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暖房機器の原理と仕組み、メリットやデメリット(その3):伝導熱を使い体を直接暖める製品

さて、暖房機器の紹介シリーズも最後になります。対流・温風式輻射方式に続き、最後は伝導式です。

と言っても難しいことは無く、熱源に直接触るか体のすぐ側にまで近づけて体を暖めるかのどちらかです。今までご紹介してきた暖房機器とは違い、これからご紹介する機器(製品)は厳密には「暖房」の定義には当てはまらないものも多いのですが、体を暖めると言う一つの同じ目的で作られた製品ですので、各種製品の原理や仕組みについて簡単にご説明させて頂きたいと思います。

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伝導式、直接体を暖める方法

はっきり言って、体を暖める原理としては極めてシンプルです。

電気、温水、鉄粉・・・それらが持つ熱を殆ど直接的に体に与えることで人を暖めます。対流・温風式が「空気」を通して熱を広げ、輻射式が「電磁波」を使って熱を伝えていたのに比べると非常に分かりやすいですね。

ただし、「何の熱を人に与えるか」と言う点では非常に幅広いのがこの伝導式と言えるでしょう。

「機器」と言う以上、電気や火を使った製品をメインにしたいところですが、伝導式のキモは「熱すぎない事」。他の方式では、とにかく早く、とにかく沢山の熱を人に伝える。と言う所にフォーカスしていましたが、これらの製品は人が直接触れる製品ですので、熱すぎず、熱を保ち続ける事に焦点が置かれています。

そう考えてみると、案外難しいのがこの伝導式の暖房機器。そのため、火を使う方式はまず除外。殆どの伝導式の機器では、電気が主流担っています。そして、次に来るのが温水や化学反応を使った製品。温水はどんなに熱くても100℃ですし、家庭で簡単に手に入ります。そして、化学反応は化合物の調整によって温度のコントロールが非常に容易になっています。

ただし、熱すぎなかったとしても、「低温やけど」を負う可能性はあります。ストーブやファンヒーターであれば、火傷のリスクも分かりやすいのですが、低温やけどについてはリスクを軽視される傾向も強く、伝導式の暖房機器を使う上で気をつけなければ行けない点でしょう。

ここで、伝導式に共通する特徴を簡単にまとめてみたいと思います。

体を直接暖めるのですぐに暖まる。個人に対する暖房効果が高い

効果範囲が極めて狭く、低温やけどのリスクがある

※低温やけどについて

低温やけどとは、大体40-50℃程度の本来であれば火傷を負わないような温度(低温)の熱源に長時間触れる事によって火傷することを言います。冷たい物質(ドライアイスなど)に触って起こる火傷のことではありません。

火傷と言うのは、細胞が耐えられないほどの高熱によって細胞が破壊されてしまう事によって起こる現象で、表皮付近の細胞は45℃程度であればギリギリ耐えられる構造をしています。しかし、それはあくまで短時間での範囲でのこと。耐えられるラインの熱であっても、熱が蓄積していけば徐々に細胞は破壊されていきます。

しかも、ジワジワ細胞が破壊されていくので、細胞が破壊されていく事に本人が気付かないケースが多いのです。そして、火傷に気づくことが送れてしまうことで、気づいた時には普通の火傷より重症になっているパターンが多く、名前の割には恐ろしい火傷といえます。

足元や体全体を暖める機器

人が生きる上で必ず触れている場所というのがあります。それが地面。冬であれば冷たく、夏のコンクリートなどは熱い地面ですが、これを人の望む温度に変えられれば、非常に快適な環境を作り出す事が出来ます。

輻射式として分類した「床暖房」や「こたつ」も非常に近い目的を持っていましたが、これからご紹介する製品は、過去にご紹介した製品に比べると輻射効果や対流効果が極めて小さいので伝導式に分類されました。

ホットカーペット

山善 ミニマットホットカーペット

 まず、伝導式の代表格がホットカーペット。

床暖房などとは違って、どこにでも導入できる上に安価で使い勝手の良い製品です。

スイッチひとつで入りきり出来て、すぐに足元を暖めてくれます。こたつなどもそうですが、人体において熱源の多い上半身に比べて冷えやすい下半身は、寒さをもっとも感じやすい部分です。ここを局所的に暖めることで、高い暖房効果を得ることが出来るのですね。

動作原理も中に入れた電熱線に電気を流して、電気抵抗で発生したジュール熱でそのまま体を暖めているだけです。耐熱性の高い繊維などを使って繊維の内部に空気を溜め込み、長時間にわたってゆっくりと足を暖めてくれます

ただし、体の重みで熱源に押し付けられる形になるため、低温やけどの可能性が極めて高い製品でもあるので、注意が必要ですね。

安価で簡単に足元を暖められる。場所を選ばず使える

足元などしか暖められず、低温やけどのリスクが無視できない

電気毛布

なかぎし 掛け敷き毛布

 次に電気毛布。

動作原理はホットカーペットと同じですが、就寝時に使用し、全身に直接当たる形で使用します。

掛ける毛布としても、敷く毛布としても使えるタイプが多く、温度調節機能が付いている製品が多いです。今では比較的一般的になっていますが、これは他の伝導式の暖房機器と違い「長時間使用する前提」で作られている伝導式温熱機器と言うやや異質な製品なのです。

何故、これが異質かというと、低温やけどのリスクを克服するために様々な技術が投入されているという点にあるでしょう。

寝る時に人は布団を掛けますが、布団が暖かいのは体の熱を逃さないからです。体の熱は36℃前後であり、布団の中はそれより低めの温度となります。ですので、電気毛布もその温度に収まるように熱を発生させようとしますが、冬にこう言った製品を使う場合には、熱は発生させてもすぐに冷たい空気の中へと逃げていくので、30℃の温度を発生させれば良いわけではありません。

そのため、熱源自体は44℃以上の「低温やけど」するレベルの熱を発生させるのですが、それが人に届く時には低温やけどしないレベルに収まるる必要があります。最近の電気毛布は、大気の温度などを測定し、最適な熱量を発生させる様に設計されており、決して低温やけどするレベルの熱にはなら無い様に設計されています。

伝導式の暖房機器には簡単な構造の物が多いのですが、その中でも電気毛布は安全性に配慮された技術の固まりと言うことが出来ますね。

就寝時に安全に使える。密閉性の低い家に最適

スイッチ部などが就寝時に邪魔になる、気温次第で寝苦しいことも

携帯性の高い機器

敷く、掛ける系の伝導式の暖房機器から、今度は携帯型の機器をご紹介します。もはや暖房機器とは言えないのですが、暖を取る製品ということで比較紹介する意味でもピックアップしていきます。

高性能なバッテリーや電子レンジの登場で、携帯カイロ系の市場も非常に進歩してきており、電気式のカイロや電子レンジで暖めるタイプのゆたんぽも発売されています。

湯たんぽ

萬年 トタン湯たんぽ

昔から存在する湯たんぽは、中に温水を入れてその熱を少しずつ体に移すようにして暖を取る製品です。

温水を入れるだけで使えるため、非常に便利で安価な製品であり、比較的長時間暖を取れるのであらゆる場面で重宝されています。

ただ、最大の欠点は温度調整が極めて難しいということ。低温やけどの大部分が湯たんぽによるもの、と言う統計もあるほどで、熱湯を湯たんぽに入れてそれをそのまま使ったり、薄い布一枚で十分だと思って使ったりすると低温やけどに発展するようです。

また、水の温度や量に応じて暖かい時間も限られており、携帯用と言えど持ち歩くのも簡単ではありません。主に、屋内で布団などに入れて抱きかかえるようにして使われる(熱いお湯だと非常に危険)ケースが多いようです。

温水を入れるだけですぐに使えて、非常に経済的

温度のコントロールが難しく、低温やけどのリスクが極めて高い

最近では、温水を入れるタイプではなく、水よりも蓄熱量の多い物質を内蔵した物質をレンジで暖めて使うタイプも販売されています。

レンジでゆたぽん

基本的には方式は同じですが、お湯よりも長時間持つ上に、ゲル状で柔らかいため使い勝手も通常の湯たんぽより改善されているようですね。特に形状を選ばないので、用途に合わせた個性的な製品が存在しています。

携帯カイロ

オカモト はらないカイロ

最後は携帯カイロです。

非常に軽くて持ち歩きに便利で、袋から出すだけで使える簡便さは携帯用温熱機器の王者とも言えるでしょう。

他の製品と比べると原理について知られていないケースが多いですが、原理は鉄が酸素と結びついて酸化する際に発生する酸化熱です。いわゆる、鉄が錆びるあの現象です。極論すると、石油が酸素を使って燃えるのと現象としては変わりません。 非常にゆっくりゆっくり鉄が燃えていると考えても良いでしょう。そして、燃えカスとして酸化鉄が残ると言うイメージが分かりやすいかもしれませんね。

「鉄なんてどこにでも存在するのに、なんでそんなに熱が発生するほど酸化するのか?」

と思うかも知れません。身の回りにある鉄が酸化(錆び)ないのは、塗料などを塗って酸素に鉄が触れないようにしているのと、塗料が剥げて水に濡れれば酸化(錆び)がぐんぐん進みます。ただ、もちろん携帯カイロはそれだけではありません。鉄が錆びやすいように様々な素材が入っています。

鉄の錆は、「酸素」によっては行われますが、「水」や「塩」があると酸化はさらに促進されます。そのため、携帯カイロの中には、鉄粉以外にも水を保持する「バーミキュライト」、酸素を保持する「活性炭」、食塩を保持する「吸水性樹脂」などが一緒に入っています。そして、袋は酸素が入り込まないように密閉され、開封して酸素に触れる事によって反応が始まって熱を発生させます。

ちなみに、カイロは酸素を取り込むので、部屋中埋め尽くすほどのカイロを一度に使ったら窒息してしまいます。ペットボトルなどに入れて実験してみると、ちゃんと中の酸素が減って凹むのがわかります。

熱くなり過ぎない様に抑えられてはいますが、それだと全然暖まらないので低温やけどしてしまう程度の熱量は出ています。直接体に貼り付けたりすると非常に危険ですので、使い方をよく確認して使用しましょう。

軽量小型で持ち運びに便利、手軽にどこでも暖められる

使い捨てで熱量も小さい。低温やけどのリスクもある

余談ですが、携帯カイロでは、電気を使ったタイプも最近では発売されるようになりました。

SANYO 充電式カイロ

充電式の電気カイロです。スイッチの入りきりが出来て、充電で繰り返し使えるのが魅力。

出力調整もできるので、場面に応じて使い分けられるようですね。製品にもよりますが、低温やけどを防止するような工夫などもあり、現代のカイロと言えるかもしれません。

 

まとめ

ここまで、三種類の方式の暖房機器・温熱機器を紹介してきました。

本当に様々な暖房機器が存在し、様々な用途で使い分けられているのがわかります。

暖房機器というのは、どれも人を暖めるために熱を発生させる機器です。熱と言うのはエネルギーであり、エネルギーと言うのは有限です。そのエネルギーを有効活用するためには、一体どうやって自分達が熱を得ているのかを理解しなければいけません。

熱交換のエアコン、石油を燃やすファンヒーター、電気を熱に変える電気ストーブ、化学反応で熱を得るカイロ・・・本当に様々な方法で人は熱を得ています。

寒い冬に当たり前の様に使っている暖房機器がどのように動いているか、皆さんご存知でしたか?

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