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F35は本当に使える戦闘機なのか? 誤解を紐解くと意外な結果に -F35特集(3)

F35は連携することで力を発揮する戦闘機です。ステルス性が高いというだけではなく、ネットワークやセンサー類についてもあらゆる装備が施され、従来の戦闘機とは一線を画するものとなりました。

ところが、F35には色々な課題が残っていると言われています。ソフトウェアが不具合だらけとか、旧式機より遅いとか、お金がかかりすぎるとか、数えだしたらキリがありません。そこで、こうした疑問について検討してみようと思います。

不具合だらけのソフトウェア

F35はその高度なネットワークとセンサー類を操るために、既存の戦闘機の中では最高レベルのコンピューターを搭載しています。その上、扱える武器の種類や任務の多さも相まってF35をコントロールするソフトウェアは複雑化しており、その規模は20年以上に渡って改良され続けてきたオペレーティング・システム「Linux」と同レベルとなってしまいました。

そんな大規模なプログラムが最初から綺麗に動くはずもなく、結果的にバグだらけの状態で配備が始まってしまい全ての機能が使えない状態のままF35の運用が始まってしまいました。言ってみれば、未完成の状態でリリースしたゲームのようなもので、当然ながら使っている人から苦情が出ます。

普通に考えればろくに動かないまま納品するなんてとんでもない話です。ただ実際のところ、その良し悪しは置いておいて、大規模なソフトウェア開発では、バグが大量に残ったままソフトウェアをリリースすることはそれほど珍しくありません。Windowsなどもそうですが、ある程度形になった時点でユーザーに使ってもらい、フィードバックを受けながら修正していくケースが増えています。なぜならそちらの方が開発コストも抑えられますし、最終的な品質も高くなるからです。

戦闘機ではありませんが、兵器の分野ではアサルトライフルのM16なども欠陥ライフルとして最初は嫌われていました。しかし、現場の声をフィードバックする形で改良が繰り返され、高い信頼性を獲得しました。今ではM16とは使用感の異なるライフルは使いたくないと言われるほど信頼されており、新しいライフルの導入を断るほどです。

話がズレましたが、構造的な欠陥については修正が効きませんが、ソフトウェアの欠陥については修正が容易です。こちらの問題については時間と共に解決されるだろうという見方が強く、すでに幾つかの問題は解決済みです。現時点で心配することではないのかもしれません。

遅い機体でスクランブル発進?

自衛隊が配備している戦闘機はF15・F2・F4の3種類です。どの機体も領空に近づいてきた戦闘機を警戒するスクランブル任務についた経験がありますが、実はF35というのはそのどれよりも「遅い」のです。

主力であるF15がM2.5(音速の2.5倍)、汎用タイプのF2がM2.0以上、旧式のF4がM2.2となっており、肝心のF35は何とM1.6しか出ません。旧式のF4戦闘機を追いかけても逃げられてしまうのです。ところが、実はここには仕様上の罠があります。

これらの機体の最高速度は装備を何も付けない状態の速度です。装備をつけると空気抵抗が増えますので、当然ながら速度は落ちます。F15の場合、フル装備にするとM1.8ぐらいにまで下がり、他の機体でもF35とさほど変わらない速度になってしまいます。

一方、F35の場合は装備を機体の中に格納するので空気抵抗は増えず、装備の重さの影響で少し遅くなる程度で済みます。速度が求められるスクランブル任務では、戦闘も考慮して基本的に対空装備としてミサイル類を積んでいくので、どうしても最高速度は落ちてしまいます。

しかし、装備を格納した場合はF35の速度はそれほど落ちません。F35をスクランブル任務につかせたとしても従来の戦闘機とそれほど変わらない速度で任務を遂行できるでしょう。

また、戦闘機の最高速度というのは、アフターバーナーと呼ばれる燃料をエンジン後方に吹き付けて燃やすことで速度を向上させるロケットエンジン並に燃費の悪い方法を使って得られる速度です。通常の数倍の燃料を消費し、大抵の戦闘機は二十分もアフターバーナーを使えば燃料切れになります。離陸時や戦闘時に一時的に使う事はあっても、アフターバーナーを使い続けるケースはあまりなく、最高速度は仕様上の目安に過ぎません。

特にF22のような一部の戦闘機を除いて、アフターバーナーを使わずに音速を超えることは困難です。アフターバーナーを使わない巡航速度はF35を含め他の機体もさほど変わらないので、F35が遅いことが大きな問題になるケースはそれほどなさそうです。

とは言え、実用レベルで言えばそれほど遅くないというだけで、特別速い戦闘機ではありません。加速力にも不安が残っており、全速力で逃げる敵を追いかけたり、敵から逃げたりする場合には困ることもありそうです。

F35は価格が高くて見合わない

ソフトウェアのバグがそのうち無くなるとしても、速度が遅いように見えて他の従来機とさほど変わらないとしても、1機100億円以上の価格に見合うかどうかは別の問題です。これは計画時の倍以上の価格であり、購入する側からすれば高すぎと感じるのも無理もありません。

ところが、自衛隊が配備しているF15やF2も100億前後の価格の戦闘機であり、実は最新鋭戦闘機のF35とあまり価格が変わらないのです。高い高いと言われる割にそんなに高く無い上に、性能的には明らかに高性能ですので価格に見合った性能があるといえます。

では、なぜ高い高いと言われてきたのでしょうか?

その理由の一つが元々の価格設定が安すぎたことにあります。F35は同じく小型のマルチロール機(汎用機)であるF16の後継機という位置付けですが、F16は20億前後で購入できる極めてコストパフォーマンスの高い機体です。それに合わせてF35を50億前後の価格設定にしたので、現実に見合わずどんどん高くなっていったのです。

そして、上がり続けた価格が150億を超えたことで大騒ぎになります。価格はメーカーが提示するものですが、流石に3倍の価格を国が受け入れるわけにも行かず、米国のトランプ大統領が強く要求し、国内向け価格が100億に収まるようになりました。

そんなに下げたらメーカーが赤字になりそうですが、F35の価格の大部分は「開発費」です。このため、価格設定は「開発費を何年で回収するか」というメーカー側のプラン次第で大きく変わります。5年で回収しようとすると価格は高くなりますが、10年で回収するプランにすればぐっと安くなります。

もちろん、開発費や製造コストを削減することでも圧縮できますし、価格を下げて販売数を増やす戦略も取れるでしょう。また、F35は世界中の国々が購入予定の機体であり、ロングセラーになることが予測されています。開発費が高騰したからと言って、無理に価格を上げなくともメーカー的にはそれほど大きな負担にはならないのでしょう。

ただ、米国内向け価格と国外向け価格は別物で、日本の最初の調達価格は150億円弱です。高いことには高いのですが、値下げの余地があるのは間違いなく、他の旧式戦闘機も100億超えで調達されていたことを踏まえれば、ステルス機がこの価格は妥当なのかもしれません。

ステルスは時代遅れ?様々な対抗手段の存在

これはF35に限った問題ではありませんが、ステルス戦闘機の登場からステルス機を発見するための様々な技術が開発されてきました。ロシアは既にステルス対策として、複数のレーダーを同時に運用する対ステルス用の兵器の運用を始めており、ステルス機は脅威ではないと喧伝しています。

こうした兵器を用いることで本当にステルス機を発見することができるようで、最先端のはずのステルス機が既に時代遅れになっている可能性も浮上してきました。

これからステルス機を導入しようという日本からすれば恐ろしい話ですが、忘れてはいけないことがあります。それは「ステルス機を発見できること」と「ステルス機を撃墜すること」は別の問題であるということです。

ステルス機はレーダー波を乱反射させず、特定の方向に揃えて反射させることで発見されてないようにしています。ステルス機はレーダー波を透過するわけでもなければ、全て吸収しているわけでもありません。どこかしらにレーダー波は反射していきますし、その反射波を捉えればステルス機でも見つけられます

対ステルス機用のレーダーでは、複数のレーダーを同時に運用することで「別の方向に揃えて反射させたレーダー波」や「僅かに返ってきたレーダー波」を検出できるようにしており、従来のレーダーに比べると飛躍的にステルス機を見つけやすくなっています。

十分凄い技術なのですが、ミサイルで撃墜するにはレーダー波を照射し続けなくてはなりません。ステルス機はレーダー波を当てる際に見つけやすい角度と見つけにくい角度があり、ステルス機の角度や位置が少し変わっただけで見つけにくくなります

また、複数のレーダーを用いて発見する技術はまだ地上用レーダーでしか使えず、空で使える段階には達していません。ミサイルに搭載している貧弱なレーダーでは追跡も難しいため、地上用レーダーがステルス機を捉え続けて誘導しなければならないのです。

つまり、ステルス機を撃墜するためには「発見」「追跡」「ミサイル発射」「ミサイル誘導」のプロセスを経て着弾させなければならず、いくら対ステルス機用のレーダーを使ったとしても、その全てのプロセスでステルス機を正確に補足し続けることはかなり難しいと考えられています。

そうなると、現実的なF35の撃墜方法は目視できるレベルにまで近づいてF35の苦手な格闘戦を挑み、ミサイルや機銃で仕留めることしかありません。それならば、F35は近づかれる前に倒せば良いので、まだまだやりようはありそうです。

問題はお互いに発見できないステルス機同士の戦いでしょう。F35はレーダー情報を共有できるので、空中で複数のレーダーを用いた対ステルス機用のレーダー網を構築することができますが、前述の通りそれだけでは不十分なのです。

お互いに目視できる距離で格闘戦をした場合、機動性に難があるとされるF35は不利です。むしろ、更なるステルス機対策が必要なのはF35なのかもしれません。

F35の問題点は杞憂に終わる?

このようにF35の問題点について触れてきましたが、こう考えてみると、意外にF35の問題点というのは深刻なものではないことが分かります。バグだらけと言っても、順調にバグは減らされているようですし、速度が遅いと言っても許容範囲内。価格も予定よりは高くなりましたが、性能に見合う価格と判断して良いでしょう。

ステルス機同士の戦いはF35にとって脅威ですが、F35レベルのステルス性を持った格闘戦に優れた戦闘機はF22だけなので、米国と戦う場合を除いて心配は要りません。

また、自衛隊の場合には対地攻撃ができる機体が少ないことが欠点として挙げられており、対地攻撃に優れたF35の導入は十分に理に適っています。対空戦闘においても、ステルス性の低いF15の代わりを務めることは十分に可能です。

ここで問題があるとすれば、F35以外の戦闘機ではダメなのかということです。しかし、ステルス性能を考えると世界最高水準のF35以外に選択肢はありません。周辺国がステルス機を揃え始めた中で、ステルス性の低い機体を選択肢に入れることは難しいでしょう。

最近では、いずも型を改修してF35の艦載型(F35B)を搭載しようという動きもあります。艦載運用については次回説明しますが、F35の重要性は今まで以上に高まるかもしれません。

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