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ペットボトルとキャップを分別する本当の理由、プラスチックリサイクルの意外な真実

ペットボトルの蓋を外すのが面倒くさいと思ったことはないでしょうか?もしかすると、キャップをつけたままリサイクルに出してしまったことはありませんか?

そもそも、コンビニや自販機の横にあるリサイクルボックスでキャップを分別してくれと書いてある事はありませんし、キャップを分別するにしてもペットボトルにはキャップから分離するリング(開封確認リング)があり、それまで外している人は少ないのではないでしょうか?

完璧に分別されていないケースが多いのにも関わらず、ボトルキャップの分別は奨励されています。そんなペットボトルとキャップにまつわる疑問について考えてみます。

プラスチック製品のリサイクル過程

 

ボトルキャップを分別する理由を考えてみる前に、プラスチック製品のリサイクルがどのように行われているかおさらいしましょう。

プラスチック製品と一言に言ってもかなり沢山の種類があります。
ペットボトル」「包装容器」「ビニール製品」「プラ繊維」「各種製品の外装」などなど、数え上げたらキリがありません。ここで重要なのは、プラスチックも用途によって材質が全て異なっているという点です。

ペットボトルでもキャップとボトルで材質が違うように、包装容器とビニールでは材質が違いますし、プラ繊維や外装ではかなり異なった材質のプラスチックが使われています。

材質が異なればリサイクルの方法は異なりますし、回収の方法や業者も変わってくるでしょう。しかし、日本のリサイクルではペットボトルだけが明確に区別されています。残りのプラスチック製品もある程度は区別されているものの、基本的にはまとめて収集されています。

実はペットボトル以外のプラスチック製品は回収後に更に細かく分別されています。そして、物によっては焼却して発電に利用されていたり、分解して化合物として使われたり、資源化してリサイクルされるようになっていて、ペットボトルとはまた違ったリサイクル過程を辿ります。

後で分別されるならペットボトルもまとめて回収すれば良いと思うでしょう。確かにそれもできなくはないのですが、ペットボトルは規格や材質が統一しやすく、ペットボトルだけで回収すると後のリサイクル工程が非常に効率的になり、リサイクル製品の品質も非常に高くなります。

ペットボトル以外のプラスチックごみはリサイクルの過程である程度分別されるものの完璧ではなく、ペットボトルのリサイクル製品と比較して品質に劣ります。そのため、廃棄の段階でプラスチックを分別するようにしているのです。

では、プラスチックだけ最初に分別されているとどうなるのでしょう?

まず、回収されたペットボトルは一旦運びやすいようにプレスされ(しないケースもある)、リサイクル工場に運ばれてから機械を使って金属片などの異物を除去します。その後にバラバラに破砕され、洗浄されます。

また、破砕洗浄に合わせてキャップとボトルの比重分離が行われ、キャップのプラスチックとボトルのプラスチックが分別された状態で集められ、プラスチック製品を作る工場へと送られます。

そうです。キャップとボトルは工場で分離できるのです。

ボトルキャップとペットボトル本体を分離できる理由


(海外のリサイクルボックス)

実は、キャップに使われているプラスチックであるポリプロピレン(PP)とポリエチレン(PE)は水より軽く、一方でボトルに使われているポリエチレンテレフタレート(PET)は水より重いのです。つまり、水に浮くか沈むかでキャップとボトルの素材は分離可能です。

試しにペットボトルとキャップを水の中に沈めて見て下さい。キャップは浮いてきますが、ボトルは沈んでいくはずです。ただ、ボトルの中に空気が入っているとボトルも浮いてくるので気をつけて下さい。工場ではバラバラにされてから分離されるので問題ありませんね。

また、金属とプラスチックの性質が全く異なることから分離は容易で、上図のように海外のリサイクルボックスではまとめて回収してしまうケースも多いです。日本と海外ではゴミの流通システムが違うので真似出来ませんが、まとめて捨てられるなら捨てられた方が効率は良いですね。

さらに、キャップを外すとボトル側に残る開封確認リングはボトルから外せないことが多く、廃棄時にリングを完全に外してリサイクルするのは困難です。工場側でキャップ素材とボトル素材を分別するシステムがなければ結局のところキャップの素材が多少ボトルに混ざることになってしまうため、品質の高いプラスチック製品は作れません。

キャップとボトルが分類できると聞くと、「ペットボトルとキャップは素材が違うから分けて回収する」のだと思っていた方は少し驚くかもしれません。もちろん、それも間違いではありません。比重分離が行われると言っても100%完璧ではありませんし、キャップ素材が少なければ少ないほど作業の効率や品質は良くなります。

ただ、「多少混ざっていても良いなら分別する意味がない」と思うでしょう。確かに実際のリサイクル過程だけを見ると、キャップが多少混ざっていたところで問題はありません。しかし、ゴミの回収からリサイクル工場に送られるまでの過程を見ると、なかなかそうも言えないのです。

(次ページ:ボトルキャップを分別して回収する理由)

ボトルキャップを分別して回収する理由

ボトルキャップを分別回収する理由には、「リサイクル製品の品質を高める」以外に回収業者側の事情がありました。

まず、「中に液体が入っていると困る」と言う理由。
中に液体が入ったまま廃棄されると、回収時に液体が漏れてきたり、回収に使っている車両や人員が無駄に汚れてしまうことがあります。また、リサイクル過程で用いられる機械に不具合が出る可能性もあるので厳禁です。

ちなみに、ボトルの中を洗って欲しいというのも、工場のラインを汚さないため、洗浄を確実にするため、というのもありますが回収業者側の衛生面の事情もあります。

もう一つ厄介なのが「プレス時にペットボトルが破裂すること」です。
空きペットボトルは中が空洞になっていてかなりかさばります。そのため、回収業者は回収したペットボトルをプレス機にかけてコンパクトにして回収することがあるのですが、蓋がきっちりしまったペットボトルは中の空気が抜けないのですぐには潰れません。

風船を潰して割ろうとすると盛大に破裂するように、蓋の閉まったボトルも盛大に破裂することがあります。巨大な密閉型プレス機ならボトルごときが破裂しても問題ないので良いですが、小型のプレス機の中に多数の蓋が閉まったボトルがあると破裂したボトルの破片が飛散する可能性もあります。

作業員が怪我をする可能性もあるのでキャップは外した方が良いでしょう。もちろん、蓋が閉まったまま捨てられることの多いコンビニなどのボトルはプレスせずに回収し、安全が確保できる工場でプレスします。

キャップをつけたままでリサイクル自体には問題がなかったとしても、ルールが守られず回収業者がボトル回収を敬遠するようになると自治体側の負担は重くなり、その負担は最終的には住民にのしかかることになります。小さな努力で後々の負担が軽減されていると考えると良いですね。

ただ、それならそれで蓋を外して中身を捨ててボトルと一緒に回収したって良さそうなものですが、ボトルキャップの素材はプラスチックの包装容器などと同じなので、せっかく外したらならそっちと一緒に回収したいということです。

ある意味では、「効率よく回収するついでに」分別していると言えるかもしれません。

ペットボトルのリサイクルは本当に必要?

「回収業者も大変だし、消費者も大変だし、結局高品質なプラスチックにするのが難しいなら最初からやらなければ良い」

そう考える人も少なくありません。また、リサイクルには多数の機械や車両を使いますし、燃料も必要です。資源を有効活用するために、燃料を消費してCO2を出していたのでは本末転倒だと言う意見もあります。

ペットボトルのリサイクル以外にも、エコキャップ運動などが「消費燃料や排出二酸化炭素の方が節約できる分より多い」としてエコではないとされることもあり、そう考えると、果たして「プラスチックのリサイクルは本当に必要なのか」疑問に思えてきます。

日々技術は進化している上、業者によって処理方法が違うので一概には言えませんが、確かに短期的に見ると非効率な流通方法が残っていることは否めません。

ただ、ペットボトルのリサイクルに関してはシステム作りが進んでいることもあり、非常に効率的に品質の高いプラスチック製品が作れるようになっているので効果は高いといえます。

また、中長期的な視点を持つことも大切です。

こうしたリサイクルにおいて重要なのはリサイクルの意識や流通を早い段階で広めておくことで、将来的にそれが当たり前の社会を作ることが目標になっています。

化石燃料の使用量が今後どんどん少なくなっていくことは間違いありませんし、化石燃料の大半が自然エネルギーや核エネルギー、水素エネルギーなどに徐々に代替されていくものです。

実際に水素エネルギーの利用も広がっており、将来的にはリサイクルにかかるエネルギーがCO2フリーになり、循環型エネルギーに切り替わっていくことは疑いようがありません。そうなれば、リサイクルにかかるエネルギーというのは許容される範囲になるでしょう。

そのように考えてみると今はあくまで過渡期であり、現段階で無駄だと決めつけるのは早計です。

あらゆる資源を循環可能型にするという「真の循環型社会」というのはまだまだ絵空事でしかありませんが、今後何十年と先の日本を考えてみた場合、ペットボトルのリサイクルから始まる循環型社会というのもあるのかもしれませんね。

 

参考:
ペットボトルリサイクル推進協議会(http://www.petbottle-rec.gr.jp/)
プラスチック循環利用協会(http://www.pwmi.or.jp/)

 

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