工業的に生産されたもので、大半が石油を改質して作られています。

そうです。電気分解で簡単に作れるとか謳いながら、世界で今使われている水素は石油から作られているのです。さらに、水素を作っても水素がガスの状態で存在する上に、天然ガスと違って簡単に液化せず、決して使い勝手の良い物質だとはいえません。

電気分解には莫大なエネルギーが必要ですし、水素は危険で扱いが難しいです。果たして、そんな水素を使って動く車が本当にクリーンで未来を担う自動車と言えるのでしょうか?

第3回と第4回では、水素の貯蔵方法や製造方法の問題点や可能性について検討していきます。

 

第3回:水素吸蔵合金か高圧タンク、扱いにくい水素の性質とその貯蔵方法

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