「みんなSNSを使っている」「SNSを見れば世の中の意見が分かる」なんて思っていませんでしたか?
文化庁の「平成 27 年度 国語に関する世論調査」で、普段からインターネットを利用している人に「どのようにインターネットを利用するか」と尋ねたところ、「SNSを閲覧する」と答えた人の割合が僅か30.3%だったことが分かりました。
この話を聞いて「そんな馬鹿な」と思った人もいるでしょう。中には「やっぱりね」と納得する人もいるかもしれません。よくよく考えてみると3割というのは決して少なくない数字なのですが、周りの人間がみんなSNSを使っていると使っていない人の方が少ないように思えてしまいます。ここでは、総務省の別の統計も交えながら今のSNS利用実態について見ていきましょう。
SNSを閲覧する人が3割、投稿するのはその半分程度
「国語に関する世論調査」でどうしてインターネットの利用実態なんて調べたのだろうと疑問に思うかもしれませんが、これは「日本語コミュニケーションの実態」を把握するための設問のようです。また、「インターネットを利用する人」に対する質問なので、インターネットを使わない人については除外されています。
注目するべきは「SNSを閲覧する(投稿しない)」が30.3%で、「SNSに投稿する」が17.7%という点。
これらの選択肢が別々に存在する点もこの設問の面白いところで、ここでは回答者に「どのようにインターネットを利用するか」と尋ねています。つまり、「主な用途」を尋ねる質問であり、よくある「使った事があるか」というニュアンスの質問ではないということ。
そのため、「アカウントは持っているけど滅多に使わない」「時々使うけど頻繁には見ない」というユーザーは入っていないと考えられます。さらに、「投稿はしない」と回答した方も「時々投稿する」という可能性はあるでしょう。イメージとしては「SNSを頻繁にチェックし、友人の投稿にいいねする」ぐらいのユーザーが「SNSを閲覧する」に当てはまるのではないでしょうか。
インターネットの利用用途を尋ねられ、「SNSの投稿」と答える人はかなり頻繁に写真などを投稿しているユーザーであると予測されます。そう考えてみると、17%という低い数字も納得です。
つまり、この数字は「SNSのアクティブユーザー割合」と考えると納得が行くのではないでしょうか。
インターネットを利用するユーザーの中で3割もの人が「インターネットをどのように使うか」と聞かれて「SNSの閲覧」と答えたのだとしたら、それは無視できない数字でしょう。
むしろ、この中ではメール利用が78%なのが意外です。スマホや携帯のメールは「インターネットじゃない」と考えている人が少なからずいる可能性もありますが、それこそSNSで連絡を取ってメールはあまり使わないのかもしれません。
SNS別で見るとLINEが半数超え!Facebookが28%と妥当な数字に
(総務省 平成26年情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査報告書)
次は総務省の統計を見てみましょう。総務省 平成26年情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査報告書の資料では、実は大きく違った結果が出てきます。
「LINE」の利用者はなんと55.1%。「Facebook」は28.1%。「Twitter」は21.9%という結果です。さらに、その他のSNSも合わせ、一つでもSNSを利用している人の割合は実に65.0%にも達するという結果になりました。それを10代から40代に絞ると8割超えです。これは一体どういうことなのでしょうか?
実はこの統計の元になっている設問にはこうあります。
「この中で、あなたがパソコン・携帯電話・スマートフォンから利用しているものはありますか。当てはまるものに全て◯をつけて下さい」
単純に、「使っているかどうか」という質問です。SNSから完全に離れて一切利用していない人は「利用している」とは答えませんが、たまに使う程度なら「利用している」と答えるでしょう。つまり、こちらはライトユーザーを含めた「全てのユーザー」と考えると良いのかもしれません。
また、ここでは「LINE」がSNSに含まれています。確かに厳密な定義で言えばLINEはSNSなのですが、Facebook・GREE・Twitter・Mobage・Google+・Mixiなどの他のSNSと比べると少々異質です。どちらかと言えば、Skypeなどのメッセンジャーアプリの一種と考えている人も多いのではないでしょうか?
推測に過ぎませんが、文化庁の統計にあるように「SNSの閲覧」と聞かれて「LINE」をイメージする人は少なかったはずです。そう考えてみると、この二つの統計の乖離が理解できます。実質的には「LINEを除いたSNS」がSNSとして理解されているのではないでしょうか?
そうすると、全体のSNS利用率は4割程度というのが妥当な数字になりそうです。どちらにせよ、10代から40代のSNS利用率がかなり高いことは言うまでもありません。
ちなみにこの調査でも「投稿する人」の割合を調べており、こちらも利用者(閲覧者)の半分程度が投稿している結果になっていました。
この二つの統計から分かること
統計というのは単純に数字だけをみるのではなく、どうしてそのような結果になったのかを考えることも大切です。文化庁の統計も、総務省の統計も、どちらも1500-2000人の有効調査からの統計なので内容的には信頼できます。大切なのは、「どんな設問をどのように配置したか」です。
文化庁の調査では「インターネットを利用している方に質問です。インターネットをどのように利用していますか?」という質問だったのに対し、総務省では「SNSの中から利用しているものをお答え下さい」となっていました。この設問では、別々の結果が出ることは火を見るより明らかです。
仮に私が両方の調査に答えた場合、文化庁の設問で「SNSの閲覧」を選ぶことはありませんが、総務省の設問なら「LINE・Facebook・Twitter・Google+」と答えます。SNSに費やす時間が週に5分程度の人間が、文化庁の調査で「インターネットの利用の仕方」を聞かれてSNSを入れるのは違和感がある一方で、「利用しているものはどれ」と聞かれてSNSの具体的な名前まで挙げられたら「これを使っている」と答えるのは自然な気がします。私と同じような選択をする方は結構いるのではないでしょうか?
さて、二つの統計を総合すると以下のようになります。
インターネット利用者の3割から4割程度は確実にSNSを使っていて、そのうちの半分程度が投稿機能を利用しています。また、10代から40代のSNS利用率はやや高めで、LINEの使用率は過半数を超えていました。ただし、LINEを除いたSNSの利用率は過半数を超えるほどではありません。Twitterは10代と20代のユーザーが多く、Facebookは20代から30代のユーザーが多い、というように特定の層で利用率が劇的に増えていますが、それでも過半数に届くかどうかです。
統計を見る限り、LINE以外のSNSは「人気がある」という程度です。
Google検索のように「みんな使っている」というサービスにはまだなっていないようですね。