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F35の戦い方やその特徴、器用貧乏でも連携で強いステルス機 -F35特集(2)

F35がとにかくなんでも詰め込もうとした戦闘機であることは前回解説しました。一見不可能に思えた戦闘機開発も何とか成功し無事F35は完成したわけですが、詰め込みすぎたツケはどこかで払わなければなりません。

本記事では、F35が獲得した能力によって「できるようになったこと」と「できなくなってしまったこと」について従来の戦闘機と比べながら「強み」と「弱み」に分けて解説していきます。

強み①:高度な連携で死角なし


(編隊飛行をするF35)

F35には機体の各所にセンサーがついており、パイロットはそのセンサーの情報をヘルメットに投影できます。SFロボットものに出てくる「全周囲モニター」のようなもので、あらゆる方角を文字通り監視できるのです。

その上で、そのセンサーを使って戦えます。真後ろの敵をロックオンしたり、下方の敵をカメラで識別して爆弾を落としたり、場合によっては接近するミサイルを捕捉して妨害電波で無力化することも可能です。

しかも、ネットワークで僚機と繋がっており、それもF35なので全員ステルス状態です。空中戦ではレーダーを使いすぎるとレーダー波を検知されて敵に見つかりやすくなる欠点がありますが、F35の場合はこれを連携で補うことが可能です。

その方法はシンプルです。索敵チームと隠密チームに分かれ、索敵チームがレーダーを照射し、隠密チームはレーダーを使わずに接近して攻撃をしかけます。これは地味な連携ですが非常に強力です。

レーダーの索敵範囲に比べてミサイルの射程は短いため、攻撃するには接近する必要があります。この時にレーダーを使っているとミサイルを打つ前に見つかる可能性があるわけですが、隠密チームは仲間の索敵情報を参考にすれば良いのでレーダーを使う必要がありません。レーダーを使わなければ、レーダー波を検知した敵に見つかることもないでしょう。

また、連携することで仲間のミサイルを自分のもののように使うこともできます。敵を発見した際に自分が敵を攻撃できる位置にいない場合やミサイルを使い切っていた場合には、仲間に依頼すれば良いのです。

これは敵に追われている際にも同じで、後ろの敵を味方に攻撃して欲しい場合にもネットワーク経由で指示ができ、都合の良い位置にいる味方のミサイルで背後の敵を攻撃してもらいます。いちいち「追われているから助けて欲しい!」「分かった。今行く!」なんてやりとりは必要ありません。

これはF22には無い能力であり、大きな強みと考えられるでしょう。加えて、肝心のステルス能力についてもF22よりも強力である可能性が指摘されています。

従来の評価ではF35のステルス能力はF22よりは低いと考えられていました。しかし、関係者からF35のステルス能力がF22以上であるという話が出てきており、それが事実だとすれば世界最高水準のステルス性を持った戦闘機であるということになります。そんなステルス機が本気で連携し、隠密行動を取れば、ミサイルを撃たれる前に発見することは不可能でしょう。

強み②:増えれば増えるほど加速度的に強くなる

連携能力が持つ意味は「死角がなくなる」ということだけではありません。F35は「なんでもできるステルス戦闘機」というコンセプトで作られていることもあり、数が増えれば増えるほど有利になります。というのも、数が増えれば状況に応じた適切な役割分担によって部隊全体の能力が向上するからです。

普通は2機の対空戦闘機が2機増えても対空戦闘機が4機になるだけですが、F35の場合には2機のF35が4機になると2機の対空戦闘機と2機の索敵機になることもできますし、2機の対空戦闘機と1機の索敵機と1機の電子戦機になることもできます。それだけでも強力ですが、役割が瞬時に入れ替わり、状況に応じて常に最適な役割分担で編隊を組むわけですので敵や任務を選びません。

例えば、4機の戦闘機が空戦参加したとしましょう。この場合、4機全てが戦闘の真っ只中にいて、いつでも敵を攻撃できる状況にいるケースは稀です。ミサイルから逃げて一時離脱している戦闘機もいれば、ターゲットを絞り込むために位置取りを考えている戦闘機もいるわけで、実質的に戦っているのは常に2-3機程度になります。残った機は暇なわけではありませんが、瞬時に攻撃に参加できない状況にあることは確かです。

この時、F35ならミサイルから逃げている時でも電子戦を行えますし、位置取りを探している場合には索敵機になれます。場合によっては、逃げている最中に仲間が捕捉した敵に向かってミサイルだけ飛ばすこともできるかもしれません。どんな状況でも、常に全てのF35が戦闘において重要な役割を果たせます

実際の作戦では、空戦・爆撃・索敵・電子戦が順番もしくは平行して行われるため、その分だけの数の戦闘機が必要です。しかし、F35では索敵が終わったら空戦・爆撃、必要に応じて電子戦と切り替えられるので、数はもっと少なくて済みます。このため、従来機の半分以下の戦力で同じ作戦が確実に遂行できると考えられています。

F35は数が増えると加速度的に強くなるという言い方をしても間違いではないでしょう。「1機でも強い。3機になればその強さが3倍ではなく10倍になる」なんていうと、どことなくやられ役っぽい設定になりますが、現実世界ではかなり強そうです。

こう考えてみると、ネットワーク化が進む現代では戦闘機もコミュ力の時代ということでしょうね。

(次ページ:F35は器用貧乏で重すぎる?)

弱み①:器用貧乏?装備を増やすとステルス性を損なう

ステルス性に優れた万能機であるF35ですが、小さな機体に様々な機能を詰め込んだ結果として機体の余剰スペースが小さくなり、機体の中に格納できる兵器の数が減りました。元々のサイズが小さいことも原因なのですが、ミサイルを4本しか格納できないのは痛いです。

一応、機体の外にぶら下げることができるので、持っていこうと思えば10本以上持っていく事も可能ですが、そうなると強みであるステルス性が失われます。対地攻撃であれば敵の戦闘機や敵ミサイル部隊を殲滅した後で機外に爆弾やミサイルをぶら下げていけば良いのですが、対空戦でミサイルを外にぶら下げたステルス能力に劣る機体を連れて行くのはリスキーでしょう。

単純にF35の数を増やせば事足りますが、無理な場合もあるでしょう。どうしてもミサイルの数が足りない場合は、隠密チームとミサイルチームに分かれることで大量のミサイルを抱えた仲間を援護する形で戦うことはできます。ただ、そんな戦法がリスクに見合うかは微妙です。

さらに、爆弾は種類によっては2つだけしか内蔵できないこともあるため、ステルス爆撃をするには少し心もとない印象があります。実際の運用では、ステルス性を維持して少数の武器を持っていくチームとステルス性を無視して大量の武器を持っていくチームに分かれて作戦行動することになるでしょう。

なんでもできると言えばなんでもできるF35ですが、器用貧乏になっている感が否めません。運用の方法で解決はできるものの、小さな機体に詰め込みすぎた結果と言えるでしょう。そして、詰め込みすぎの弊害はそれだけではありません。

弱み②:重すぎて機動性が旧世代機並、開き直ったステルス機

F35の小さな体に色々な機能を詰め込んだ結果、サイズの割には重い機体になりました。

ジェット機はジェットエンジンの数で双発機・単発機に分かれており、双発機の方が重量的に重いの普通です。ところが、F35は単発機にも関わらず重量が双発機並となっています。

それを補うために高性能なジェットエンジンを開発し、何とか戦闘機として使える速度を獲得しました。しかし、従来型の戦闘機に比べて加速力や旋回能力が劣っており、回避能力や離脱能力に難があると言われています。つまり、他の戦闘機なら避けられる攻撃が命中したり、敵を振り切れる状況で振り切れなかったりするわけです。

従来型の戦闘機では、敵の背後を取るドッグファイトなどの格闘戦が重要であり、こうした機動性は極めて重要な能力です。F35にはそれが足りません。その機動性は切り替える予定の旧式機であるF4と同じぐらいだという予測もなされています。

なんともガッカリな話ですが、これは開発時から織り込み済みです。そもそも、ステルス機では見つかる前に攻撃するのが基本なので格闘戦はやりません。また、強みが死角の無さや連携能力にあるとお話したように、F35は背後を取られても背後をロックオンして自分のミサイルで攻撃できますし、味方に助けてもらうことも可能です。ある意味では、戦闘機として「開き直っている」と考えても良いでしょう。

ただ、F35の機動性不足には異論もあります。開発中に機動性に問題があったのは事実ですが、空戦用ソフトウェアの改良によって今ではかなり改善されているという話です。中には、従来機に比べて圧倒的な機動性を誇るF22と比較して大きく劣らないほどの機動性になっているという評価もあるようで、賛否両論分かれています。

意外に思えるかもしれませんが、F35の機動性については近年のアクロバット飛行などでも「聞いていたより動けるぞ」という声も増えており、このあたりの欠点はある程度克服されているのかもしれません。

活かすも殺すも運用次第

F35は群れることで真価を発揮する新しいアプローチで作られたステルス戦闘機です。高いステルス性と死角のないセンサー類に加え、ネットワーク連携による役割分担で群れとしての機能は向上します。

この能力は人工知能が発達した未来においては更に大きな価値を持つと考えられており、無人化計画も発表されています。人工知能による連携には訓練も不要であり、大量生産も容易なF35の無人機部隊はとんでもない脅威になるでしょう。人工知能の逆襲はF35によって始まれば、人間には手も足も出ないかもしれません。

ただ、群れれば強いということは1機や2機では十分な力を発揮できないということでもあります。鈍重で機動性が低く、ステルス性を維持したまま携行できる兵器が少ないため、孤立すれば従来機に比べて弱いです。つまり、敵はF35を孤立させる戦略を立てれば良いわけで、うまく立ち回ればF35に対抗することもできるでしょう。

逆にF35を使う側は下手に分散させずに集中運用を心がけ、常に連携できる状況を作ることで優位に立てます。F35に限った話ではありませんが、高性能な兵器を活かすも殺すも運用次第というわけです。

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