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ステルス機を見つけるための4つの方法、レーダーと電波を巧みに活用する – ステルス(4)

レーダーによる早期発見を防ぐステルス性を備えた兵器が航空機・船舶・車両と領域を問わず開発されるようになりました。このままだとレーダーで発見するよりも目で見た方が早いなんて時代が来るかもしれません。しかし、ステルス兵器の進歩と同時にステルス兵器を発見するための技術も進歩し続けています。

水中に潜る潜水艦はともかく、船舶や航空機であれば少なくともレーダー波は届きます。また、大気で多少散乱してしまうとはいえ赤外線による探知も有効です。レーダー波を巧みに操って反射波を抑えているとはいえ、障害物の何もない大空を飛ぶステルス戦闘機を見つけられないわけがありません。本記事では、ステルス兵器を発見するための技術を4つご紹介していきます。

ステルス戦闘機の弱点

ステルス性を考慮された兵器の中でも、航空機は特に弱点が多い兵器です。

潜水艦は海中深くに潜れば絶対に発見されませんし、船舶も島や海面(水平線)によってレーダー波を遮ることができます。車両であれば地形を巧みに使うことで空や地上のレーダーから隠れることは容易です。レーダーなら遠くの物を発見できると言っても、なんだかんだで限りがあります。

ところが飛行機は別です。超低空飛行をしても船舶や車両より高い高度を飛行することになりますし、空にはレーダー波を遮るものがありません。どうあがいても航空機はレーダー波を受けてしまうのです。

ステルス機はレーダーの反射波をコントロールして、レーダー側に返さないようにしたり、反射波を低減したりしていますが、レーダー波を完全に消しているわけではありません。多かれ少なかれ航空機に跳ね返った反射波がどこかに飛んでいきますし、弱くなっているとはいえレーダー側にも飛んで行ってしまいます。

さらに、エンジンから出る熱はどうしようもありません。熱せられた物質は赤外線を放ちますは、この赤外線はレーダー波ほどではないものの、可視光よりは遠くまで届きます。エンジンからの排気は垂れ流しですので、これを隠す方法はないでしょう。

また、航空機の外装にいくらステルス性を施しても航空機内部のエンジンや電子機器までステルス化することはできません。つまり、航空機の外装を透過してしまうようなレーダー波に対しては手も足もでないのです。

こう考えてみると、ステルス機を発見する手段が見つけられそうです。

(その1):レーダーを複数配置して連携する


(AN/TPS-75 _ USAF)

自衛隊でもMIMOレーダーとして研究されている手法ですが、レーダーを複数配置してステルス機の発見確率を高めます。

ステルス機のステルス性は万全ではなく、レーダー波が当たる角度によって見つけやすくなったり見つけにくくなったりします。

また、ステルス機の特徴である『反射波を飛んできた方向(レーダーがある場所)とは別の方向に飛ばす』という点に注目して、ステルス機があらぬ方向に飛ばしたレーダー波を、そのレーダー波を飛ばしたレーダーとは違うレーダーがキャッチするという方法です。ややこしいですが、要するには壁に当たって変な方向に跳ね返ったボールを投げた人とは別の人がキャッチするということです。

ある種の物量作戦とも言えますが、単にレーダー基地や対空レーダー車両、早期警戒機を沢山飛ばしただけでは不十分です。数を増やすだけでも発見確率は高まりますが、他の誰かが飛ばしたレーダー波を拾っても、それが『いつ、どこから、どこに飛ばしたレーダー波』か分からなければ意味がありません。

レーダーによって得られる情報は「距離・高さ・方角」の三つ。そして、物体の位置を把握するためにはこの三つの情報の全てが必要になります。つまり、ステルス機を発見して迎撃するには、『レーダー波がどこからか飛んできた』というだけでは不十分なのです。

どこに飛んで行くか分からない電波を別の誰かが拾って、ステルス機の位置を確認するというのは容易なことではありません。

レーダーを装備する一つ一つの基地・車両・早期警戒機がネットワークによって連携し、お互いが「いつ・どこで・どこに」向かってレーダー波を飛ばしているかを確認しながら索敵を行う必要があるのです。

例えば、互いのボールに色をつけ、ボールを投げる時間、場所、方向を予め確認しておけば、突然ボールが飛んできてもそのボールがいつどこで跳ね返ってきたのかがわかりますよね。

変な方向に跳ね返ってしまうレーダー波を別のレーダーで拾うというシステムを構築するのは容易なことではありませんが、自由にレーダー設備を設置できる自国の対空防衛だけであれば、この手法は有効です。

低周波レーダーの活用

レーダーは使用するレーダー波の周波数によって、透過するモノや飛ばせる距離が異なってきます。

というのも、モノを透過しやすいということは大気も透過しやすいということになり、電磁波のエネルギーが簡単には失われずに遠くまで飛んでいくため飛距離が伸びます。一方、モノを透過しにくいと時々大気にぶつかりながら進むのでエネルギーが失われて遠くまで飛びません。

この透過しやすさというのは電磁波の周波数(波長)に依存しています。周波数が低ければ(波長が長ければ)モノを透過しやすく、周波数が高ければ(波長が短ければ)モノを透過しにくい性質を持つため、用途に応じて使い分けられるのが普通です。

また、低周波は高周波に比べて持っているエネルギー小さいということもあり、この周波数(波長)の差は反射波にも影響します。

モノを透過しやすい低周波のレーダー波ではモノに当たっても反射波が拡散する上に綺麗に返ってきませんが、透過しにくい高周波のレーダー波では反射波があまり拡散しない上に綺麗に跳ね返ってくるので、モノの正確な位置が把握できます。

そのため、物体の正確な位置を把握したいレーダーでは、高周波のレーダーが使われる事が多いです。しかし、実は高周波レーダーはステルス機を見つけるのが苦手で、ステルス機の探索には向いていません。

高周波のレーダー波はステルス機の外装に当たって跳ね返る際、ステルス機の形状に合わせて別方向に向かって跳ね返るのでレーダーを発射した場所にレーダー波が返って来ず、ステルス機を見つけられません。

ところが、低周波のレーダー波はステルス機の薄い外装を透過してしまいます。場合によってはそのまま機体まるごと透過してしまいますが、一部はエンジンなどの大きな金属製の物体に当たって跳ね返ります。エンジン部には反射波の向きを変えるステルス性などありませんので、反射波はレーダーがある元来た場所へ返ります。

すると、反射波としては弱くて曖昧で、正確な位置は分からないものの『何かが飛んでいる』ということまでは分かるのです。

物体の正確な位置が分からなければレーダーとしては落第ですが、それだけでも分かれば迎撃機や偵察機を飛ばすことは出来るでしょう。さらに、接近すれば正確な位置の分かる高周波レーダーで発見することも可能です。

近年では、低周波のレーダー波でも反射波を詳しく分析しつつ、周波数や照射位置をずらしながら解析することで正確な位置を特定できる様になってきました。つまり、将来的には低周波レーダーでステルス機の正確な位置を把握できるようになるのです。

レーダー波がステルス機の外装を透過してしまうとステルス機のステルス性は無いも同然。コスト的には普通のレーダーと変わらないため、複数のレーダーを運用するよりもコスト効率は良いでしょう。

精度は低いものの、低周波レーダーをステルス機対策に導入している国は多いです。

(次ページ:  ノイズ解析と赤外線の利用)

レーダー波のノイズ解析


(AWACS _USAF)

レーダー波が拡散するというのは前回の記事でも解説しましたが、問題はステルス機ではレーダー波の大部分があらぬ方向へと跳ね返ってしまい、レーダー側には少ししか飛んでこないという点です。

しかし、注目するべきは、少しではあるものの『レーダーの反射波は飛んできている』ということです。

では、なぜせっかく返ってきた反射波をレーダーは捉えられないのでしょうか?

実は、レーダー側でせっかく返ってきた微弱な反射波を無視してしまっているからなのです。

電磁波というのはレーダーが発しているものの他にもたくさんあり、太陽からも飛んできています。しかし、それらはレーダー波に比べると極めて微弱なので、レーダーのシステムはこれらの微弱な電磁波をノイズとして無視するようにしているのです。さもなくば、誤作動だらけになってしまうでしょう。

ですが、このノイズを入念に解析すれば、ステルス機にぶつかって拡散し、わずかに返ってきた反射波を見つけ出す事ができるはずです。

いわば、人混みの中からたった一人の声を聞き取るようなものです。今までは小さな声は無視して大きくてよく聞こえる声だけを拾ってきましたが、それではステルス機は見つけられません。

反射波によって僅かに乱れたノイズを解析して自身が発したレーダー波の反射波を見つけ出し、ステルス機を見つけます。

これは既存のシステムの解析能力を高めるだけで良いので使い勝手は良いのですが、ノイズを解析すると一言で言っても大変な作業です。高い計算能力を持ったコンピューターと微弱な電波も拾う受信機が必要で、高度な技術力を持った国でしか実用化はできないでしょう。

赤外線による探知

既存のシステムをそのまま使えるのが赤外線による探知です。

赤外線は熱を発している物体から出ています。ジェット機であるステルス機が発する熱を見つけ出すのは簡単でしょう。ただ、赤外線は言ってみれば高周波レーダーよりも遥かに周波数の高い電磁波で、飛距離が圧倒的に短いです。

望遠鏡で探すよりはマシですが、太陽光で赤外線が散乱している昼間はさらに見つけにくくなるでしょう。

とは言え、赤外線による探知装置は軍用機にとっては非常にポピュラーな装備です。赤外線検知装置を搭載した多数の無人機に巡回させることで、有事に基地の周辺に接近するステルス機を早期発見することは難しくないでしょう。

技術的なハードルは低いとはいえ、コストも労力もかかりそうです。

ステルス機対策の決定打にはなりえませんね。

総合的な索敵システムが必要

ステルス機を発見・迎撃するために有効なのは、これらの方法を複合的に活用することです。

レーダー基地には低周波レーダーと高周波レーダーの両方を配置し、ノイズ解析システムも必要不可欠です。さらに、レーダー基地を補完する形で対空レーダー車両や早期警戒機を展開してネットワークで繋ぎ、相互に連携できるようにします。前線の無人機や戦闘機には精度の高い赤外線検知機を装備して、確実に迎撃できるようにすると良いでしょう。

少なくとも、低周波レーダーでステルス機の接近を感知して赤外線検知装置を搭載した戦闘機で迎撃するという戦術は実際に使われています。迎撃機には赤外線追尾式のミサイルを搭載しておけば、ステルス機の迎撃も可能です。

唯一撃墜されたステルス機であるF117攻撃機も、低周波レーダーを使って探知されたことが知られています。見えない見えないと恐れられるステルス機も、戦い方を工夫すれば発見することは出来るのです。

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