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暖房機器の原理と仕組み、メリットやデメリット(その1):温風・対流を使うファンヒーター・ストーブ・エアコン

寒い季節がやってまいりました。

皆さん、家で何らかの暖房器具を使っているかと思います。もしかしたら、新しい暖房機器の購入を考えているかもしれません。そんな時に気になるのは暖房効率や電気代ですね。ところが、技術の進歩によって同じストーブでも「電気ストーブ」と「石油ストーブ」に分かれていて、同じ電気ストーブでも「カーボンヒーター」や「ハロゲンヒーター」などでどんどん枝分かれしています。ストーブだけでこれですので、ファンヒーターなどは更に沢山あります。

そこで本記事では、何がどんな特徴を持っていて、どんな原理で部屋や人を暖めているのかについて簡単にご説明していきたいと思います。

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暖房機器を三つに分類する

暖房機器は無数にありますが、暖房機器が人に熱を伝えるための方法は実は3つしかありません。

その3つとは、
―「空気」
―「電磁波(光)」
―「モノ」

の三点です。

厳密に言うと、モノといっても「空気の層」などを使っていたりするのですが、ここでは空気と言うのは部屋の空気を意味します。

そして暖房機器は、主に熱を下記の方法で拡散させます。
―「空気の流れ」
―「電磁波の拡散」
―「体に直接」

はっきり行って、ほぼ全ての暖房機器がこの三つに当てはまります。時々、これらを総称して「対流(温風)式」「輻射式」「伝導式」と言うこともあります。

そして、ほぼ全ての暖房機器がこれら全ての暖房原理を多かれ少なかれ使っていますが、どの方法をメインで使うかによって暖房機器としての特徴や暖房効率などが大きく分かれてきます。モノによっては、二つの方式を同時にメインに使っている場合もありますね。

温風・対流式―「空気の力で部屋と人を暖める」

まず、暖房と言えば空気を暖め、温めた空気を部屋に流す方式が一番に思いつくのではないでしょうか?

温風式というのは暖かい空気を吐き出す方式と言う意味で、対流式と言うのは熱によって発生した暖かい空気が上昇し、それと入れ替わるように下降してくる冷たい空気が循環するように作る空気の流れのことです。

温風・対流式と別物の様に言っていますが、暖房機器で大量の熱を一箇所で発生させれば多くの場合対流が発生するため、温風が無くても対流式は可能です。一方、温風式は熱量が低ければ熱による対流は作れませんが、ある程度の熱を吐き出す温風式の暖房機器は必然的に対流を作るので対流式と言うことができます。

対流・温風方式は、部屋全体を暖めたい場合には最も効果が早く現れ、安価に利用できる方式です。しかし、空気を暖めればすぐに人が暖まるわけではありませんので、部屋が十分に暖まってきたり、温風を直接体で受け無い限り寒いままです。さらに、空気を暖める事によって、湿度が急激に下がり、石油ファンヒーターなどでは空気も汚れてしまい、換気の度に室温が下がることもあります。

簡単に部屋を暖める事ができて部屋を利用する人全員に平等に効果が出ると言う点では大きなメリットがありますが、すぐに暖まれなかったり空気の質を急激に変化させる事による体調不良の恐れもあるため、デメリットも無視できないのがこの方式です。

温風・対流式に共通しているメリットとデメリットは以下の通り。

部屋」を暖める能力が高く、「部屋」がすぐに暖まる

「体」を直接暖める能力が低く、乾燥して空気が汚れることもある

そして、暖房機器毎に何が違うかというと、部屋を暖めるための「熱」をどうやって手に入れ、放出しているかという点です。石油・電気を熱に変えたり、外気を圧縮して熱を取り出したり・・・本当に様々な方法があるので、より細かな分類や特徴と共に以下に紹介していきます。

<ファンヒーター>

ファンヒーターと言うのは、何らかの方法(ガス・石油・電気)で熱を発生させ、その熱をファンで拡散する方式です。原理が簡単で生産も容易なため、安価に手に入れられて、非常に普及しています。対流・温風式を体現したような暖房機器といえます。

―石油方式―


ダイニチ 石油ファンヒーター

上は、言わずと知れた石油ファンヒーターの代表例です。

石油を燃焼することによって得られた熱をファンによって急速に放出し、一気に部屋を暖めます。電気代が殆どかからず、石油があれば簡単に利用できて、石油の値段にもよりますが「コストパフォーマンス」が最も良い機器でもあります。しかし、石油の入れ替えの手間や空気を乾燥させて汚す(有毒な一酸化炭素の放出)などのデメリットもあり、環境によっては使いにくい製品だと言えます。

暖房能力が高く、トップクラスにコストが安い

換気・燃料交換が必須、空気が乾燥し風邪に繋がる

―ガス方式―

東京ガス ガスファンヒーター

石油ファンヒーター並みに暖房能力が高く、燃料交換が要らないのがガス方式のファンヒーターです。ガスを燃焼させて得られた熱をファンで放出します。自宅に引いている都市ガスから提供されるガスを使っているので、燃料交換が要りません。しかし、ガスをファンヒーターに届けるためのガスチューブを伸ばさなくてはいけないため、置ける場所が限られていて、場合によっては工事が必要になることもあります。

暖房能力が高く、コストも比較的安い、燃料交換が要らない

換気が必須、置く場所が限られる、空気が乾燥し風邪に繋がる

 

―電気方式―


シャープ 加湿セラミックファンヒーター

最近ではファンヒーターの熱を、石油やガスではなく電気から得ている「セラミック(電気)ファンヒーター」と言う製品も存在しています。

単純に電気を熱に変え、熱をファンで放出しています。そのため電気代はどうしてもかかってしまいますが、「電気+ファン」と言う基幹機能を活かし、上の製品では加湿機能や空気清浄(プラズマクラススター)機能を搭載しています。部屋を暖める目的では、電気ストーブより効率が良く、加湿機能を付けて部屋が乾燥するデメリットを克服しています。

とは言え、ガスや石油ファンヒーターに比べると出力が劣りますし、フルパワーで使えばエアコンより電気代は高いです。しかし、電気代を気にしない方であれば、部屋の空気を暖めながら部屋の湿度を保てるので、最良の選択肢と言えるでしょう。

多機能で加湿機能などもあり換気要らず、電気ストーブよりは暖房能力が高い

価格が高く、ファンヒーターの中では暖房能力が低い

 

エアコン

一家に一台、エアコンがある時代です。

ファンヒーターが無くても家にエアコンはあるでしょう。しかも、部屋を暖めるだけでなく冷やせるので、暖房機器でありながら冷房機器でもあるという、とんでもない空調機器です。ところで、このエアコンがどうやって動いているか知っていますか?

エアコンの動作原理はファンヒーターほど単純ではありません。人によっては、冷房と暖房では違う原理で動いていると思っている方もいるようですが、どちらも同じ原理で動いています。ただし、その原理を暖房と冷房で逆回しにしているというだけなのです。原理については後ほどご説明しますが、何が起こっているのかというのは下の図で見ると一目瞭然です。


そうです。矢印が入れ替わっているだけの簡潔な図ですが言いたいことは一つ。
エアコンというのは、「外側の熱と内側の熱を交換する」ための装置なのです。

実際、エアコンはヒーター(熱を生む機械)ではなくヒートポンプ(熱を出し入れする機械)であり、暖房機器の中でも特異な存在です。それから、室外機には巨大なファンがついていて、てっきりただのファンなのかと思いがちですが、室外機にはコンプレッサーや熱交換器がついていて熱の交換に重要な役割を担っています。そして、熱の移動を担当するのが冷媒と呼ばれる物質。

この冷媒が全ての鍵(冷却・暖房効率)を握っていて、この冷媒の圧力を変化(気体←→液体)させて冷媒の温度を操りながら、熱を奪ったり放出したりしています。熱というのは極端な話、分子(冷媒)の運動エネルギーです。エネルギーが有り余っている気体を無理やり圧縮・凝固させれば熱を放出して液体になりますし、エネルギーの少ない液体を無理やり膨張・気化させれば熱を吸収しながら気体になります。この吸収・放熱の効率が物質によって違うので、冷媒次第で温度交換が容易になります。

そして、熱を放出するにも吸収するにも相手が必要で、それが室外の空気であったり、室内の空気であったりするのです。

そこで、
「ちょっと待て・・・冬に外の熱を取り入れて部屋に入れても寒いんじゃねえか?」

と言う質問が出て来るかもしれません。

確かに0℃の外の空気をそのまま取り入れたら寒いのですが、冷媒をギュッと圧縮・凝固させて-5℃くらいまで下げて液体にした状態だとどうでしょう?そうすると、不思議なことに冷媒からすると外の空気は暖かいので、その状態で気化させると冷媒は一気に外の空気の熱を奪います。そして、部屋に戻ってきた冷媒はまた無理やり熱を放出させられながら液体にさせられて-5℃になってしまいます。この差分のエネルギーが熱として室内に放出されます。

とは言え、吸熱(気化)反応には限界があります。極端な話、絶対零度(-273℃)では物体は気体にはなりません。そのため、どんどん温度が下がれば下がるほど液体は気化させにくくなり、気化させるために余計なエネルギーが必要になってきます。一方で、放熱(液化・固化)反応には限界が無いので、外気による影響は最小限で済みます。

イメージ的には、貧しい土地(冬の室外)で必死に作物(熱)を収穫してきた農民(冷媒)が、豊かな土地(室内)の富豪(エアコン)に作物(熱)を奪われ、仕方なくまた貧しい土地で作物を収穫しに行っているようなものでしょう。ちなみに、奪われた作物によって、豊かな土地はどんどん豊か(暖かく)になっていきます。冷媒に意志があったら確実にブチ切れているはずです。


シャープ プラズマクラスターエアコン

原理はさておき、エアコンを暖房として使う場合・・・そうです。外気温と室温の差が非常に重要になります。

エアコンは外の熱を奪うので、前述の通り外が寒ければ寒いほど熱を奪うために必要なエネルギー(冷媒の状態変化)が多くなってくるのです。外が寒ければ寒いほど、冷媒は沢山の労力を必要とします。先ほどの農民の例で言えば、豊かな土地が豊かであればあるほど(少しの作物(熱)では足りない)、貧しい土地が貧しければ貧しいほど(作物(熱)が取れない)、農民の仕事量は増えるということです。

具体的にはどれくらい消費電力が違うのかは、結構簡単にわかります。
エアコンをよく見ると、暖房時消費電力の記載が「標準」と「低温」で二種類あったりしませんか?標準が「外気温7℃/室内20℃」の時の消費電力で、低温が「外気温2℃/室温20℃」の時の消費電力です。5℃でも結構違うので、室温と外気の差が広がれば広がるほど消費電力は増えます。

つまり、外気温と室温の差があまりにも大きい時はエアコン以外の暖房機器を使ったほうが良いと言うことですね。エアコンで暫く部屋を温めたら、別の暖房機器に切り替えるというのも効率が良いでしょう。

このように暖房機器の動作原理を知ることで、暖房機器の賢い使い方も分かるのですね。

ここで、エアコンのメリットとデメリット。

温度差によっては非常に暖房効率が良い上に多機能

電気代が高く、室温差が大きいと予期せぬ電力消費もある

 

ストーブ(石油・ガス)

さて、こちらはちょっと趣が異なります。

コロナ石油ストーブ

大部分の電気ストーブは輻射方式(光・電磁波)がメインですが、石油やガスを使ったストーブは輻射方式だけではなく、ある程度の対流暖房効果を生みます。ファンがついていないので、そこまですぐに部屋が暖まる事はありませんが、生み出す熱量がすさまじいのですごい勢いで暖かい空気の上昇気流を生みます。

ストーブの上にやかんを置いて熱湯を作ったりしますが、その熱が部屋をかき回す対流を作り、徐々に部屋全体を暖めていくのです。当然、こちらも石油・ガス系の暖房機器同様に換気や乾燥の問題は存在していますが、ストーブのメリットは輻射熱にあります。

ファンヒーターはあくまでガスや石油が生む「熱だけ」をファンで作った風に乗せているのに対し、ストーブはガスや石油が作った「光や電磁波も」金属板に反射させて拡散しています。これによって、光や電磁波を受けた体を直接的に暖める事(輻射熱)が可能になるのです。

つまり、ストーブは発生させた熱が生む上昇気流で対流を作り出しながら部屋を暖め、輻射を効果的に拡散することで付近にいる人や物を直接暖める事が出来るのです。一石二鳥の優秀な暖房?とおもいきや、熱以外にも光や電磁波(物に当たって熱になる)まで出しているので石油やガスの消費量は石油ファンヒーターより高く、光を拡散するために大きめに作られているため邪魔臭いと言うデメリットも。

ただ、構造が簡素で本体が安く、壊れにくいというのもある種のメリットといえます。

対流効果と輻射効果で部屋と人を同時に暖められる、意外に丈夫

大型で燃料コストが高い、換気・燃料交換は必須

 

このように、対流・温風効果を持つ暖房機器だけでもたくさんあり、それぞれメリットとデメリットがあるんです。暖房効果が非常に高いので、冬場の暖房機器の主力になる機器であり、どれをどのタイミングで使うか・・・というのが省エネをしつつ暖を取るには重要なのですね。

(その2):輻射熱を使った暖房機器 へ続く

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